Page 4 / 4 1ページ目から読む

2020年代のディラン作とディラン的なあれこれ

BOB DYLAN 『Rough And Rowdy Ways』 Columbia/ソニー(2020)

ノーベル文学賞受賞後の初作にして最新作。ケネディ大統領暗殺事件を描く大作“Murder Most Foul”など無数の固有名詞を羅列しながら淡々とたゆたうようにストーリーを紡いでいく。そんな彼が発散する何やら得体の知れない空気感にただただ圧倒される。 *桑原

 

BOB DYLAN 『Mixing Up The Medicine / A Retrospective』 Columbia(2023)

先日、海外で刊行された未発表の直筆メモや写真、グリール・マーカスら評論家/研究者たちの原稿などから成る同名書籍を機に編まれた新たなベスト盤。ディランのなかでも特にスタンダードと言える12曲を収録しており、今後はこれが入門編となりそう。 *田中

 

BOB DYLAN 『Shadow Kingdom』 Columbia(2023)

2021年7月に配信した同名ライヴを音盤化したもの。ひなびた音色を響かせるアコースティック主体のバンド・スタイルで60~70年代生まれの名曲を矢継ぎ早に披露する御大だが、ハリのある歌声も相まって小気味良い躍動感が横溢、新たな傑作となった。 *桑原

 

BOB DYLAN 『流行歌集』 ソニー(2023)

2023年4月の来日公演に合わせてコンパイルされた、60~2000年代までという、幅広いキャリアを網羅した日本独自企画の2枚組ベスト盤。歌川広重の浮世絵〈大はしあたけの夕立〉にディランとスーズ・ロトロをあしらったジャケも気が利いている。 *田中

 

BOB DYLAN 『Bootleg Series Vol.17: Fragments – Time Out 0f Mind Sessions (1996–1997)』 Columbia(2022)

90年代の代表作『Time Out Of Mind』のセッション音源が中心。超高品質な初期テイクなどお蔵にした理由を問い詰めたくなる名演が多数。ダニエル・ラノワの独特な音処理を排したオリジナル作のリミックスが聴きもの。 *桑原

 

BOB DYLAN 『Bootleg Series Vol.16: Springtime In New York (1980–1985)』 Columbia(2021)

日陰者として扱われがちな80年代前半のアウトテイク集だが、余計な装飾が取っ払われたすっぴんの曲たちは見違えるほど素晴らしく、作曲家として充実期にあった事実を説き明かしてくれる。オージェイズも歌った“Emotionally Yours”とか泣いてしまう。 *桑原

 

THE NITTY GRITTY DIRT BAND 『Dirt Does Dylan』 MRI(2022)

カントリー・ロックの老舗バンドによるディラン・カヴァー集。ラーキン・ポーを迎えた“I Shall Be Released”などストレートな選曲や溌溂としてコクのあるアンサンブルには、ルーツ・ロック好きなら、こうでなくっちゃ!と快哉を叫びたくなる好企画。 *桑原

 

MAVIS STAPLES, LEVON HELM 『Carry Me Home』 Anti-(2022)

レヴォン・ヘルムが亡くなる1年前の2011年に盟友シンガーと録音していた未発表音源が晴れて発表。ゴスぺルや各人の代表曲を中心に、ディラン“You Got To Serve Somebody”も披露。『Last Waltz』時とは歌唱順を入れ替えた“The Weight”が泣けます。 *田中

 

CHRISSIE HYNDE 『Standing In The Doorway: Chrissie Hynde Sings Bob Dylan』 BMG(2021)

コロナ過のロックダウン中に動画で配信していたディラン・カヴァーをまとめた本作は、歌うとは何か?という本質的な問いと真摯に向き合う彼女の姿を細やかに映し出す。“You’re A Big Girl Now”をはじめ、繊細な歌心を覗かせるスロウ系がとりわけ沁みる。 *桑原

 

THE WALLFLOWERS 『Exit Wounds』 New West/BIG NOTHING(2021)

90年代育ちにとってディランと言えば息子ジェイコブだった……とは言いすぎだが、彼の率いるウォールフラワーズは以降も活動を続け、2020年代にも傑作を届けてくれた。パワフルな演奏、4曲で迎えられたシェルビー・リンの芳醇な歌にアメリカが香る。 *田中

 

EMMA SWIFT 『Blonde On The Tracks』 Continental Song City(2020)

豪出身で、現在はナッシュヴィルを拠点にするシンガー・ソングライターがディランの8曲をカヴァーした一枚。ロビン・ヒッチコックやパット・サンソンら手練れの貢献もありつつ、機敏を逃すことなく感情に輪郭を与えていくかのような歌声がとにかく素晴らしい。 *田中

 

YO LA TENGO 『Sleepless Night』 Matador/BEAT(2020)

過去にもディランを取り上げてきた3人組は、奈良美智のLAでの個展に提供したEPで“It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry”をカヴァー。土臭い原曲から一転、ジョージア・ハブレイの歌声とギターの残響で幻想的な世界を作り出している。 *田中