圧巻の現役ぶりを見せつける、リヴィング・レジェンドのアルバム × 2!
一連の〈Slave〉騒動に翻弄された世代のリスナーなら、ある種の感慨を覚えざるを得ないだろう。過去のカタログ原盤権と引き替えにプリンスのワーナー・ブラザーズ復帰が実現したのだ。そして、早速2枚のアルバムがリリース……ひとつは4年ぶりの新作となる『Art Official Age』、もう1枚はプリンス&サードアイガール名義での処女作『Plectrumelectrum』である。『Come』でプリンスの死を宣言し、勝手に“The Most Beautiful Girl In The World”をインディー・リリースした94年から20年というのも因縁を感じさせるじゃないか。
近年もジャネル・モネイに客演したり、ファレルのようなフォロワーの評価を通じてリヴィング・レジェンドとしての存在感を確かにしていたプリンスだが、今回の2タイトルではエナジーの漲った余裕の現役ぶりを見せつけてくれる。まず『Art Official Age』は、ブロステップのノリも我流で取り込んでみた大仰な“Art Official Cage”のオープニングからして最高! まさに20年前ぐらい、自己流のハウスやヒップホップを模索していた時期に通じる、〈どうやってもプリンスにしかならない感じ〉のカッコ良さだと思う。以降も新味を交えながら殿下の宝刀を抜きまくりで、タイトなグルーヴでクラウド社会に言及した“Clouds”や最高に輝かしい手癖をファンキーに繰り出す“The Gold Standard”、ミラ・Jをネタ使いした“U Know”など楽曲は粒揃い。悶絶&懇願系の“Breakdown”や“Adore”っぽい“This Could Be Us”などスロウ系も絶品だ。NPG構成員のアンディ・アローのほか、リアン・ラ・ハヴァスやデライラといったお気に入りも招き、カミールやボブ・ジョージもちょいちょい登場してくるのが楽しい。
対して、実力派の女性プレイヤー3人から成るサードアイガールを従えての『Plectrumelectrum』も勢い十分。バンド名からブーツィー・コリンズとバディ・マイルズを従えたスティーヴィー・サラスのプロジェクトをまず思い出したが、そんなニュアンスも含めたファンク・オリエンテッドなロック・アルバムという雰囲気だ。女性陣にリード・ヴォーカルを委ねた曲もあって、いわゆるバック・バンドとは異なるスタンスで4名が取り組んだ作品とも言えるだろう。そんなわけで、当然わかってはいたことだけど、本当に素晴らしい。改めてプリンスが現役で良かった! 『Purple Rain』の記念盤とかはもう10年後でいいでしょ。
▼関連作品
左から、ジャネル・モネイの2013年作『The Electric Lady』(Bad Boy/Atlantic)、アンディ・アローの2012年作『Superconductor』(Allo Evolution/NPG)、リアン・ラ・ハヴァスの2012年作『Is Your Love Big Enough?』(Warner Bros.)、デライラの2012年作『From The Roots Up』(Atlantic)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