Page 2 / 2 1ページ目から読む

古楽をテクノに? 予測不能な進化型コンサート

ピアノとシンセサイザーという鍵盤楽器を携えて、フランチェスコ・トリスターノは7月3日にヤマハホールでコンサートを行う。コンサートタイトルは〈Piano 2.0 -an evening of the 21st century music for piano and electronics-〉。ここまで本文を読み進めてきた方なら、じつに彼らしいタイトルだと頷くことだろう。

〈21st century music for piano〉と言っても選曲は21世紀に作られたものばかり、というわけではもちろんない。作者不詳の15世紀の古楽である“Do la re”とそのリミックスから、『On Early Music』収録曲のリミックス、ルチアーノ・ベリオのライフワークシリーズでもあった“セクエンツァIV”(1966年)、そしてマッテオ・フランチェスキーニ“グラヴィティ”(2021年)、自作曲については『Tokyo Stories』の収録曲を中心に取り上げられるなど、じつに幅広い時代に対応した、まさにフランチェスコ・トリスターノだからこそ可能な選曲になっており、彼がこのコンサートで、アルバムからどれだけ進化しているのか、またピアノとシンセサイザーをどのように組み合わせるのかは注目すべきポイントといえるだろう。

個人的には特に、“Do la re”や“セクエンツァⅣ”のような古楽や現代音楽を、彼がどのように料理するのかが楽しみでならない。“セクエンツァ”のような複雑な和音構造/テンポを持った楽曲をピアノで押し切るのか? “Do la re remix”について彼は「ビート主体のテクノになる」と言っているが、そこでシンセサイザーを用いて新たな解釈を提示してみせるのか? いったいこのコンサートで何が起きるのか、まったく予想がつかない。プログラムに目を通したとき、そのような驚きと期待で胸が高鳴った。

現代ではポップミュージックを中心にジャンル越境的な音楽が頻繁に生まれる、〈ポストジャンル〉の時代と呼ばれ、クラシック音楽界隈でも、ポストクラシカルやインディークラシックという言葉が飛び交い、クラシック~現代音楽が他ジャンルとブレンドされる時代になっているが、フランチェスコ・トリスターノは間違いなくそのシーンをリードする音楽家のひとりであることは間違いない。そんな貴重な才能の来日公演をぜひ見逃さないでほしい。

 


LIVE INFORMATION
フランチェスコ・トリスターノ コンサート(Francesco Tristano)
Piano 2.0 -an evening of the 21st century music for piano and electronics-

2024年7月3日(水)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:18:30/19:00
出演者:フランチェスコ・トリスターノ(ピアノ/キーボード)
料金:5,000円(税込/全席指定)
主催:ヤマハ株式会社ヤマハホール
後援:在日ルクセンブルク大公国大使館

■注意事項
※都合により出演者・曲目が変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。
※コンサート会場への未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
※チケット料金には消費税が含まれております。

■プログラム
M. フランチェスキーニ/グラヴィティ(2021)
F. トリスターノ/ホテル目黒 - エレクトリックミラー - ネオンシティ - 血の音 - 中目黒第三橋(2019)
L. ベリオ/セクエンツァIV(1966)
作者不詳/Do la re(15世紀)
F. トリスターノ/ Do la re remix - 第2チャッコーナ remix - Circum dederunt remix - トッカータ remix(2022)
F. トリスターノ/乃木坂(2021)

■チケット情報
チケットぴあでのご予約・お申し込み
Webからのお申し込み:https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=265-810 ※座席選択可能
Pコード:265-810
発売日:2024年3月9日(土)
座席種別:指定席

■Tickets for overseas
https://sell.pia.jp/inbound/selectTicket.php?eventCd=2408588&rlsCd=003&langCd=eng

■お問い合わせ
ヤマハ銀座店
TEL:03-3572-3171(ヤマハ銀座店 インフォメーション)
営業時間:11:00~18:30
定休日:毎週火曜日(祝日の場合は営業いたします)
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14
アクセス:https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza.html#access
駐車場:https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza/access-map-parking.html

https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza/hall/event/detail?id=5097

 


PROFILE: FRANCESCO TRISTANO
1981年、ルクセンブルク生まれ。バロック音楽、現代音楽、テクノ、自作のレパートリーで世界中を駆け巡り、またJ. S. バッハのピアノ作品の全録音という意欲的なプロジェクトを続けながら、一方で電子音楽レーベルでダンスアルバムを録音する活動もしている。2004年の仏オルレアン20世紀音楽国際ピアノコンクールで優勝、またルクセンブルク・フィルハーモニーによりヨーロッパ・コンサートホール協会のライジングスターアーティストに選出され、ウィーンのムジークフェラインを含むヨーロッパの著名ホールで数多くリサイタルを行う。ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ・フェスティバル、ルール・ピアノ・フェスティバルなど著名な音楽祭に招待され、2010年ハンブルク交響楽団(音楽監督:ジェフリー・テイト)のレジデントアーティストに選ばれ、ソロリサイタルをおこない、ハンブルク交響楽団のソリストとして多くの公演に出演。また一方、テクノの活動ではデトロイトテクノの偉人カール・クレイグから世界各地での公演に数多く招待され共演。2001年の初レコーディングではバッハの“ゴルトベルク変奏曲”を録音。2010年2月の来日では東京、埼玉、神奈川、大阪、山口で全6公演をおこない、以来毎年のように来日。2013年にはバッハ“フランス組曲”全6曲、2015年にはバッハ“パルティータ”全6曲、2017年にはバッハ“ゴルトベルク変奏曲”のオール・バッハのプログラムで日本公演をおこない、バッハ演奏家としての評価を高めている。2010年3月、独ユニバーサル・クラシック&ジャズと専属契約を結び、翌年3月にバッハ、ジョン・ケージ、自作の新曲でドイツ・グラモフォンから『bachCage』をリリース。同年6月の来日ではアルバム『bachCage』のプログラムを含む6公演をおこない、この来日ではNHK BSプレミアム「クラシック倶楽部」にも出演。2012年3月、京都コンサートホールでドイツ・グラモフォンからのCD第2弾『Long Walk』を録音、9月にリリース。2014年6月、アリス=紗良・オットとのピアノデュオアルバム『スキャンダル』をリリース、合わせて全国5か所で日本ツアーをおこなう。2016年3月、ライプツィッヒで自作のピアノ協奏曲“Island Nation”をクリスチャン・ヤルヴィ指揮、MDR交響楽団と世界初演。2017年11月、すみだトリフォニーホールで同曲をクリスチャン・ヤルヴィ指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団と日本初演する。さらに同12月には坂本龍一の招きでグレン・グールド生誕85周年プロジェクト〈Glenn Gould Gathering〉(会場:草月ホール)に参加、グレン・グールドが作曲した曲などを演奏する。2017年、ソニー・クラシカルと録音契約を結び『ピアノ・サークル・ソングス』(2017年)、『東京ストーリーズ』(2019年)、『オン・アーリー・ミュージック』(2022年)をリリース。2023年10月、フランチェスコ・トリスターノの録音を出版するために新しく設立されたレーベル〈intothefuture〉からバッハ“イギリス組曲”をリリースする。2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の番組終わりの大河紀行でピアノ演奏が流れた。