コラム

灰野敬二が初作曲に挑む“奇跡”公演など、音と音楽への反時代的アプローチ紹介する〈Sound Live Tokyo〉第4回開催

『奇跡』 - Drawing by Noriyuki Kiguchi

 

 「サウンド」を前面にだしてくるフェス。「サウンド・ライブ・トーキョー」。主催者側がみずからを説明することばは「音と音楽への反時代的アプローチを紹介するフェスティバル」。ここでは、音楽とふつうに呼ばれるもののほうが、サウンドに間借りをしているかのよう。いや、そんなのはあくまで見掛けだけ。おこなわれるものをざっとみると、どれもサウンドを中心に据えつつも、身体や(ひじょうに広義の)テクノロジー、視覚性、場と結びついたもので、そこに音楽であるとかないとかを持ちだすのはセンスを疑われるというもの。

 予定されている公演について、すこしずつみていこう。

 灰野敬二による初の「作曲」、《奇跡》。何でも、ケージ《4分33秒》への応答としてあたためていたものという。灰野敬二は、いうまでもなく、徹底してパフォーマーとして活動してきたわけで、その瞬間ごとに作曲家=演奏家だった。それが、ここでは作曲を切り離し、他者を動員することになる。指揮もおこなう、とのことで、これは聴覚的にも視覚的にも必見。会場が草月ホールというのも重要だ。ここは1962年にケージがテュードアと来日し、極東の作曲家・演奏家とコンサートをおこなった場所にほかならないのだから。

 ジャチント・シェルシ(1905-1988)の《山羊座の歌》。このイタリアの作曲家は、「作曲」について問いを投げかける人物と言っていい。はたして一個人はどこからどこまで作品を書きうるのか。他者と共同して作曲するとはどういうことなのか。音がたちあがり、それを記譜する/再現することと作曲とは。等など、といったように。《山羊座の歌》は、平山美智子なくしては存在し得なかった声の作品として知られており、またこの音楽家以外には歌えないとされていたものだ。それが今回、平山に教えを受けた太田真紀がはじめて全曲演奏をおこなうことになる。

 1993年に来日し、その上映が従来の映像とずれを生み、静かな衝撃を生んできたケン・ジェイコブス。本年の恵比寿映像祭でも近年の作品が紹介され、この秋にも関連企画がシアター・イメージフォーラムでおこなわれるという。そのジェイコブスによる3Dライブ上映と、恩田晃の演奏が交錯するのが今回の上演となる。恩田晃は、拠点をこの列島から外に置いているが、カセットテープによるフィールド・レコーディングを素材に、「演奏」をおこなう。それが《ナーバス・マジック・ランタン》だ。

 1日に2つのイヴェントがセットされるのは、《ナイショ・ウェイブ・マニフェスト》と《バウンス・ハウス》。これはなかなかに珍しい問いをはらんでいる。

 前者はテーリ・テムリッツ、後者はクリスティン・スン・キムによる。

 テーリ・テムリッツは「アメリカ嫌い」を自称、川崎在住。複数の顔でパフォーマンスをおこなっており、今回はレクチャー・パフォーマンスで、アイデンティティ・ポリティクス、フェミニズム、トランスジェンダーといった諸テーマを積極的に議論し、作品のなかに問いとして埋めこんでゆく。

 クリスティン・スン・キムは「ろう」のサウンド・アーティストだが、この人物のコンセプトによる20Hz以下の音のみを用いたダンス・ミュージック・イヴェントが《バウンス・ハウス》。これは……興味があると同時にちょっと怖くもあり……。

 ニューヨークを拠点とする現代演劇のパイオニア「ウースター・グループ」(初来日)による《初期シェーカー聖歌:レコード・アルバムの上演》。

 「レコード・アルバムの上演」とはどういうことかといえば、「男女同権、性的禁欲、良心的兵役拒否、家具デザインなどで知られるシェーカーに“授けられた”伴奏なし・単旋律のミニマルな聖歌を、レコードをインイヤーモニターで聴きながら女優たちが忠実に再現する」という。シンプルにみえながら、しかしここには「聴く」ことと「発声」「模倣」が、遠い時間とすぐそばの時間、まわりの人たちとの時間といったさまざまな時間との近さとずれが浮き上がってくるはずだ。

 また、詳しくは紹介できないけれど、新人公募プログラムによる「ライブ・パフォーマンス」と「サウンド・インスタレーション」は、《東京都初耳区》という名で催されることも、忘れずにおきたい。

 いわゆる「音楽」以上に「サウンド」を前景化したこうした催しは、音楽の受動的なエンタテインメント性ではない、もっとべつのかたちでの音・サウンドについて、ヒトの心身について、体感させ、考えさせてくれるものとなるだろう。

【参考動画】〈Sound Live Tokyo〉2012年から2014年までの公演映像

 

LIVE INFORMATION
第4回「サウンド・ライブ・トーキョー」
~⾳と音楽への反時代的アプローチを紹介するフェスティバル~

○『奇跡』10/2(金)19:00 開場/19:30 開演
作曲・指揮:灰野敬⼆ 演出・設計:危⼝統之 会場:草⽉ホール

○『⼭羊座の歌』10/12(月・祝)18:30 開場/19:00 開演
作曲:ジャチント・シェルシ 演奏:太⽥真紀(S)溝入敬三(cb)大⽯将紀(sax)稲野珠緒神⽥佳子(perc)有⾺純寿(electronics) 会場:SuperDeluxe

○『ナーバス・マジック・ランタン』11/3(火・祝)18:45 開場/19:00 開演 
※シアター・イメージフォーラムにて10月下旬に関連上映あり(詳細後日発表)
ライブ上映:ケン・ジェイコブス/フロ・ジェイコブス
作曲・演奏:恩田晃 会場:スパイラルホール

○『ナイショ・ウェイブ・マニフェスト』『バウンス・ハウス』(2本立て公演) 11/15(⽇)18:30 開場/19:00 開演
『ナイショ・ウェイブ・マニフェスト』レクチャー・パフォーマンス:テーリ・テムリッツ
『バウンス・ハウス』コンセプト:クリスティン・スン・キム
会場:SuperDeluxe ※Q&A、⼿話通訳あり

○『東京都初⽿区』会場:SuperDeluxe
★ライブ・パフォーマンス 11/23(⽉・祝)18:00 開場/18:30 開演
ゲストアーティスト:多⽥正美ジョー・モリス 新人アーティスト:3組出演予定
★サウンド・インスタレーション 12/8(⽕)~ 12/10(木)14:00~22:00
参加アーティスト:浅野達彦⽯橋英子ジム・オルーク柴山拓郎Phew嶺川貴子吉原太郎キャル・ライアル

○ ウースター・グループ『初期シェーカー聖歌:レコード・アルバムの上演』
出演:シンシア・ヘッドストロムエリザベス・ルコンプトフランシス・マクドーマンドビビ・ミラーサジー・ローチマックス・バーンステインマシュー・ブラウンモデスト・フラコ・ヒメネスボビー・マクエレバージェイミー・ポスキンアンドリュー・シュナイダー 演出:ケイト・ヴァルク
12/22(火)19:15 開場/19:30 開演 
12/23(水・祝)15:45 開場/16:00 開演、18:45 開場/19:00 開演 
会場:スパイラルホール
www.soundlivetokyo.com

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