楽譜をみれば、あの超絶テクニックの裏技がわかるかもしれない?

 ギタリスト、鈴木大介の編曲作品15曲で構成された楽譜が発売された。鈴木大介は作曲家、武満徹から 〈今までに聞いたことがないようなギタリスト〉と評されて以来、新しい世代の音楽家/ギタリストとして注目され続けている。武満徹、アグスティン・バリオス、その他クラシックギターのレパートリーはもちろん、ジャズ、ボサノヴァ、映画音楽など多彩なレパートリーを弾きこなす他、現代音楽の初演も多い。演奏技術はもちろん、解釈力を要求される難易度の高いプロジェクトにおけるファースト・コール・ギタリストだ。

鈴木大介 ギターベストコレクション 現代ギター社(2019)

 このスコアは主として2018年度の現代ギター誌における彼の連載に添付された編曲作品によって構成されており、その他にエンリオ・モリコーネの“ニュー・シネマ・パラダイス”のリアレンジ、ギターソロ・アレンジの概念を覆すアストル・ピアソラの“リベルタンゴ”なども収録。スコアとしては上級者向けで、よく他のクラシック・ギターの楽譜集にも登場する“月の光”を見比べても、かなり難しいアレンジであることが分かる。アントニオ・カルロス・ジョビンの“デサフィナード”も、いわゆるボサノヴァ・タイプではなく、クラシック・ギターとしての高度なアプローチだ。なお、これら編曲及び作曲の作業は、現代ギター誌への掲載の8作品を含むアルバム『Daisuke Suzuki the Best 2019』(発売中)の制作にも繋がっている。このCDは彼にとって初のベスト・アルバムであり、全て新録音。

鈴木大介 『Daisuke Suzuki the Best 2019』 BELLWOOD(2019)

 この楽譜曲集の中で彼自身によるCD録音がないのは初出となる自作曲の“汀の花”と“アリエル”、平野啓一郎の小説「マチネの終わりに」と連動した福田進一のCD『マチネの終わりに and more』に収録するために編曲されたブラームス“間奏曲Op.118-2”など。しかしマヌエル・マリア・ポンセの“ジーク”をはじめ、YouTubeにアップされている曲も多い。今回発売のスコアにはTAB譜による記載はないので、動画で手元を確認できればCDと同様に練習の参考になることだろう。

 鈴木大介の編曲をじっくりと味わうことのできるベスト・アレンジ集。クラシック・ギタリストにとって、アレンジという作業、そしてそれを記した楽譜は録音と同等な表現手段である。曲が頭の中に入っていれば、譜面を眺めるだけで彼ならではの世界が聴こえてくる。