
ジャズ・ピアニストでありながらメタル・ファンとしても知られる西山瞳さんによる連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は、西山さんがこよなく愛する超高速速弾きギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンが明日7月23日(金)にリリースする約2年ぶりのアルバム『Parabellum』についてです。西山さんのテンションもいつもより高めなようで……? *Mikiki編集部

YNGWIE MALMSTEEN 『Parabellum』 Mascot/NEXUS(2021)
先日、ある友人とこんな会話をしました。
私「この前、映画館で『るろうに剣心』を観たからだと思うんだけど、夢に佐藤健君が出てきて、なぜか一緒に買い物している夢で、いやーめっちゃ得したわー! 健君のこと好きになったかも!」(怖いものなしのアラフォー)
友人「好きなんやったら、イングヴェイは夢に出ないの? 夢でイングヴェイとデートしないの? しようよ!」
しないよ!!!
ということで皆さん、我らが王者イングヴェイ・マルムスティーンの新作『Parabellum』が明日7月23日に発売になります。
東京都イングヴェイ区マルムスティーン1丁目在住、デビュー盤のレコーディングでスウェーデンに録音に行くことになり「スウェーデンのジャズって知ってる? 聴いていたミュージシャンいる?」とプロデューサーに聞かれて即答で「イングヴェイ」と言った私は、何があってもイングヴェイを称えます。
イングヴェイを称えよ!
前作『Blue Lightning』は、ジミ・ヘンドリックスとブルースへの愛を惜しげもなく披露したカヴァー・アルバムで(ご本人はヴァリエーション・アルバムとおっしゃっていました)、以前の記事でレビューしました。
ネオ・クラシカル・ヘヴィメタルと呼ばれ、バッハやパガニーニのフレーズを織り込み、高速かつクリアでエモーショナルに演奏するイングヴェイ。
イングヴェイに関しては、昨年沢山の方に読んで頂いたこの記事もぜひご覧下さい。
「イングヴェイの速弾きのキモは、正確さとそれを超える官能性であることだと思っています」
良いこと書いてますね、私!
さて、今回は2016年作『World On Fire』以来のオリジナル・アルバム。一足先に聴かせてもらいましたが、感想を一言。
「ネオ・クラシカルが過ぎる!」
きたー! ネオ・クラシカル全開のイングヴェイが! すごいです、ネオクラオタクもびっくり、悶死する濃度でやってきました。
コロナ禍でツアーができない中で制作されたこのアルバム。よっぽど取り組む時間が長かったのでしょう。とりあえず物量(=音符数)が多い。過剰なのは良いことです! 今回もドラム以外全部自分で演奏しています。
イングヴェイの新譜が出ると、
「自分で歌わずヴォーカルは他の人を雇ってくれ」
「音が悪い」
と必ずファンから言われるんですけども、いいんですよ! イングヴェイがいいと思ったのなら、それが正解です。
今作は、ほとんどがインスト曲です。歌がどうだとかいう余地がないぐらい、ギターを弾きまくっています。むしろ、ギター・ソロのお膳立てをするための歌。ネオ・クラシカル・ブルドーザーで全てをガーーっと飲み込んで進む、なんだかとても勢いのある作品でした。