イタリアの新星、《ゴルトベルク変奏曲》に挑戦!
ここのところ、バッハを弾く若いピアニストが増えているように感じる。この世代は物心がついた時からチェンバロにも親しんでおり、もはやそれを否定することもなく、歴史的奏法についても学んだ上で、モダン・ピアノでの自分なりのバッハを追求しているのが特徴だ。
イタリアの新星、ベアトリーチェ・ラナもそんな一人。ワーナークラシックスからのデビュー・アルバムでは、パッパーノ指揮サンタ・チェチーリア管とチャイコフスキーとプロコフィエフのピアノ協奏曲を切れ味鋭く演奏したが、こんどのソロ・アルバムでは一転してバッハの大作「ゴルトベルク変奏曲」に取り組み、24歳とは思えない思索的な演奏を聴かせている。
イタリア南部、“長靴のかかと”と呼ばれる美しいバロックの町レッチェで育ったラナ。両親ともピアニストという環境で、子どもの頃からピアニストになる以外の選択肢は考えたことがなかったという。
3歳から地元のヤマハ音楽教室でピアノを始め、8歳から近郊モノーポリの音楽院でベネデット・ルーポに師事。その後ドイツ・ハノーファーでアリエ・ヴァルディにも学んだ。18歳でモントリオール国際ピアノ・コンクール優勝、翌年クライバーン・コンクール銀賞とメジャーな受賞が続き、一躍脚光を浴びた。
ラナにとってバッハは幼少よりもっとも身近に感じてきた作曲家だという。「ゴルトベルク変奏曲」の主題である《アリア》を初めて弾いたのは8歳の時で、以来、長い時間をかけてこの作品と向き合ってきた。
「レコーディングでの最大の課題は、とにかく集中力を維持することでした。作品の統一感を失わないようできるだけ長いテイクで録り、またなるべくライヴの体験に近い演奏をするように心がけました。CDにおいても演奏会と同じく、聴き手と心を通わせられる演奏をしたいと願っています」
モダン・ピアノでバッハを弾くことについては、「私自身、チェンバロも大好きですし、弾いたこともありますが、私にはピアノのほうがしっくりくるのです。たとえば対位法を音色の違いによって出すことにおいてはピアノのほうが有利だと思います。もちろん、ふさわしい様式感で弾いた上でのことですが」と語る。
4月の来日は、2012年の浜松国際ピアノアカデミー、2015年のラ・フォル・ジュルネに次いで三度目となる。N響定期では敬愛するマエストロ、ファビオ・ルイージと共演、そしてトッパンホールでは注目の「ゴルトベルク変奏曲」を披露する。新人離れした落ち着きと芯の強さを持つラナが、知性と情熱を兼ね備えた演奏で魅了してくれることだろう。
LIVE INFORMATION
NHK交響楽団 第1859回 定期公演 Cプログラム
○4/21(金) 19:00 開演 4/22(土)14:00開演 会場:NHKホール
ファビオ・ルイージ (指揮) 曲目:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15、ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 作品98
www.nhkso.or.jp
トッパンホール 〈エスポワール スペシャル 12〉
○4/25(火) 19:00 開演 会場:トッパンホール
曲目:J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
www.toppanhall.com