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1986年、突然現れてあっという間に去っていった

さて、あれこれ御託を並べてみたが、それはあくまで2026年の、しかも音楽ライターという視点によるものだった。そこで、最後に少しだけ昔話をしてみたい。

1986年、中学2年生の僕は50sのロックンロールに触れたことで音楽を聴き始めてはいたが、日本のロックや歌謡曲に関してはほとんど無知だった。じつはサザンオールスターズも名前を聞いたことがあるという程度の認識だったのだ。

そんな折、たまたまテレビで見かけたKUWATA BANDが歌う“スキップ・ビート”にとんでもなく衝撃を受けてしまったのである。あのときの感動を言葉で表すのは難しいのだが、一言でいえばとにかく〈無茶苦茶カッコよかった〉のだ。興奮のあまり、カセットに録音した“スキップ・ビート”を父親に無理やり聴かせたところ、「グループサウンズみたいだな」と軽く流されたのを昨日のことのように憶えている。

KUWATA BAND 『スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)』 タイシタ(1986)

そしてまた、お盆の親戚の集まりで年上のイトコにKUWATA BANDがお気に入りだと伝えたところ、桑田はサザンの人であると初めて聞かされたことも思い出した。僕はあの夏、モノトーンの英字新聞柄の開襟シャツと、母が買ってくれた白いツータックのパンツがお気に入りだったのだ。

そうだ、彼らほど明瞭に〈その年の記憶〉と結びついている音楽は他にない。なにしろ活動していたのは1986年(解散コンサートは1987年に開催)というたった1年間だけだったのだから。

それから当然のようにサザンを聴き、日本のロックやポップスにも馴染むようになっていった。それでも僕にとって、あの夏に突然現れてあっという間に去ってしまったKUWATA BANDはなによりも特別なのだ。

つまりは“MERRY X’MAS IN SUMMER”の歌詞の通り。

〈Show me please. 忘られぬ ああ 夏の日よ/振り返れば風の中で/神様が佇むこの街〉

 


PROFILE: 北爪啓之
1972年生まれ。1999年にタワーレコード入社、2020年に退社するまで洋楽バイヤーとして、主にリイシューやはじっこの方のロックを担当。2016年、渋谷店内にオープンしたショップインショップ〈パイドパイパーハウス〉の立ち上げ時から運営スタッフとして従事。またbounce誌ではレビュー執筆のほか、〈ロック!年の差なんて〉〈ろっくおん!〉などの長期連載に携わった。現在は地元の群馬と東京を行ったり来たりしつつ、音楽ライターとして活動している。NHKラジオAM「ふんわり」木曜日の構成スタッフ。