コラム

鈴木大介『シューベルトを讃えて』作曲家の心に入り、ギター・ミュージックの奥深さを追究

©︎Yoshinobu Fukaya

シューベルトを通してギター・ミュージックの奥深さを追究する新作

 昔、訪れたウィーンのシューベルト生家博物館には、パーラー・ギターがさりげなく展示されていて、当時のウィーンでギターはひとつの流行りだった、という解説がなされていた。彼が持っていたギターの中には、アルペジョーネで知られるヨハン・ゲオルク・シュタウファーの手によるものもあったそうである。シュタウファーは当時かなり革新的なギターを作っていて、かのC.F.マーティンも彼の許で修業したルシアーのひとりである。そう考えると、18世紀前半のウィーンというのはすごい。

 なんて、ロマンティックに過ぎる話はさておき。

 鈴木大介が新作に据えたコンセプトは、とかくギターとの関連性が語られがちなシューベルトの音楽、その秘密を探ることでギター・ミュージックにさらなる深みと色彩感を見出せるのではないか、という仮説の上に立っている。つまり、シューベルトとその周辺の音楽にどっぷりと浸かりつつも、その目はさらに先を見据えているのだ。

鈴木大介 シューベルトを讃えて アールアンフィ二(2020)

 ヨーロッパの伝統と南米の抒情が絡み合い、やがてひとつになっていくようなポンセ《ソナタ・ロマンティカ》で聴ける風通しのいい音作り。シューベルトと親交があったというヨゼフ・ランツの《2つのロンディーノ》は聴く機会がなかなかないが(こういう曲をさらっと入れてくるのも彼の魅力である)、軽やかな中にふと垣間見せる色気が絶妙だ。

 そしてシューベルトその人。「楽興の時」からの2曲と、ヨハン・カスパル・メルツの編曲による6つの歌曲では、瑞々しい歌心と伴奏の妙が一体となったような、まるで作曲家の心を探っていくような演奏が印象的。鈴木の演奏はストイックで求道者然とした佇まいを感じさせつつ、ポピュラー音楽のファンにも受け入れられる明快さも併せ持っていて、聴いていると月並みながら〈ギターっていいな〉と改めて思う。そして同時に、実はいちばんロマンティックなのは鈴木本人に違いない、と確信するのだった。

 


LIVE INFORMATION

東京・春・音楽祭2020
シューベルトの室内楽 I ~鈴木大介(ギター)と仲間たち

○3/21(土) 17:30開場/18:00開演
【出演】豊嶋泰嗣(vn, va)上村 昇(vc)梶川真歩(fl)鈴木大介(g)アリスター・シェルトン=スミス(Br)
www.tokyo-harusai.com/program_info/schubert-chamber-music-1/

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