この先はどうなる?
それから10年経った2007年にはふたたび同じメンバーでの再始動が発表されるが、その背景にはケヴィンが前年から始めた過去作のリマスター作業があった。その過程で、お蔵入りしたサード・アルバムの断片が彼をインスパイアし、結果的には4人の集結をお膳立てしたのだった。その間に2008年の〈フジロック〉出演などもありつつ、リマスター盤の『Isn't Anything』と『Loveless』、編集盤の『EP's 1988-1991』が世に出たのは2012年のことだからケヴィンの時間感覚も凄まじいと言わざるを得ないが、その翌年には22年ぶりのサード・アルバム『m b v』が無事リリースされることになった。アナログ機材でレコーディングされた同作は過去2作とはまた趣を異にする出来映えだったものの、ケヴィンも「非常にパーソナルで愛おしい作品」と表現する洗練された佳作に仕上がっている。2013年にはツアーや〈フジロック〉も含めてたびたび来日し、ここにきて彼らの日本における支持基盤は盤石のものとなった。
が、そこから早くも8年が経って……気になるのはもちろんこの先のMBVの動向だ。前回のリマスター作業が『m b v』リリースのきっかけになったことを考え合わせれば、ドミノ経由で行われているこのたびの豪華なリイシュー・プロジェクトも当然これだけで終わるはずはないだろう。実際にケヴィンはすでにバンドで新しい作品に取り組んでいることを明言しているし、今回の4タイトルの向こう側にある新たな体験も心待ちにしておきたい。
左から、コルム・オコーサクが参加したホープ・サンドヴァル&ザ・ウォーム・インヴェンションズの2016年作『Until The Hunter』(Tendril Tales)、デビー・グッギが参加したティム・バージェスの2018年作『As I Was Now』(O Genesis)、サーストン・ムーアの2020年作『By The Fire』(The Daydream Library Series)
ケヴィン・シールズが参加した近年の作品を紹介。
左から、ブライアン・レイツェルの2014年作『Auto Music』(Smalltown Supersound)、ル・ヴォリューム・クールブの2015年作『I Wish Dee Dee Ramone Was Here With Me』(Pickpocket)、グッド・ワンズの2019年作『Rwanda, You Should Be Loved』(Anti-)、2020年のトリビュート盤『AngelHeaded Hipster: The Songs Of Marc Bolan & T. Rex』(BMG)