
こんなにピッチ上げていいんだ! 早回しスタイル誕生秘話
――先日、デラさんのDJをレコードコンビニで初めて観たんですが、衝撃的なスタイルでしたね。歌謡曲もノベルティソングも、全部BPM 140以上に高速化して、歌のピッチも高くして、CDJのループ機能を活かしてノンストップで繋いでいくという。非常に独自のスタイルだと思いました。
「根本では、さっき言ったようなマスターズ・アット・ワークとかに憧れてた人間なんで、選曲の基準でも〈これはハウスとして繋げられる〉みたいな感覚があるんですよ」
――ニューヨークハウスじゃないけど、シカゴのゲットーハウスが高速化していったような感じは、デラさんの高速DJにも似てるかも知れませんね。先日亡くなったDJファンクしかり。
「ああ、ちょっとあるかも知れませんね。90年代後半って、ハウスのBPMが速くなってたんですよ。スピードガラージや2ステップを聴いた時の〈こんなにピッチ上げていいんだ〉という衝撃は、原体験としてありますね」

――確かにUKガラージなんかも、R&Bの早回しっていう側面がありますよね。それがデラさんのDJスタイルのインスピレーションとなっているというのは納得です。TikTokでも、〈Sped Up〉なんていうカルチャーがありますが。
「とにかく、歌謡曲のCDもハウス的な解釈で繋ごうとして、あのピッチの速さになったんですけど、ヴェイパーウェイヴ~フューチャーファンクのブームとリンクしてるんじゃないかと自分では思ってましたね。
CDJも、900-NEXUSとか新しい機材じゃなくて、CDJ-400(2007年発売)が好きですね。最新のCDJだと、ピッチを大幅に変えた時の音がキレイ過ぎるんです。CDJ-400だと音の劣化加減がちょうどいい(笑)。デジタルなのにローファイ、みたいな感覚を追求してますね」
――MPCやSL-1200の音の太さを比較するBボーイはよくいるけど、今、CDJのそこの音質にこだわるDJは珍しいですよね。

鳥よけにも使える!
――デラさんが主に中古CDを買う店はどこですか?
「渋谷のRECOfanとか、BOOK OFF新宿西口店とかが多いですね。あ、タワレコが始めた中古CDコーナーも行きましたよ(笑)。旅行に行ったときは、郊外のリサイクルショップも覗きます。本当はもっと地方に行きたいんですけどね。やっぱり地方にはまだ、謎のCDが眠っていると思いますよ」
――この連載で柴崎祐二さんも、沼津の祭りのCDについて熱く語られていました。
「地方にはたまにあるんですよね、本当に凄い店が。どういう流通でそこに行き着いたのかわからないけど、謎の中国のニュージャックスウィングみたいなCDがズラーッと並んでるような店。〈この店、まだ柴崎さんやピジョンさん※に掘られてない!〉みたいな(笑)」
――そういうマニアの間で、昨年、話題になっていたのは茨城の、閉店した元Disc-auntの倉庫開放ですよね(2025年3月に再び閉店)。屋内プール跡のビルに、大量の中古CDがドッサリと置かれてる、衝撃的な光景でした。「ガイドブック①」の表紙の撮影地にもなっていますよね。
「いやー、あそこは凄かったですねえ。もともとDisc-auntはよく通っていたんですが、閉店して1年後、休止していた店のXアカウントが急に〈倉庫のCDを開放します〉みたいなことを呟きまして。直後に予約連絡を入れ、近くに宿を取って前乗りしましたよ。大仕事になるだろうから、と(笑)。それで、宿で何気なくXを見ていたら、8cm CDマニアのnakamura8cmさんが、山のようにCDが積まれた謎の店の写真をアップしてて。〈これは凄い! どこの店だろう?〉と思ってその日は寝たんですけど、翌日Disc-auntの倉庫に行ったら、その写真の光景だった(笑)」
ありがとう。例の100円CDプールこと、Disc-aunt倉庫よ。最後の最後まで最高すぎて、思わず22:00まで滞在。およそ9ヵ月間の開店だったにせよ、間違いなく世界一の100円CD量を誇る中古屋で、内容も非常に良かった。今後、二度とこのような店が出現することはあるまい。夢を、見させていただいた。 pic.twitter.com/nNpaZaxbKv
— デラ (@derax456) March 22, 2025


――nakamura8cmさんの方が、一足早く来てたんですね。他に印象に残ってるお店はありますか?
「ちょっと前、リサイクルショップで、むき出しのCDがゴソッと1枚22円で投げ売りされてたんですけど〈鳥よけにも使える!〉って書いてあって(笑)。しかも、BUDDHA BRAND『人間発電所』とかハービー・ハンコック『Maiden Voyage』とか、普通に名盤も混じってましたね。海辺に車を停めて、そこで買ったボロボロの『人間発電所』がカーステレオで再生できた時は感動しちゃいました」
――鳥よけに『All Eyez On Me』(2パック)って書いてあるのは面白いですね(笑)。自分も昔、ラーメン屋の裏のゴミ捨て場の鳥よけCDが気になって、近づいてよく見たら〈山下達郎ベスト〉と書かれたCD-Rだったことがあります。
私対策なのか、某店がしっかり値付けをし始めたので、ついに鳥よけ20円コーナーに手を出してしまった。ブッダのファーストが鳥よけなんて、バチが当たるぞ。 pic.twitter.com/EzOpYrjyDR
— デラ (@derax456) February 18, 2022
鳥よけ20円コーナーに置かれてあったブッダブランドの『人間発電所』、バッチリ再生できましたので、ただいま波打ち際で聴いております。月がきれいです。 pic.twitter.com/zB8Yt7v8Oa
— デラ (@derax456) February 18, 2022