UHQCDで甦る、スクロヴァチェフスキ&読売日本交響楽団の未発表ライヴ、一挙3タイトルを発売!
2月に惜しまれつつ世を去ったポーランド出身の巨匠スクロヴァチェフスキ(1923-2017)が、読売日本交響楽団の常任指揮者時代に録音した未発表ライヴが一挙に3点も発売される。00年代の日本楽壇を彩った名コンビの破格の名演の数々に再会する喜びは大きい。
1点目はシューマンの交響曲全集。2007~2010年に録音された全4曲が収録されている。スクロヴァチェフスキというと、1960年代にアメリカで成功を収めて以来の鮮烈なアンサンブルによる切れ味鋭い演奏というイメージが定着していたが、この頃になると豊かな情緒表現も聴かせるようになり、表現の幅が驚くほど広くなっていた。このシューマンでも、第1番《春》第1楽章コーダ直前の突然の弱音、ドルチェの部分で、巨匠が感極まって声を発し、情感豊かな表情を導いているのが鮮明な録音を通じて聴き取れる。同時期の同曲セッション録音ではここまでロマンティックではないので、ライヴならではの感興の高まりと言えるだろう。そして、この第1番は第3楽章から更に激しく高揚してゆくのがいかにも実演的で素晴らしい。第3番《ライン》も冒頭から活力に満ち溢れた、充実の名演で、同曲CD中でもベストを争う名盤となった。
2点目はショスタコーヴィチの第10&11番。旧ソ連の指揮者達によるヒリヒリした刺激や緊張が作品のイメージを作り上げてきた感があるが、スクロヴァチェフスキの演奏は、十分にメリハリが付きながら、やり過ぎが無く、構成的で、作品の内面を深く、細やかに描き出してゆく。歴史の憑き物を排し、作品そのものの再評価を迫る演奏と言えるだろう。
3点目は巨匠得意のブルックナー第5番。端然と音楽を進めながら、その歩みは実に力強く、楽譜の全てのパートに目を光らせ、充実しきった細部・瞬間を丹念に積み上げ、遂には終楽章の壮麗壮大なコーダに至る感動! そして最後の最後に木管を透かし彫りのように浮き立たせる妙技をも披露するのである。