
tribute to the band apart
耳で聴いたピープル・トゥリー
the band apartをめぐる音楽の果実は、『tribute to the band apart』で一本のトゥリーを生んだ

1. cinema staff
2015年に対バンを行うなど、先輩を慕うcinema staff。ヴォーカルの飯田瑞規が音楽を始めるきっかけとなったバンドであり、今回のトリビュート盤では彼が最初に手にしたという2001年の“fool proof”をピックアップ。バンアパのなかでも激しくエモーショナルな原曲からその根底に流れる爽やかなポップ感覚を抽出し、熱くドライヴ感溢れるアレンジへと昇華。バンアパ愛を謳歌している。 *小野田

2. KEYTALK
小野武正と八木優樹は高校時代にバンアパに衝撃を受け、そのコピーや影響下にある楽曲をプレイしていたというだけあって、バンアパは現在の彼らを形作した大きなルーツのひとつと言えるだろう。そんな彼らがカヴァーしたのは、ファースト・アルバム『K.AND HIS BIKE』に収録されている“Snowscape”。タイトかつソリッドにスタートし、グルーヴィーなパートも聴かせるという、KEYTALKらしいアレンジだ。 *土屋

3. FRONTIER BACKYARD
古くから親交があり、対バンした機会は数知れず。さらにはFRONTIER BACKYARDの“Backyard Sessions”シリーズでも共演を果たしている両者は盟友の間柄だ。今回のトリビュートではドライなギター・サウンドが心地良い『RECOGNIZE ep』(2004年)初出の“higher”をシンセとピアノ主体のアレンジへと大胆に置き換えている。じわじわ昂揚していくダンス・トラックへ塗り替えた鮮やかな手腕は、互いの信頼関係を考えると、より味わい深く響く。 *小野田

4. LOW IQ 01
バンアパが関わるバンド周辺の、近しい先輩ミュージシャンのひとり、LOW IQ 01。さまざまな音楽ジャンルをミックスし、クリエイトしていく彼の音楽スタイルは、バンアパと相通じるところあり。彼がカヴァーしているのは『alfred and cavity』収録の“beautiful vanity”。カリビアンなムードからスカに移行しキレのいいビートへなだれ込む、痛快なイッチャン節が炸裂! *土屋

5. ストレイテナー
バンド同士の親交はもちろんのこと、荒井岳史とホリエアツシがそれぞれ行っているソロ・ライヴでもたびたび共演。共に98年結成の同世代バンドであるが、2006年のアルバム『alfred and cavity』収録にして、ソウルフルかつエモーショナルなヴォーカルが強い印象を残す“Can't remember”にストレイテナーがファンクの躍動感を注入したことで、名曲は新たな輝きを放つに至っている。 *小野田

6. ゲスの極み乙女。
今回のトリビュート盤のラインナップのなかでは意外な印象を受けるかも知れない彼らだが、実は川谷絵音が大のバンアパ好きだということが発覚。ということで彼らが今回取り上げたのは、『Adze of penguin』に収録の“I love you Wasted Junks & Greens”。爽快な原曲を、切なく気怠く、そしてアタック感とサイケ感をミックスしてアウトプットしている。 *土屋

7. ASPARAGUS
バンアパ主催イヴェント〈Smooth Like Butter〉の拡大版として、先輩バンドであるASPARAGUSと共に行った2011年の日本武道館ライヴが印象深い両者。ASPARAGUSは2007年のシングル“fadeouts(for JUSTICE)”収録の“Moonlight Stepper”を取り上げ、練り上げられたリフとミッドテンポのグルーヴが際立つオリジナルに対し、ASPARAGUSヴァージョンはテンポを上げてギター・ワークとコーラスの爽快さが吹き抜けるアレンジに。 *小野田

8. 坂本真綾
原が坂本のファンだという話がきっかけで、バンアパにコラボを依頼。坂本の楽曲“Be mine!”“coming up”を2014年にバンアパが手掛け、翌年には、さいたまスーパーアリーナで行われた坂本の20周年記念ライヴにバンアパが出演するなど交流の続く両者。今回、坂本がカヴァーしたのは『街の14景』に収録の“明日を知らない”。シンプルな原曲が、ストリングスの入った繊細でいてドラマティックな楽曲へと大変身を遂げている。 *土屋

9. tricot
〈ポストAIR JAM〉のバンドとして、メロディック・パンクとジャズ、フュージョンを融合させたバンアパは、意識的にポスト・ロック的なスタンスを打ち出すことはなかった。しかし、近年何度か対バンしているtricotが今回『街の14景』(2013年)からピックアップした“泳ぐ針”のカヴァーは、緻密なアレンジと共に繰り返されるテンポチェンジによって、ポスト・ロック・バンドとしてのバンアパを浮かび上がらせている。 *小野田

10. 八十八ヶ所巡礼
バンアパとの対バン経験もあるが、そういった縁が生まれる以前からバンアパの楽曲をカヴァーしていたというスリーピース・プログレッシヴ・ロック・バンド。彼らが採り上げたのは『謎のオープンワールド』に収録されている“ピルグリム”。軽快なファンク・チューンを、テクニカルでアグレッシヴなアレンジへ。刻みまくるリフ、速弾きソロなどとにかく圧巻。 *土屋

11. 吉田一郎不可触世界
坂本真綾“coming up”の制作にバンアパ勢と共に参加した吉田一郎。ZAZEN BOYSでも発揮してきたベース・モンスターぶりはバンアパが誇るミュータント、原昌和と重なる部分が少なくない。2015年の『謎のオープンワールド』から原の主導で制作されたディスコ・ファンク“禁断の宮殿”をチョイスし、ベースを効かせてチルなシンセ・ワークを施したアレンジは、そんな吉田から原へのメッセージでもある。 *小野田

12. HUSKING BEE
近しい先輩ポジションのバンドで、2マンはもちろん、荒井がソロで磯部正文や平林一哉とアコースティックで同じイヴェントに出演するなど、何かと繋がりも深いHUSKING BEE。そんな彼らがカヴァーしたのは、『謎のオープンワールド』に収録の“月と暁”。ギター・ロック然とした原曲を、さらにエモーショナルにアレンジしている。力強いヴォーカル、荒々しいプレイ──どこを切ってもまさしくハスキンなサウンドだ。 *土屋