音楽でみんなを励ましたい
“Ghost”と題されたナンバーも、同様に聴く人を癒してくれる。
「エモーショナルで悲しい曲だけど、アップリフティング。大切な人を亡くしたり、会いたくても自粛生活で会えなくなってる人も多いよね。その人の記憶や面影だけが頼りって曲なんだ」。
感傷的な曲ではあるけれど、どこかポジティヴで、そっと寄り添い、前向きな気分を促してくれる。さらに後半には、陽気でフィールグッドなナンバーが並んでいる。同郷カナダのダニエル・シーザーと米国人R&Bシンガーのギヴィオンが参加した“Peaches”は、ウェストコーストのムードを運んでくれるサマー・ジャム。ジャスティンがソウル・バンドの生演奏をバックに、のびのびと爽やかな歌声を聴かせてくれる。ジャマイカ人のビームをフィーチャーした“Love You Different”、ナイジェリアのバーナ・ボーイをフィーチャーした“Loved By You”などは、アフリカンなリズムや音色がカラフルに弾けて、誰もが踊り出したくなるはずだ。こういった新進のゲスト陣や、カリード、ドミニク・ファイク、ジャスティンいわく「自分の幼い頃を思い出す」というキッド・ラロイなど、気鋭の若手が多数参加している点も注目される。また“Sorry”や“Where Are U Now”などのEDM系ヒットで絡んできたスクリレックスとのタッグも数曲で復活した。
とはいえ、ジャスティン以外でこのアルバムにもっとも貢献しているのは?といえば真っ先に浮かぶのが彼の妻、ヘイリー・ボールドウィン・ビーバーだろう。オープニング曲“2 Much”や“Off My Face”にも、そんなワイフへの愛が綴られているが、二人の日常やレコーディング風景を追ったYouTube Originalsのドキュメンタリー・シリーズなどからも明らかなように、彼女が常に支えてきてくれたから、現在の彼がここにいる。ふたたび他人を信じて、信頼できるようになったのは彼女がいたから。そういう意味では二人三脚で作られたアルバムと言えるかも。世界のファンとふたたび繋がり、音楽でみんなを励ましたいというジャスティン。そんな彼の熱い思いが『Justice』にはたっぷり詰まっている。
左から、ジャスティン・ビーバーの2020年作『Changes』(Schoolboy/Def Jam)、ジャスティンが客演したショーン・メンデスの2020年作『Wonder』(Island)