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インタビュー

ロスタム(Rostam)が語るコラボの喜び――フランク・オーシャン、A.G.クック、ROTH BART BARONとの制作秘話

ロスタム『Changephobia (Special Edition)』

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ロスタムの共作術

──今回の〈Special Edition〉には、先日新作をリリースしたオーバーホーファー(Oberhofer)ことブラッド・オーバーホーファーと共作した“4Runner”の、アコースティックギターやバンジョーを使った〈Backyard Version〉が収録されています。こちらがオリジナルだったのでしょうか? ブラッドとの曲作りはどのように進められましたか?

「〈Backyard Version〉がオリジナルってわけじゃないんだ。曲をリリースしたあとに、アコギで演奏するのが楽しい曲だってことを発見してしまって、作ってみたくなったんだよ。“4Runner”は元になったトラックのビートを僕がまず作って、それを車のなかで聴いてたんだ。自分で作っていて楽しい曲はよく車の中で聴くんだけど、ブラッドとディナーに行って、その流れで一緒に車でそのトラックを聴いて、どんなメロディーにするかのアイデアがもう頭のなかにあったから、そのメロディーを口ずさんでみたらその場でブラッドが歌詞をつけてみてくれてね。その時に生まれたいくつかの重要な歌詞は、そのときからずっと歌詞として曲に残っているよ」

『Changephobia (Special Edition)』収録曲“4Runner (Backyard Version)”
 

──リミックス集には、元ヴォックストロットのラメーシュ・スリヴァスタヴァ(Ramesh Srivastava)と共作した“Bio18”のタブラバージョンが収録されています。以前、ラメーシュとは共通点が多いと話していましたが、彼もアジアにルーツがあるのでしょうか? 他にはどんな共通点がありますか?

「その通り。彼も南アジアにルーツがあるよ。実は彼がタブラバージョンを聴いたかは定かではないんだ……。もうすぐリリースされるから送らなきゃね(笑)。“Bio18”は彼の助けがあって完成した曲。彼がLAに来たときは絶対にスタジオで一緒に何かしらに取り組んでいるし、ハイムの“Now I’m In It”(2019年)の歌詞を書くのも手伝ってくれたんだ」

『Changephobia Remixes: Part I & II』収録曲“Bio18 (Tabla Version)”
※『Changephobia (Special Edition)』には未収録

 

フランク・オーシャンにストロークスが見えたんだ

──今回の〈Special Edition〉にはクラッシュの“Train In Vain”(79年)とルシンダ・ウィリアムスの“The Fruits Of My Labor”(2003年)のカバーも収録されていますが、それぞれどういった思い入れがありますか? 過去にはニック・ドレイクの”Pink Moon”やストロークスの“Under Control”もカバーしていましたが、他にカバーしてみたい曲があれば教えてください。

「“Train In Vain”は小さい頃から大好きな曲。よくラジオから流れているのを聴いていて、その当時はクラッシュの曲だなんて知らなかったけど、僕の育った地域では、“Train In Vain”が唯一ラジオで放送することが許されたクラッシュの曲だったんだ。

『Changephobia (Special Edition)』収録曲“Train In Vain”
 

The Fruits Of My Labor”はなぜかここ数年間ずっと僕のなかに残っている曲で……ルシンダがその曲で表現したムードが好きなんだと思う。とにかく魔法にかけられたようにあの曲の虜なんだよ。自分のアルバムを完成させたあとに、なぜかそのまま何かを録音し続けたい時期があって、その時に2曲カバーを録ったから、リリースすることができて嬉しいよ。

これからカバーしたいのは……“Over The Rainbow”かな。僕の世界観に寄せてもいいんだけど、ストリングスやハープが入った、ジュディ・ガーランドのバージョンに近いものをやりたい」

──本作に限らず、あなたは他のアーティストと一緒に曲を書くことも多いと思うのですが、フランク・オーシャンと“Ivy”を共作したときのエピソードがあれば教えてください。

