東洋の思想と零点エネルギーから生まれたマルチメディア・パフォーマンス 世界初演は高知で!
イギリスの振付家でサウンド/ヴィジュアル・アーティストでもあるダレン・ジョンストンは、エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーらのエレクトロニック・ミュージックと密接に関わってきた存在である。エイフェックスと映像作家のクリス・カニンガムがおこなったライヴ・ショーでのダンサーの振り付けや演出は特に有名だが、現代音楽や即興音楽との組合せが多かったコンテンポラリー・ダンスの世界と、クラブ・ミュージックも含めたエレクトロニック・ミュージックを積極的に結びつけた第一人者とも言える。近年もエクスペリメンタルなエレクトロ・サウンドを作っているローレル・ヘイローと初音ミクのプロジェクトにヴィジュアル・アーティストとして参加してもいた。
そのジョンストンは、2013年にアーティスト・イン・レジデンスとして高知県立美術館に招聘された。その機会を端緒として制作されたのが「ZERO POINT」である。滞在中に日本文化にも深い興味を抱いたというジョンストンは、この作品でダンサーの身体とプロジェクション・マッピングやモーション・トラッキングなどのデジタル・テクノロジーを組み合わせて、再生、儀式といった東洋の思想と量子力学の零点(ゼロ・ポイント)エネルギーの概念から着想を得た、瞑想的な空間を作り出す。2014年にはイギリスのバービカンセンターでプレヴューの公演がおこなわれ、好評を博したことで、高知県立美術館とバービカンセンター、パース国際芸術祭の共同製作という形で最終的に「ZERO POINT」は完成する。
今回もジョンストンはエレクトロニック・ミュージックを使っている。そして、その作り手として選ばれたのは、エクスペリメンタル、アンビエント、テクノのフィールドを自在に行き来して、数々のレーベルからリリースを重ねてきたカナダのティム・ヘッカーである。空間を最大限に活かした音響構築を得意とするヘッカーのサウンドは、これまでもコンテンポラリー・ダンスやサウンド・インスタレーションと関わってきたが、ジョンストンとのコラボレーションは初めてのことであり、両者のキャリアを振り返ると非常に興味深い組合せである。ダンサーは、元新国立劇場バレエ団プリンシパルの酒井はな、ドイツのザ・フォーサイス・カンパニーで活躍し、ラッパーの環ROYとの共演もしている島地保武ら、日本のトップダンサーが出演する。
バービカンセンターでのプレヴューの公演の映像を観る限りでは、これまでのジョンストンの作品の中でも特に音響と身体の動きの集中度が研ぎ澄まされており、音楽リスナーも充分に楽しめる作品に仕上がっていると思われる。高知県立美術館ホールでの世界初演への期待は高い。
INFORMATION
高知パフォーミング・アーツ・フェスティバル2016
日英豪国際共同製作 世界初演
ダレン・ジョンストン
「ZERO POINT/ゼロ・ポイント」
2016年6月25日(土)開演19:00
2016年6月26日(日)開演15:00
会場:高知県立美術館ホール
振付・演出:ダレン・ジョンストン
作曲:ティム・ヘッカー
出演:酒井はな、島地保武ほか
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