
クラシックとユーロ・ジャズからの影響をもとに国内外で活躍中のジャズ・ピアニスト、西山瞳。ジャズ界に身を置きながら、HR/HMをジャズ・カヴァーするプロジェクト、NHORHMとしての活動や、ファンであるBABYMETALの音楽的な魅力を鋭く考察して界隈で支持を得るなど、メタル愛好家としての信頼はグイグイ上昇中。そんな〈メタラーのジャズ・ピアニスト〉という立ち位置からHR/HMを語り尽くす本連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉では文筆家としての才も大いに発揮し、多方面で活動の場を拡げています。
今回は宣言どおり、西山氏が敬愛するHR/HMシーン屈指のネオ・クラシカル速弾きギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンが3月29日に発表した『Blue Lightning』を〈圧倒的全肯定精神〉で全曲レヴューしてくれました! *Mikiki編集部

われらが王者、イングヴェイ・マルムスティーンの新作『Blue Lightning』が発表されました。
まずは大前提として、私はイングヴェイについては何がどうあろうと〈圧倒的全肯定〉だと表明しておきます。なぜなら、ピアノをやめていた時期に音楽の情熱をキープすることができたのは、イングヴェイのおかげだから(第1回の記事参照)。ださいとか半笑いで言われても、私にとっては救いの王者なのですよ※。
※イングヴェイは〈王者〉〈貴族(正確には伯爵)〉などと呼ばれています
ヘヴィメタルにあまり縁のないMikiki読者の皆様に紹介しますと、イングヴェイ・マルムスティーンはメタルの中でも速弾きギタリストとして知られ、バッハやパガニーニを敬愛し取り込み、〈様式美〉〈ネオ・クラシカル・ヘヴィメタル〉なんて言われます。キャラクターも素晴らしく、俺様キャラで、昔からイングヴェイの雑誌インタヴューは楽しみでした。
ジャズの勉強を始めてから、しばらくイングヴェイから離れていたのですが、前作『World On Fire』(2016年)を久々に新譜として買い、恩人の王者に足を向けて眠れないなと悔い改め、以降イングヴェイ・ブランクを埋めて今作に臨みました。

デラックス版を購入しましたが、ステッカー、コースター、ピックも付いてきましたよ!
新作『Blue Lightning』は、ブルース・ロックのカヴァー・アルバム。本人は〈ヴァリエーション・アルバム〉と呼んでいますが(ヴァリエーション=変奏の意味で)、96年『Inspiration』以来のカヴァー作品です。前作はリッチー・ブラックモアへの敬愛を軸に作られていて、私もそこから元のバンドを聴いたりして、ハード・ロックやヘヴィメタルへの入口となりました。今回の新作は、最大に尊敬するジミ・ヘンドリックスとブルース・ロックのナンバーが並んでいます。
イングヴェイの新譜が出ると、必ず同じ感想・同じワードが多数散見されます。
・音質が悪い
・いつもと同じ演奏
・ヴォーカル・パートは自分で歌わないでほしい
・痩せたんじゃない?
そして、発売日前でまだ聴いていないはずなのに、オンライン・ショップのサイトには上記のようなレヴューや、低い星が付くんですよね。
が、ここまでが様式美。この儀式も楽しみましょう。