R&Bへのラヴレター
ケラーニを初期から支えてきたポップ&オークのセンスも光る。近年はポップ(・ワンゼル)が2022年作『Blue Water Road』、オーク(・フェルダー)が2024年作『Crash』をそれぞれ単独で手掛けていたが、本作では久々に連名で参加。メランコリックなミッド・グルーヴの“No Such Thing”では、名手ボラ・セチのギターを(おそらくJ・ディラ製のビート経由で)サンプリングし、ファーサイドの“Runnin’”を思わせるドラム・ループでケラーニの歌を運んでいく。そこにルーサー・ヴァンドロスの曲タイトルやリリックを引用したラップで切り込むクリプスも実にクール。T・ペインとリル・ジョンが客演したスナップ・ビートの“Call Me Back”も含めて往時をレミニスさせるが、2026年の空気へと変えているのは総指揮を務めるクリスの手腕だろう。
ブランディを迎えた“I Need You”は、〈声の聖典〉として崇められるブランディを慕うケラーニにとって音楽人生のハイライトとも言える瞬間だったに違いない。滑らかなフェイクや重層的なハーモニーも含めてブランディの“When You Touch Me”を思わせるこのスロウを手掛けたのがジャム&ルイスというのも破格の説得力を持つ。タンクやケリ・ヒルソンらが共作した“Oooh”や本編のラストを飾る“Unlearn”もブランディが歌っているのかと錯覚しそうになるスロウで、改めてケラーニの歌唱ルーツに触れる思いだ。
95年生まれのケラーニがリアルタイムで聴いてきたR&Bにしたためたラヴレターのようなアルバム。彼女にとってのマイルストーンとして語り継がれていく作品になることは間違いない。
『Kehlani』参加アーティストの作品。
左から、レオン・トーマスの2024年作『Mutt』(Motown)、ビッグ・ショーンの2024年作『Better Me Than You』(FF To Def/Def Jam)、カーディBの2025年作『Am I The Drama?』(Atlantic)、クリプスの2025年作『Let God Sort Em Out』(Roc Nation)、ミッシー・エリオットのベスト盤『Respect M.E.』(Atlantic)、ブランディの2002年作『Full Moon』(Atlantic)、アッシャーの2024年作『Coming Home』(Mega/Gamma)、リル・ジョンの2010年作『Crunk Rock』(Republic)、T・ペインの2023年作『On Top Of The Covers』(Empire)、トニ・ブラクストンの2020年作『Spell My Name』(Island)、7月10日にリリースされるニーヨのニュー・アルバム『Highway 79』(10k Projects)