「あの曲を初めて聴いたとき、すぐに頭のなかにストロークスが思い浮かんだ。その当時フランクはストロークスのことをよく知ってはいなかったと思うんだけど、僕がギターを弾いたら、彼がそれを気に入ってくれたんだ。

僕はある種のギターコードにはユニバースがあると思っているんだ。例えばストロークスの曲と、スモーキー・ロビンソン(&ザ・ミラクルズ)の“The Tracks Of My Tears”で共通しているコードとかね。まぁ理由はなんであれ、アルバムに入っているバージョンとは全然違うオリジナルの“Ivy”を聴いたとき、あの曲がギターに形どられた世界のなかで生きている気がしたんだ」

※Under Control”と思われる
 
フランク・オーシャンの2016年作『Blonde』収録曲“Ivy”
 

──ところで、ウォークメンのハミルトン・ライトハウザーとあなたのコラボレートアルバム『I Had A Dream That You Were Mine』(2016年)に“The Bride's Dad”という曲が収録されていましたが、この曲とヴァンパイア・ウィークエンドのアルバム『Father Of The Bride』(2019年)とは何か関係があるのでしょうか?

「ハミルトンが実体験を元にその曲を書きはじめて……。彼はそのときエズラ(・クーニグ)がヴァンパイア・ウィークエンドのアルバム・タイトルを『Father Of The Bride』にするなんて知らなかったんだ。だからまったくの偶然だよ。

ハミルトンが結婚式に参加したときにすごく酔っぱらった男の人がいて、その人がスピーチをしはじめたんだけど、誰もその人が誰なのか知らなかったんだ。けど蓋を開けてみたら、その人が花嫁の父親だったっていうエピソードから始まった曲なんだよ。

彼が曲を僕のところに持ってきたときはまだピアノで書かれただけの状態で、すごく良かったんだけど、僕が『ちょっとダークすぎない?』って言ったんだ。だって酔っぱらった父親が娘とまともな関係を築けてないっていうのは、ちょっと気が滅入る話でしょ。だから歌詞のなかで唯一〈I swear I saw you smiling(君が笑うのを絶対に見たよ)〉っていう部分はフィクションなんだ。『この曲はもう少し明るさが必要、悲しすぎる』って僕が言ったからね。基本的に、ドラムが入ってくる部分までに描かれていることは実際に起きたことで、そのあとはフィクションだよ」

──他のアーティストの曲をプロデュースしたり、リミックスしたりするうえで大切にしていることはありますか?

「いつも考えているのは、音楽と歌詞を通してストーリーを伝えるということ。たまにもう歌詞はすべて出来上がっていて、僕がすることは最高のボーカルを録る手伝いをすることだけだったりするんだけど、そういうときもボーカルを通して、歌詞が持つ意味をなるべくクリアに伝えられるように心掛けているよ。だからレコーディングをするときに発音やフレージングにおいて、曲と別のアプローチでコミュニケーションを取ってみるように助言することもあるんだ。

プロデュースをするときは物語を語る、という観点で楽曲に取り組むことがいちばん大切かな。リミックスに関していえば、その曲のエッセンスを捉えること、それと同時にその曲を違う世界に持っていくことを大切にしているよ」

 


RELEASE INFORMATION

ROSTAM 『Changephobia (Special Edition)』 Matsor Projects/SPACE SHOWER MUSIC(2021)

TRACKLIST
1. These Kids We Knew
2. From The Back Of A Cab
3. Unfold You
4. 4Runner
5. Changephobia
6. Kinney
7. Bio18
8. [interlude]
9. To Communicate
10. Next Thing
11. Starlight
12. Train In Vain [Bonus track]
13. Fruits Of My Labor [Bonus track]
14. Kinney (ROTH BART BARON Remix) [Bonus track]
15. 4Runner (Backyard version) [Bonus track]
16. These Kids We Knew (Japanese Wallpaper Remix) [Bonus track]
17. From The Back Of A Cab (Billy Lemos remix) [Bonus track]

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