(C)Akihiro Ito


ロマン派の名作に武満作品を加えて。待望の新録音をリリースする諏訪内晶子

 4年振りの新録音をリリースする諏訪内晶子。ロマン派の傑作ソナタであるフランクとR・シュトラウスに加え、今年没後20周年となる武満徹の作品もカップリングされた。ファン待望の新作となる。

諏訪内晶子 フランク&R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 他 Decca/ユニバーサル(2016)

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 「R・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタは作曲家がとても若い時期の作品ですが、後のオペラや歌曲を思わせる華やかな雰囲気を持っています。その完成は1888年でシュトラウスはまだ20代前半でした。一方、フランクは1886年に完成、ベルギーの巨匠であったヴァイオリニストのイザイの結婚祝いとして贈られました。フランクはすでに64歳でしたけれど、この作品の中には若々しい情熱も感じられると思います。対照的な作風をもつこのふたつの作品が、ほぼ同じ時期に書かれたというのはとても興味深いことだと思います」

 と語る諏訪内。共演したピアニストはイタリア出身のエンリコ・パーチェである。1967年イタリアのリミニ生まれ。1989年の第2回国際フランツ・リスト・ピアノコンクールで優勝した経験を持ち、ヨーロッパ各地でソロ、協奏曲、室内楽で多彩な活躍をしている。

 「実はパーチェさんのことは知らなかったのですが、ある時、イギリスのラジオでR・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタが流れていて、そのピアノがとても素晴らしかった。誰が弾いているのだろう?と思って調べてみると、彼だったのです。一緒にR・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタを共演したいと思い、ようやく昨年の国際音楽祭NIPPONでのコンサートで共演が出来ました」

 そのコンサートを横浜みなとみらいホールで聴くことが出来た(2015年11月30日)が、初めての共演とは思えないほど、息の合った大人のデュオという感じがした。そのコンサートの雰囲気そのものが、今回の録音の中にも感じられると思う。

 「録音はパリの教会にパーチェさんが使っているピアノを持ち込み行いました。彼はかなりこだわりがあるピアニストです。特にフランクのソナタでは、ピアノの和音の中でどの音が聴こえるべきなのか、何度も試して演奏していました。もちろんお互いに意見を交換して、リハーサルを重ねて録音に臨みましたが、それでも意見が一致するまでに時間がかかりましたね」

 武満徹の《悲歌》は1966年の作品。ちょうど50年前の作品ということになる。

 「とても繊細でありながら、広大な世界も感じさせてくれる作品です」

 銘器ドルフィンによって奏でられるこれらの作品。時代に関わらない永遠の音楽の魅力というものを改めて教えてくれる録音である。

 


LIVE INFORMATION

テミルカーノフ指揮 サンクトペテルブルグ交響楽団
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲)
○5/30(月) 東京・サントリーホール

<トランス=シベリア芸術祭 in Japan>
レーピン&諏訪内&マイスキー&ルガンスキー

○6/18(土) 東京・サントリーホール
○6/20(月) 北海道・札幌コンサートホールKitara

ブロムシュテット指揮 バンベルク交響楽団
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲)
○11/2(水) 東京・サントリーホール