【Discographic】アトモスフィア(Atmosphere)とライムセイヤーズ(Rhymesayers)――新作&重要作で振り返る、インディペンデントの雄による偉大な歩み
- ツイート
-
- 2023.06.01

記念すべき初作にして、2MC体制で残した唯一のアルバム。ビー・ジーズ使いの“Scapegoat”がローカル・ヒットしたほか、エミネム“My Name Is”と同ネタの“Primer”も興味深い。ザラリとした質感としなやかなブーンバップの快感は同時代の日本語ラップにも通じる。

エピタフとジョイントして出した通算3作目。エミネム的なハードコア性も感じられる“Trying To Find A Balance”を筆頭に威勢のいい楽曲が並ぶ。数曲でライヴ・メンバーのネイト・コリスによるギターをフィーチャーしたほか、ブラザー・アリらの客演も光る。

縦横無尽なキャリアを誇った鉄仮面がライムセイヤーズに残した唯一作。食べ物をテーマに奇才ぶりが発揮され、マッドリブとの共作もアリ。なお、KMDの2作目や初ソロ作『Operation: Doomsday』といった名盤は近年ライムセイヤーズからLPリイシューされている。

ATMOSPHERE 『When Life Gives You Lemons, You Paint That Shit Gold 』 Rhymesayers(2008)
異例の全米5位というヒットを記録した5作目。シンセが前に出てきたアントのプロダクションと、前向きなスラッグの語り口がバランスの良い聴き心地を保証する。TVオン・ザ・レディオのトゥンデ・アデビンペと御大トム・ウェイツ、それぞれの客演も聴きどころだ。

50セントらを手掛けて名を上げる前からライムセイヤーズ作品で仕事していたシアトルのプロデューサー。このリーダー作では人脈の幅を活かしてバスタ・ライムズやフリーウェイらメジャーな顔ぶれも多数駆けつけ、デ・ラ・ソウルのポスとスラッグのコラボも実現している。

初作『Rites Of Passage』(2000年)からライムセイヤーズで活動する、生え抜きにしてレーベルの看板たるソロMC。高い評価を得たこの4作目では全編をアントがプロデュースし、チャックDを招いた冒頭曲からストイックに魅了する。同曲とラストにはストークリーも参加。
2枚のEPを間に挿んでの6作目は、スラッグとアントに子が誕生した関係からか〈家族〉を主題にしたコンセプト作に。そんな成熟を見せつつ、ギターと鍵盤を動員した音の雰囲気にはハスカー・ドゥやプリンスといったツイン・シティの先達を連想させるニューウェイヴ感もある。

西海岸アンダーグラウンドを代表するトリオの再結集が、メンバーのエヴィデンスが移籍してきていた縁もあってライムセイヤーズにて実現。DJプレミアや9thワンダーも制作に関与し、円熟味を増した熱い音をストレートに響かせる。ヴィンス・ステイプルズら後進の客演も。

ふたたび全米TOP10入りを果たした7作目。地元讃歌のタイトル曲やその名も“Kanye West”、テーマに沿って“Layla”のコーダ部分をループした“My Lady Got Two Men”など多彩な楽曲が揃った充実作だ。Pファンク軍団のキム・マニングとGクープも声を聴かせる。