Photo : Jeffrey Herman

国際芸術祭〈あいち2022〉にスティーヴ・ライヒ、ジョン・ケージら――〈STILL ALIVE〉をテーマに掲げて困難な時代の〈生〉を考える

 〈あいちトリエンナーレ〉を継承する国際芸術祭〈あいち2022〉が、7月30日から10月10日にかけて開催される。コロナ禍に見舞われてからの開催となる今回は森美術館館長・片岡真実を芸術監督に、テーマとして〈STILL ALIVE〉を掲げ、32の国と地域から計100組のアーティストが参加。愛知芸術文化センターをはじめ県内の各会場で現代美術、パフォーミングアーツ、ラーニングなど、ジャンルを横断したプログラムが展開される。中でも注目したいのが、スティーヴ・ライヒとジョン・ケージという、20世紀の音楽史に巨大な足跡を残し、美術と関連の深い作品を多数送り出してきた2人の作曲家をそれぞれ取り上げた公演だ。

 スティーヴ・ライヒ本人が監修した『スティーヴ・ライヒ~スペシャル・コンサート』(7月30~31日)は、〈ピアノ・フェイズ〉(1967)から〈ディファレント・トレインズ〉(1988)、さらに〈ダブル・セクステット〉(2007)まで、これまでのライヒの音楽活動の全体像が大掴みできるプログラムとなっている。パフォーミングアーツ・アドバイザーを務める前田圭蔵氏は「今回は芸術祭のプログラムの一つとして開催するので、コアなファンだけでなく、アートやカルチャー、政治、社会など様々な関心を持った方々と、ライヒの作品が共鳴するような場を作りたいと思っています。特に若い世代には、半世紀以上前から現代的な実験を続けてきたライヒのスピリットをぜひ生で体感してほしい」と語る。

 一方、ケージ晩年の作品である『ユーロペラ3&4』(8月13~14日)は、歌やピアノから蓄音機、さらに音響や照明までもが、64のマス目に区切られた舞台上で時間軸に沿って不確定的に展開される演劇的パフォーマンスだ。演出を手掛けるのは足立智美だが、パフォーミングアーツ・アドバイザーの藤井明子氏によれば「2007年にサントリー・サマーフェスティバルで『ユーロペラ5』の演出を務めて以降、足立さんがずっと温めてきた企画」だそうで、今回は通常オペラ歌手が担当するヴォーカル・パートの一部を能楽師が担い、鈴木大拙の禅仏教から多大な影響を受けたケージの作品に新たな角度から光を当てる。公演は2日間にわたって行われるが「繰り返し上演しても2度と同じ内容にはならない」(藤井氏)という。

 さらに芸術祭では足立智美による多言語を駆使した音響詩のソロ・パフォーマンス(8月7日)やフルクサスのレジェンド・塩見允枝子による2種類のパフォーマンス作品の上演(8月6日)も行われるほか、鬼才アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作にして初のVRパフォーマンス(10月4~10日)では坂本龍一がサウンドを手がける。パンデミックに戦争と世界情勢が不安定な現在、生き延びる(survive)ことに偏重しがちな社会にあって、今もなお生きている(alive)ことへとあらためて目を向ける絶好の機会となるに違いない。 *スティーヴ・ライヒ本人の来日はありません。

 


EVENT INFORMATION
STILL ALIVE
国際芸術祭「あいち2022」パフォーミングアーツ

2022年7月30日(土)~2022年10月10日(月・祝)
トラジャル・ハレル/スティーヴ・ライヒ/バック・トゥ・バック・シアター/塩見 允枝子/足立 智美/ジョン・ケージ/中村 蓉/今井 智景/ラビア・ムルエ/アピチャッポン・ウィーラセタクン/百瀬 文

■チケット好評発売中
トラジャル・ハレル[7月30日・31日]
スティーヴ・ライヒ[7月30・31日]
バック・トゥ・バック・シアター[7月30日]
塩見 允枝子[8月6日]
足立 智美[8月7日]
ジョン・ケージ[8月13日・14日]

■8月4日(木)10:00~チケット発売
中村 蓉[9月17-19日]
今井 智景[9月30日・10.1日]
ラビア・ムルエ[10月2日・4日]
アピチャッポン・ウィーラセタクン[10月4-10日]
百瀬 文[10月6-10日]
バック・トゥ・バック・シアター[10月8-10日]

■チケット取り扱い窓口
アイ・チケット:0570-00-5310/https://clanago.com/i-ticket
愛知芸術文化センター内プレイガイド:052-972-0430
チケットぴあ:https://t.pia.jp/
伏見ミリオン座(バック・トゥ・バック・シアター[10月8-10日]のみ):https://eiga.starcat.co.jp

主な会場:愛知芸術文化センター/一宮市/常滑市/有松地区(名古屋市)
芸術監督:片岡真実(森美術館館長/国際美術館会議(CIMAM)会長)
主催:国際芸術祭「あいち」組織委員会
https://aichitriennale.jp/