国内外のビートメイカーがサンプリングする光田サウンド
また、「クロノ・トリガー」のスコアをサンプリングした楽曲がたびたび登場している点からも、光田サウンドの一聴して耳に残る記名性の高さが推し量れるだろう。“時の回廊”のシンセリフを夢の入り口へと変貌させたロジック“Used To Hate It”、同じく“時の回廊”をオリエンタルなダンストラックに仕立てたグラウンディスラヴァ“Cool Party”、“サラのテーマ”“樹海の神秘”を敷くことでチルなトリップ感覚とノスタルジックな煌めきを表現したウィズ・カリファ“Never Been”“Never Been, Pt. II”、“樹海の神秘”から抜き出したシンプルなピアノのフレーズで感傷を際立たせたドム・ケネディ“Locals Only”……と、曲ごとの持つ世界観は異なれど、いずれにも染み入るようなリリシズムを付与。ここ日本でも、どこか寂寥感も漂う“風の憧憬”の使用で切なさを増幅させた清水翔太“風のように”をはじめ、さまざまなビートメイカーが「クロノ・トリガー」の旋律を自身の音世界に取り込んでいる。
ちなみに、この原稿を執筆している最中に〈クロノ・トリガー時を超える名曲キャンペーン〉と題した投票(SNSでのポスト)によるベスト50曲が発表されたが、上述のサンプリングされた原曲が軒並みベスト10内にランクインしている点も、そのキャッチーさがワールドワイドに認められていることを示しているようで興味深い。
ストーリーや思い出と結びついたスコア
その一方で、トップ10を改めて振り返ったときに驚いたのは、それぞれのスコアが個人的な記憶とも強く結び付いているという点。例えば日常シーンで流れる10位の“やすらぎの日々”はゲームを楽しんでいた当時の自身の日常と重なるし、4位の“魔王決戦”は無音からのイントロ→イントロにフェイドインする吹き荒ぶ風の音……と、決戦の火蓋の切り方が30年を経たいま聴いても途轍もなくカッコ良く、そう言えば、別の重要シーンでもこの曲を聴きたくて、あるイベントには必ずあるキャラクターを仲間に入れて挑んでいたな、としみじみ思い出したり。ネタバレになるので詳細は避けるが、ここであの曲を聴きたいからこういうシナリオ選択をする、という楽しみ方ができたのも頭抜けたクォリティーの音楽があってこそだ。
なお、1位となった中東風の“時の回廊”に寄せた光田のコメントによると、シタールのような民族楽器をゲーム(しかもスーパーファミコン)で使用した例が当時はなかったそう。時代を問わず、常に懐かしく、そして新鮮に響く──そのために前例のない挑戦を繰り返し、我流のキャッチーさを更新し続けてきた点に光田サウンドの凄味がある。その歴史の起点となるのが、「クロノ・トリガー」の音楽なのだ。