グラミーノミネートから3年、総括と進化が詰まったアルバムが完成!
デビューから連綿と続くアルバムリリース、またそれぞれのソロ活動や別ユニットの結成などの経験を経て、現在では一聴して〈ムーンチャイルド〉と分かる、すでにブランド化されたサウンドを手に入れた彼ら。パーフェクトにコントロールされたグルーヴに、それぞれのメンバーが管楽器奏者でありながらも〈歌える〉からこそのレイドバックしたホーンセクション、そこに加わるキャッチーなパッドやシンセ、ゆるりとしながら温かいベースサウンド。それらを包み込むアンバー・ナヴランのシルキーなウィスパーヴォイス。そしてこのブランドの源泉とも言えるは他のグループには真似できない洗練されたセンス。決して華美になることなく、必要最低源の要素で心地よいサウンドを創り出す構築力だ。
今回届けられた本作品でも過去の系譜は健在。それらを踏襲しつつも新たなチャレンジが随所に現れる。アルバム制作にあたりコラボレーティブな作品にするため、メンバー間のリレーションの密度を上げ楽曲制作を行ったほか、前作以上に多くのゲストが参加している。特に印象的なのはラッパーやゲストドラマーの起用だ。1曲目に登場するラプソディのラップはバンドの進化を象徴する。中盤で魅せるフローは前半からの予定調和感を裏切りカウンターを浴びせる。またゲストドラマーとしてはクリス・デイヴが4曲にエントリー。収録曲の“For Yourself”では、デモ時に元々あった打ち込みドラムをミュートして聴かせ、クリスのイメージでアプローチしてもらったトラックを採用したそうだ。このようにゲストのキャラクターをバンドに取り込みつつ、自分たちのサウンドに昇華させることができるのもその高い音楽リテラシーが成せる技だろう。
メンバーそれぞれの経験、葛藤、成長を踏まえ、そして戻るべき場所としての〈ムーンチャイルド〉の存在を再確認しつつ、デビューから10数年の活動の総括と今後の進化を予感させる、そんな仕上がりだ。全14曲の大作をサラっと聴かせてしまうのがこのバンドの〈静かなる凄み〉だと思う。
