祈りや神聖なイメージの曲で聴き手の心を癒す
クラシックの古典的な作風による小品からミュージカル、映画音楽、初めて書いた自作まで、多彩な選曲による新譜をリリースした寺下真理子。ノルウェー出身のクリスティアン・シンディングの《古風な様式の組曲》はぜひ収録したかった作品だという。
「あまり知られていない作品ですが、古風で美しい旋律を備えていますので、ぜひ広めたいと思って録音しました。自分のオリジナリティが出せれば…」
寺下真理子は数多くのヴァイオリニストがいるなかで、いかにしたら自身の個性を表出することができ、聴衆が演奏に関心をもってくれるかをずっと模索している。自作品を編み出したのも、幅広い選曲をしたのも、すべて聴き手とのコミュニケーションを考慮してのこと。今回のアルバムは祈りや神聖なイメージが全編を覆い、聴き手の心が浄化されることを願っている。
「人間はそれぞれ使命をもって生まれてくるのだと思います。各々の使命が輝き、どう生きるかが重要で、私自身はヴァイオリニストですから音楽で人の心を救いたい。そのために日々練習を重ねています。人は本来、夢をたくさん抱いているのに、それが年を重ねることにより、厳しい現実のなかで壊れていったり失われたりしてしまう。その夢をあきらめないで探求し続けてほしいし、私も音楽を通して自分の夢を実現したいと願っています」
その夢は、音楽で人々の心を癒すこと。ここには《アヴェ・マリア》《アヴェ・ヴェルム・コルプス》《G線上のアリア》など、究極の旋律美に貫かれた作品が含まれている。寺下真理子はそれらを聴き手の心にじっくりと語りかけるように、ゆったりと紡いでいく。
「ヴァイオリニストになりたいと思ったのは、小学校3年生のとき。五嶋みどりさんのレクチャーコンサートに出演することができ、その真摯で一途な生き方に魅了されたからです。その後、アイザック・スターンの公開レッスンでも大きな影響を受け、人間としての生き方が演奏に反映することがわかりました。以来、自分の人間性を磨くことの大切さを痛感し、深みのある人間になりたいと思うようになったのです」
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が大好きで、特に神聖な第2楽章に心が浄化させられるという。夢は「財団を設立して自分の使命を尽くすこと」と明言する彼女は、一本芯の通った凛とした姿勢をもつ。子どものころから人と群れることが苦手で、ひたすら自分の好きな道を歩んできた。「死ぬときにいい人生だったと思える生き方をしたい」と話す、年齢を超えた達観した考えの持ち主。ヴァイオリン界に現れた個性派は、弦に自身の思いを乗せ、人々の心に熱く語りかける。
LIVE INFORMATION
雛音遊び ~ ひいな おと あそび 雛祭りガラ・コンサート
○3/3(火) 18:30開場 19:00開演
会場:全労済ホール/スペース・ゼロ
出演:寺下真理子(vn)/小川里美(S)/須藤千晴(p)/石亀協子(vn)/上野由恵(fl)
司会:長澤彩
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