©José Frade

「Gala」
〈失敗〉と〈成功〉の境界が揺らぐ――アマチュアたちが出現させる奇跡の舞台

 デビュー以来、型破りな作品を作り続け世界中の観客を驚かせてきた振付家ジェローム・ベルの新作「Gala」が遂に日本で上演される。今冬、見るべき舞台を尋ねられたら私は迷わず「Gala」を推す。これはラディカルな作風で知られるベルの傑作であると同時に、コンテンポラリーダンスの新境地を切り拓く作品だからである。ある一定の美の基準を示すのがクラシック・バレエだとすれば、未知の新たな身体像を提示することがコンテンポラリーダンスの担う使命であると言えるが、ベルはいつも予想もつかない方法でその期待に応えてくれる。

 1994年に振付家としてデビューして以来、それまでのダンスの既成概念からあまりに離れていたベルの作品は、賞賛と批判を受けてきた。だが、2001年にはピナ・バウシュや山海塾、ウィリアム・フォーサイスなど世界のトップ・アーティストが公演を行うパリ市立劇場で「The Show Must Go On」の公演を果たし、国際的に高い評価を獲得している。今年のパリの芸術祭(フェスティヴァル・ドートンヌ)では最新作を含む7作品が公演され、その評価はさらに高まっていると言える。

 「Gala」は、2015年にベルギーで初演された後、現在世界各国の都市で巡演しているが、出演者はベルのカンパニーのダンサーというわけではない。公演が行われる各都市で集められたダンスのアマチュアたちが主な出演者である。幼児から老人までと年齢層は幅広く、背格好もバラバラである。また彼らは素人であるがゆえに必ずしも美しい踊りを見せてくれるとは限らない。例えば、20人ほどいる出演者一人一人がバレエのピルエットを行うシーンがある。バレエ経験者と思しき出演者はそつなくそれをこなすが、むしろここで目立つのは、上手くピルエットをできない者、失敗する者たちである。常に完璧なパフォーマンスが期待される舞台芸術の世界において、〈失敗〉が提示されることそのものが新鮮な驚きをもたらすが、ユーモラスな展開を見ているうちに、出演者たちの身体や動きが極めて多様で、魅力的なものであるがことに気づくだろう。そして見る者はいつの間にか、出演者たちを応援したい心持ちになっているのである。通常、プロの舞台からは排除される〈アマチュア〉や〈失敗〉を取り込むリスキーな賭けに挑み、そこから最良の結果を取り出すベルのコンセプトと演出は見事と言うほかない。

 やがて、出演者達が互いにダンスを教えあい共に踊る時、踊ることの喜びに満ちた共同体が舞台の上に現れる。その時、かつてロラン・バルトが述べたように、アマチュアとは、技術が劣る素人などではなく、自ら熱中することに惜しみない愛を注ぎ、楽しみを追い求める崇高な存在であることを私達は知ることになるだろう。ダンスへの愛に満ち溢れたフィナーレに生じる奇跡的な瞬間をぜひ体験してもらいたい。必見の舞台である。

 


INFORMATION
ジェローム・ベル『Galaーガラ』
2017年1月20日(土)15:00開演
2017年1月21日(日)15:00開演
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
構成・振付:ジェローム・ベル