次は、Mary's Bloodの新譜、『Mary's Blood』。

もう何作もアルバムを発表してきた、シーンを代表するバンドなのに、改めてのこのタイトル。聴くこちらも心して聴かねばと、気が引き締まります。

これがですね、以前の記事で「大阪出身の自分には、メアリーは〈いてまえ打線〉という言葉がぴったりに感じる」ということ書いたのですが、新譜は強烈な快打でした!

2020年にアニメソングのカバーアルバムをリリースしてはいますが、オリジナルアルバムは2019年『CONFESSiONS』から2年ぶり。『CONFESSiONS』は以前こちらの連載でも取り上げましたが、2018年『Revenant』とともにコンセプチュアルで世界観の広がりを感じる、新機軸の作品になっていました。

今回は一転して、一直線に突き抜ける非常に攻めまくったアルバムで、控えめに言って最高です。最高。今までのアルバムで一番好きかも。

Mary's Blood 『Mary's Blood』 JAPAN RECORD(2021)

疾走感が半端なく、あっという間に1枚聴き終わってしまう感覚。グイグイ引っ張ってくれる、メアリーならではのドスのきいた疾走チューンのオンパレード。いやー気持ちいい。これが聴きたかった。だからアルバムタイトルが『Mary's Blood』なのか!

メアリーの良さは、ヘヴィでドスのきいたサウンドなのに、聴き終わった時にはいつも気持ちがすっきりして爽快感が残ることです。ちょっとランニングした時の気持ち良い感じに似てるというか、リフレッシュするんですよね。この、ヘヴィなのにカラッと爽やかで軽やかで健康的にすら感じるというのが、メアリー独自の空気なんだろうなと思います。

今回、特に歌唱で見せる表情の豊かさが際立っており、疾走している中でもとても生々しく感情の機微が迫ってくるんですね。ハードで高速なのに、しっかり温度が伝わってきて生々しい。10曲目“Mad Lady”のEYEのドスのきいた表現力なんて、鳥肌ものです。

そして、毎度のことながらメアリーはSAKIのギターソロが本当に華があって、シンプルなフレーズでもグッと耳をかっさらう魅力がありますよね。そんなに長くない尺のソロでも、がっちりと聴く人のハートを掴む歌うようなソロで、ライブパフォーマンスで観客を盛り上げるところまで見越したギター1本でのアゲ感とでも言いましょうか、非常に強靭でとても印象に残ります。11曲目“Starlight”はたっぷりとギターソロがあり、そのスター性がお分かり頂けると思います。SAKIならギター1本で野外会場でも、全部持っていけちゃうでしょうね。

新譜の聴き所は沢山あり、ゴリゴリのメタルナンバーもクールで格好良いのですが、中でも私が好きで印象に残ったのはRIO作曲の7曲目“ignite”。J-Rockの系譜を受け継いで、メアリーならではのヘヴィで推進力のあるサウンドだけど、とってもポジティブな気分になれる。個人的に、アルバム一番の推し曲です。

 

ちょっと、こんな良いアルバムが同日発売なんて、ヤバイですよ。

まだ思いっきりライブを楽しめる状況ではないですが、この新譜たちを聴くと、確実にエネルギー注入されます。とっても良いです!

〈ジャズリスナーにも共通するところがあるからお勧め〉と、いつもならジャズと共通点を探すところですが、これらの音楽は普遍的なパワーがあり、ガールズバンドならではのポジティブなエネルギーに満ち溢れているので、ぜひ皆さんに聴いていただきたいです。

 


LIVE INFORMATION: 西山瞳

2021年10月2日(土)、3日(日)岡山・おかやまジャズストリート2021
デュオ:西山瞳(ピアノ)、橋爪亮督(テナーサックス)
10月2日(土)19:00~インタリュード岡山
10月3日(日)16:00~ジャズ喫茶JORDAN
その他ストリート演奏会場あり
https://jazzokayama.com/

2021年10月16日(土・昼)東京・池袋Apple Jump(03-5950-0689)
デュオ:西山瞳(ピアノ)、入山ひとみ(バイオリン)
開場/開演:13:30/14:00
料金:2,800円(税込)

2021年10月29日(金)東京・小岩COCHI(03-3671-1288)
デュオ:西山瞳(ピアノ)、maiko(バイオリン)
開演:20:00~(2セット)
チャージ:2,800円(税込)

2021年10月24日(日・昼)15:00~
YouTubeチャンネルにてライブ配信予定
西山瞳ソロ

2021年10月31日(日・昼)神奈川・横浜 上町63(045-662-7322)
トリオ:西山瞳(ピアノ)、市野元彦(ギター)、西嶋徹(ベース)
開演:15:00~(2セット)
料金:3,000円

★各ライブに関する詳細はこちら

 

RELEASE INFORMATION

西山瞳トリオ、7年ぶりスタジオアルバムCalling』好評発売中!

西山瞳トリオ Calling』 MEANTONE RECORDS(2021)

リリース日 :2021年9月15日
価格:2,970円(税込)
ダウンロード:https://linkco.re/4eUdzuQ2
西山瞳(ピアノ)、佐藤“ハチ”恭彦(ベース)、池長一美(ドラムス)

TRACKLIST
1. “Indication”
2. “Calling”
3. “Reminiscence”
4. “Lingering In The Flow”
5. “Etude”
6. “Loudvik”
7. “Drowsy Spring”
8. “Folds of Paints”

 


PROFILE:西山瞳

1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシックピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I’m Missing You』を発表。ヨーロッパジャズファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、横濱ジャズ・プロムナード・ジャズ・コンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズ・フェスティバルに招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。

以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、全世界約15,000エントリーの中から自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコード・ジャズ総合チャート1位、HMV総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自己のレギュラートリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『シフト』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカバーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、YOUNG GUITAR誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズ両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。

自己のプロジェクトの他に、東かおる(ボーカル)とのボーカルプロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグバンドへの作品提供など、幅広く活動。横濱ジャズ・プロムナードをはじめ、全国のジャズフェスティバルやイベント、ライブハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。