ジャズ・ピアニストでありながらメタル・ファンとしても知られる西山瞳さんによる連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は、西山さんがこよなく愛する超高速速弾きギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンが明日7月23日(金)にリリースする約2年ぶりのアルバム『Parabellum』についてです。西山さんのテンションもいつもより高めなようで……? *Mikiki編集部

★西山瞳の“鋼鉄のジャズ女”記事一覧

 

先日、ある友人とこんな会話をしました。

私「この前、映画館で『るろうに剣心』を観たからだと思うんだけど、夢に佐藤健君が出てきて、なぜか一緒に買い物している夢で、いやーめっちゃ得したわー! 健君のこと好きになったかも!」(怖いものなしのアラフォー)

友人「好きなんやったら、イングヴェイは夢に出ないの? 夢でイングヴェイとデートしないの? しようよ!」

しないよ!!!

 

ということで皆さん、我らが王者イングヴェイ・マルムスティーンの新作『Parabellum』が明日7月23日に発売になります。

東京都イングヴェイ区マルムスティーン1丁目在住、デビュー盤のレコーディングでスウェーデンに録音に行くことになり「スウェーデンのジャズって知ってる? 聴いていたミュージシャンいる?」とプロデューサーに聞かれて即答で「イングヴェイ」と言った私は、何があってもイングヴェイを称えます。

イングヴェイを称えよ!

 

前作『Blue Lightning』は、ジミ・ヘンドリックスとブルースへの愛を惜しげもなく披露したカヴァー・アルバムで(ご本人はヴァリエーション・アルバムとおっしゃっていました)、以前の記事でレビューしました。

ネオ・クラシカル・ヘヴィメタルと呼ばれ、バッハやパガニーニのフレーズを織り込み、高速かつクリアでエモーショナルに演奏するイングヴェイ。

 

イングヴェイに関しては、昨年沢山の方に読んで頂いたこの記事もぜひご覧下さい。

「イングヴェイの速弾きのキモは、正確さとそれを超える官能性であることだと思っています」

良いこと書いてますね、私!

 

さて、今回は2016年作『World On Fire』以来のオリジナル・アルバム。一足先に聴かせてもらいましたが、感想を一言。

「ネオ・クラシカルが過ぎる!」

きたー! ネオ・クラシカル全開のイングヴェイが! すごいです、ネオクラオタクもびっくり、悶死する濃度でやってきました。

コロナ禍でツアーができない中で制作されたこのアルバム。よっぽど取り組む時間が長かったのでしょう。とりあえず物量(=音符数)が多い。過剰なのは良いことです! 今回もドラム以外全部自分で演奏しています。

 

イングヴェイの新譜が出ると、

「自分で歌わずヴォーカルは他の人を雇ってくれ」

「音が悪い」

と必ずファンから言われるんですけども、いいんですよ! イングヴェイがいいと思ったのなら、それが正解です。

 

今作は、ほとんどがインスト曲です。歌がどうだとかいう余地がないぐらい、ギターを弾きまくっています。むしろ、ギター・ソロのお膳立てをするための歌。ネオ・クラシカル・ブルドーザーで全てをガーーっと飲み込んで進む、なんだかとても勢いのある作品でした。