Fly Anakin “No Dough”
天野「今週はポップ系の曲が多かったのですが、次はラップです。バージニア州出身のフライ・アナキンによる“No Dough”。彼はピンク・シーフとのコラボ〈フライシーフ（FlySiifu）〉で名を広めたMCですが、マッドリブが高く評価していることでも知られています」
田中「そんなわけで、この“No Dough”は晴れてマッドリブがプロデュース。埃っぽいビートと、ソウルかディスコからでしょうか? 女声ボーカルやピアノのサンプリングが印象的な、最高にかっこいいブーンバップに仕上がっています。アナキンの、聴いていると唾が飛んでくるようにすら感じる圧の強いラップとの相性も抜群です」
天野「この曲は、3月11日（金）にリリースされる初のソロアルバム『Frank』にリリースからのシングル。アルバムには、盟友ピンク・シーフやヘニー・L.O.（Henny L.O.）らアンダーグラウンドラップの注目株が多数参加しているとのこと。楽しみですね!」
caroline “Good morning (red)”
天野「キャロラインは、僕が去年から推しているロンドンの8人組です。2020年に名門ラフ・トレードからデビューし、インディーロックやフォーク、ミニマルミュージック、ドローン、フリーインプロビゼーションなどが渾然一体となった音楽性で注目されています。彼らについては、粉川しのさんのツイートがよかったですね。〈ジャズ、ポストパンクの基本設定を上書きするようにアパラチアンフォーク、教会音楽、スローコア、J・ケージ的アヴァン諸々盛り込んでなお余白を残し、全貌が欠片しか見えてない感にデビューALへの期待が高まる〉。この形容はすごくいいなと思いました」
田中「まだまだ謎の多いキャロラインは、2月25日（金）にリリースされるデビューアルバム『caroline』でついにベールを脱ぐのでしょうか? 今回アルバムからカットされたシングル“Good morning (red)”は、キャロラインにしては珍しく歌メロとアンサンブルがはっきりとしたフォークロックナンバー。まるで古くから受け継がれてきた民謡のような曲ですが、じわじわと盛り上がっていき、中盤でベースとドラムと弦楽器だけの即興演奏的なアンサンブルになだれ込んでいく。この不定形な音楽は、かなりユニークだと思います」
Camp Cope “Running With The Hurricane”
天野「豪メルボルンのキャンプ・コープの名前は、インディーロックのリスナーなら知っているかも。フロントウーマンのマック（Maq）ことジョージア・マクドナルド（Georgia McDonald）を中心としたオルタナティブロックトリオで、セカンドアルバム『How To Socialise & Make Friends』（2018年）によってオーストラリア国内で成功を収め、国際的にも注目されました」
田中「マックの力強い歌声やリリックが胸を打ちますよね。この“Running With The Hurricane”は3月25日（金）にリリースされる新作のタイトル曲で、マックのお父さんがメンバーだったオーストラリアのフォークロックバンド、レッドガム（Redgum）の同名曲に由来するのだとか。ローファイでミニマルですらあった前作に比べるとドラマティックな曲ですが、魅力や芯は変わっていません。ケリー・ドーン・ヘルムリッチ（Kelly-Dawn Hellmrich）の不思議なベースラインも、相変わらず異彩を放っています」
天野「ちなみに、マックは2019年にソロアルバム『Pleaser』をリリースしています。こちらもぜひあわせてチェックしてください!」
Melody’s Echo Chamber “Looking Backward”
天野「こちらもインディーリスナーなら知っているであろうアーティスト、メロチェンことメロディーズ・エコー・チェインバー。仏パリのエクス＝アン＝プロヴァンス出身のメロディ・プロシェ（Melody Prochet）によるソロプロジェクトで、テーム・インパラのケヴィン・パーカーとの交流で知られています。ファーストアルバム『Melody’s Echo Chamber』（2012年）はケヴィンがプロデュースしていて、この新曲“Looking Backward”もめちゃくちゃテーム・インパラっぽいロックサウンドです」
田中「ベースラインとドラムのビート、ギターのミニマルなフレーズなんかは、まさにそうですよね（笑）。でも、フレンチポップ風のウィスパーボイスや幻想的なムードはメロチェンらしさにあふれています。彼女のサードアルバム『Emotional Eternal』は4月29日（金）にドミノからリリースされるとのことで、期待が高まりますね!」
