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橘 佳世(福岡パルコ店)

2022年12月11日の配信ライブ。最後になるかもしれない、と。すごく心がざわついたけど、意を決して拝聴しました。私がはじめて教授の音楽に出会った時と変わらない、むしろそれ以上で、カッコよくて素晴らしい、懐の深さを感じる、教授の音楽とピアノ演奏でした。

私と教授の出会いは、“The Other Side of Love”(97年)という曲でした。坂本龍一 featuring Sister Mと、ボーカルを招いての曲。学生時代、音楽ヒットチャートで、初めて教授の名前を知りました。ミステリアスな音楽とボーカルに惹かれシングルを購入、聴き入っていました。音楽番組に出演した時は、当時ボーカルが誰かは明かされておらず(後に坂本美雨さんであることを公表)、ピアノソロでの出演で、その姿がとても印象に残っていました。

その2年後、教授自身が出演・演奏していたCMで“energy flow”(99年)を聴いてその音楽と演奏する教授の姿の虜に。その年の言わずもがなのヒット曲ですが、とにかく教授がピアノを弾く姿がカッコよかったし、なにより奏でられた音楽と演奏が素晴らしかった。教授に憧れてどうしても同曲をピアノで弾いてみたくてスコアを購入して弾こうとしたくらい(だいぶ違う感じになり弾くのは断念……)虜になっていました。

そして自分のなかで大きな存在のアルバムが『/05』(2005年)のセルフカバーアルバム。教授がご自身の楽曲からピアノで演奏。特に“Thousand Knives”は今でもヘビロテで愛聴しています。ふと(やっと)、オリジナルはどんな曲なんだろうか……と思いYMOや教授の初期ソロ作品に出会っていきました。私が知る教授は、ほんの一部でしかないけども、そこから自分が聴く音楽にも大きく影響を受けました。

いまだに悲しさとか、色々な気持ちが心の中で渦巻いているけど、それ以上に尊敬と感謝の気持ちが最大です。

心より教授のご冥福をお祈りいたします。

 

塩谷邦夫(TOWER VINYL)

小学生の頃、YMOというスターが突如現れた。コンピューター音楽を演奏する人たちで、不思議な感じの3人組。夢中になっていたけれども、子どもながらに3人が無機質さを演じている感じは分かってしまう。飄々として掴みどころのない細野さん、一番年下なのに落ち着いて見えた寡黙の人ユキヒロ、そして教授は3人のなかで一番〈そのまま〉な感じがした。のちの〈世界のサカモト〉しか知らない世代には想像できないかも知れないけど、一番親しみやすいメンバーが教授だった。清志郎との“ルージュマジック”や「戦メリ」でスターになっていく姿は、ただ口を開けてポカーンと見ていた。YMOはどうなるんだろ?

高校生の頃に発売された『未来派野郎』には熱中した。教授のソロアルバムの初レコでした。僕の年齢的には初レコは『音楽図鑑』が自然。でも違う。おそらくYMO仲間の友達から借りていたんだ。親しみやすさを感じ続けたのは「音楽専科」に連載されていたロック漫画「8ビートギャグ」に拠るところも多分大。デヴィッド・シルヴィアンやスティーヴ・ジャンセンと並ぶ主役級の扱いで、なかなかなキャラだったがそれを教授自身笑って読んでいたという。世界のサカモトになっても忘れなかったユーモアのセンスにそんな人柄も偲ばれたりなかったり。