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2. Billie Eilish “my future”

天野「続いては、今朝リリースされたばかりのビリー・アイリッシュのニュー・シングル“my future”。映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の主題歌として制作された“No Time To Die”以来の新曲ですね」

田中「曲の前半部分はとても静謐で、ほとんどエレクトリック・ピアノとビリーの繊細なヴォーカルのみです。その後、ちょうど曲の中間部分でブレイクビーツやギター、ベースが入ってきます。この静謐さ、繊細さは、ビリーのデビュー・シングル“Ocean Eyes”(2015年)の発展形にも感じますね」

天野「この曲も、例によってロックダウンの状況下で制作されたもので、意図せずビリー × フィニアス(FINNEAS)の2人のスタイルが原点回帰したのかもしれません。とはいえ、世界的なミュージシャンとして国内外をツアーするようになっても、ビリーとフィニアスの制作方法はずっと変わっていない、とどこかで語っていた記憶があります」

田中「ジャーナリストの中村明美さんは〈インタビューで言っていた『(コロナ禍で)みんなに会えなくて孤独だと思わなくちゃいけないんだけど、一人の空間を楽しんでいる』ことをそのまま歌っている〉と指摘していましたね。たしかに、2ヴァース目で〈たぶん、いま私は孤独/アンハッピーだってわかっている〉と、反語的な表現をしています。ロックダウンによる孤独・孤立というのは、ビリーにとっては逆に生きやすい環境なのかもしれません」

天野「サビの〈でも、私は恋に落ちている/私の未来と/あなたは彼女のことを知らない/私は恋をしている/ここにはいない誰かと/2、3年後に会おう〉という歌詞も示唆的です。〈未来に恋をしている〉という表現も、おそらくその〈未来〉を〈彼女〉と言っているところも、〈2、3年後に会おう〉というラインも、すごくおもしろい。〈2、3年後〉が想像できないいま、こういう〈未来への恋〉をさらっと歌うビリーがかっこいい。ただ、もっと音楽的に冒険した曲を聴きたいな、とも思いました!」