例えば、文学的な詞世界で世界の美しさと醜さを描くカフカが、かつてLOWNAMEという名前で活動していたように、己の内にくすぶる冷めた感情を短い期間で燃やし尽くしたBURGER NUDSの鮮烈な軌跡は、(本人たちの思いは別として)その後のシーンに少なからず影響を与えてきた。そのシニカルな精神は、現実への鬱屈した思いを音楽で表現する現行のバンドたちにも深くリンクするはずだ。真っ先に思い浮かぶのは、世の中のあらゆる物事を唾棄しながら、最後には〈こんな自分がくだらねえ〉と悲痛に叫ぶ、それでも世界が続くなら。さらに、みずからの後ろ向きな感情を清廉としたギター・サウンドに乗せて歌うSuck a Stew Dryや、CD帯の惹句〈鬱と狂気とロックンロール〉を地で行く真空ホロウなど、これまでの人生で抱え込んできたルサンチマンをウェットに爆発させる彼らの姿は、BURGER NUDSのヒリヒリとしつつも乾いた視線とは真逆のイメージながら、どこか繋がりを感じさせる。

 【参考動画】真空ホロウの2013年作『少年A』収録曲 “アナフィラキシーショック”

 

 無情な世界での生きづらさと、それでも前進しようとする決意を、ドラマティックなメロディーと物語に託すLyu:Lyuもまた然り。ダウナーな世界観がBURGER NUDSの直系と言えそうなbutter butterは、最新作『どこにでもあること』において、〈学校の教室〉を舞台にいじめられっ子が一筋の光明をめざしてもがく様をコンセプチュアルに綴っていた。このたびのBURGER NUDSの復活はもちろん本人たちの意志によるものだが、こういったバンドが活況を呈している状況を鑑みるに、時代が要請した結果なのかもしれない。

 【参考動画】Lyu:Lyuの2013年作『君と僕と世界の心的ジスキネジア』収録曲 “回転”

 

 

▼関連作品

左から、カフカの2014年作『Rebirth』(K's Factory)、それでも世界が続くならの2014年のミニ・アルバム『明日は君に会いに行くから』(クラウン)、Suck a Stew Dryの2013年のEP『世界に一人ぼっち』(ラストラム)、真空ホロウの2013年のミニ・アルバム『少年A』(エピック)、Lyu:Lyuの2013年作『君と僕と世界の心的ジスキネジア』(SPACE SHOWER)、butter butterのニュー・ミニ・アルバム『どこにでもあること』(6jomaProject)
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