今週必聴の5曲
天野龍太郎「みなさんこんにちは。毎週金曜日にMikiki編集部の田中と天野がお送りしている〈Pop Style Now〉です」
田中亮太「いやー、最高でしたね。USの人気TVショー〈The Tonight Show Starring Jimmy Fallon〉でのレックス・オレンジ・カウンティのパフォーマンス」
天野「へー。それ、いま知りました。まずは今週のSong Of The Week!」
Deafheaven“Honeycomb”
Song Of The Week
天野「Song Of The Weekはサンフランシスコ出身のメタル・バンド、デフヘヴンの新曲です。2013年のアルバム『Sunbather』で広く知られるようになった彼らですが、2015年の『New Bermuda』では、アメリカーナ系のリリースが多い印象のアンタイへ移籍してファンを驚かせました。“Honeycomb”はそれ以来、2年半ぶりの新曲です。約12分の大曲ですが、アルバムの大半を10分以上の楽曲が占めているデフヘヴンにとってこれは普通。
そんな彼らは、ブラック・メタルとシューゲイズとを組み合わせた、〈ブラックゲイズ〉とも呼ばれる独特のサウンドで知られています。デフヘヴンのサウンドからは、さらにポスト・ロック、ハードコア、エモなど、様々なロック・ミュージックから養分を得ていることが感じられるのが魅力ですね。なので、メタル・バンドとしてはかなり異色。“Honeycomb”はデフヘヴンの面目躍如な一曲で、前半の激しいメタル・パート、後半の耽美的でメロディアスなパートと、静と動の対比にぐっときます。特に後半は涙なしには聴けません。感涙……」
Princess Nokia “Your Eyes Are Bleeding”
天野「一曲目からヘヴィーでしたね……。次はNY出身でプエルトリコ系のラッパー、プリンセス・ノキアです。ノキアはラップもトラックもクラウド・ラップ的というか、現在主流のアトランタ・ラップなどと比べるとかなり異質で、不思議な存在感があります。好きな音楽にしてもエモを挙げていたり、そういう嗜好もラッパーとしては特殊。PSNでは毎回話題に挙がるフェミニズムですが、彼女もフェミニストとして知られています。
“Your Eyes Are Bleeding”は、そんなノキアが突然リリースしたミックステープ、中指を立ててるアートワークもすごい『A Girl Cried Red』からの一曲。コーラス、つまりサビがない楽曲構造で、ノキアは歌うようにラップしています。
〈私のハートは粉々に砕かれた〉〈私のことを愛していると思っていたのに〉といったリリックからは失恋の曲と推測されますが、バイセクシュアルを公言しているノキアだけに、複雑な思いが込められているように感じます」
DJ Koze “Pick Up”
田中「最高に気持ちいい~! 独ハンブルクを代表するテクノ/ハウス・プロデューサー、DJコーツェの新曲です! オリジナル楽曲のみならず、マッドなポップ・トリオのインターナショナル・ポニー、カリブーやマティアス・アグアーヨらを手掛けてきたリミックス・ワークなど、約20年に渡ってシーンの第一線にい続けている才人。先鋭的でありつつ、不思議なキャッチーさを持ったサウンドでリスナーを魅了してきました。
この“Pick Up”は5年ぶりの新作『Knock Knock』からのリード・トラック。グラディス・ナイト“Neither One Of Us(Wants To Be The First To Say Goodbye)”のヴォーカルをサンプリングし、柔らかな質感のキックと流麗なシンセサイザー・ストリングスに絡めた、極上のハウス・チューンです。これはパーティーの明け方にかかると最the高な奴ですね。2018年、屈指のサマー・チューンだと思います!
なお、『Knock Knock』は5月4日(金)にリリース。ボン・イヴェールやJ・マスキス、ホセ・ゴンザレス、ラムチョップのカート・ワグナーなどなど、気になる面々のゲスト参加が発表されていますよ」
Father John Misty “Disappointing Diamonds Are The Rarest Of Them All”
天野「自身の芸風(?)を発揮した自己言及的な“Mr. Tillman”も最高だったファーザー・ジョン・ミスティが、アルバム『God’s Favorite Customer』(すごいタイトル!)を6月1日(金)にリリースすると発表しました! それに伴って二曲の新曲をリリース、“Disappointing Diamonds Are The Rarest Of Them All”はそのうちの一曲です。
ファーザー・ジョン・ミスティことジョシュ・ティルマンは2008年から2012年までフリート・フォクシーズのドラマーだった人で、実はそれ以前からシンガー・ソングライターとして活動していました。彼の才能を世に知らしめたのは、バンド脱退と同年にリリースしたアルバム『Fear Fun』。その後は『I Love You, Honeybear』(2015年)、『Pure Comedy』(2017年)と、傑作を立て続けに発表しています。皮肉を込めた歌詞を武器に大活躍です。
前置きが長くなりましたが、この曲、快曲ですね! 60~70年代のサイケデリック・ロックやフォーク・ロック然としたサウンドは相変わらずですが、メロディーやアレンジにすごく勢いを感じます。歌詞についてですが、彼はたびたび奥様のエマさんとのことを歌にしていて、この曲もきっとそうなんでしょうね。〈永遠に続く愛は特別にはなりえない/僕らは自分たちの役割を知っているんだ、それがどうなってしまうかも/誰もが偉大な物語である必要なんてあるのかい?〉……ほんっとに皮肉っぽいなー。ちなみに、僕が彼の歌詞でいちばん好きなラインは〈毎晩VRでテイラー・スウィフトと寝ている〉(“Total Entertainment Forever”)ってやつです」
Rae Sremmurd feat. Travis Scott “CLOSE”
天野「さて。今週最後の一曲は、レイ・シュリマーが今年リリースする予定の3枚組(!)アルバム『SremmLife 3(SR3MM)』からの最新シングル。客演はいまを時めくトラヴィス・スコットです。
レイ・シュリマーはミシシッピに拠点を置くスリム・ジミーとスワエ・リーの兄弟からなるデュオで、アトランタのミーゴスと共に現在のサウス/トラップ人気を支えている若きスター。特に、ケンドリック・ラマーの『Black Panther: The Album』にも参加するなど、客演をこなしまくっているスワエ・リーは売れっ子ですね。そんなレイ・シュリマーをスターダムに押し上げたのは、自分たちを〈黒いビートルズ〉と称した“Black Beatles”のヴァイラル・ヒットでした。
で、この“CLOSE”は彼らがキャリアの初期からタッグを組んできたマイク・ウィル・メイドイットのプロデュースで、なんだかメランコリックなムードです。スワエくんは元カノのことを歌い、ジミーくんは〈友だち以上恋人未満〉みたいな感情をラップしてるようですね(よくわからないラインもありますが……)。何はともあれ、レイ・シュリマーのアルバムが楽しみ!」