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L Devine “Die On The Dancefloor”


田中「L・ディヴァインことオリヴィア・レベッカ・ディヴァイン(Olivia Rebecca Devine)は〈PSN〉に初登場ですね。97年生まれ、英ウィットレイ・ベイ出身のシンガーソングライターで、2017年にEP『Growing Pains』でワーナーからメジャーデビュー。エレクトロポップ好きのツボを突くサウンドプロダクションとポップなメロディーが特徴です」

天野デビューシングル“School Girls”(2017年)の頃から一貫してリアルな感情や性的なことを歌っていて、そのあたりも彼女が支持を受けている理由ですよね。L・ディヴァイン自身はレズビアンだそうで、“Girls Like Sex”(2021年)については『女性がカジュアルにセックスすることをエンパワメントしたかった』と語っています。ちなみに、〈L Devine〉というステージネームは、ポルノスターのオリヴィア・ディヴァインと名前が同じだったことに由来するんだとか

田中「そんな彼女が今年、EP『Near Life Experience』を連作で発表しました。その第2弾が先週末9月24日にリリース。EPの冒頭を飾っているのが、この“Die On The Dancefloor”です」

天野「歌詞は〈私はダンスフロアの上で死にたい/友だちと一緒にいたい〉〈毎晩これをやりたい〉〈私の心臓が鼓動を打たなくなるまで/時計なんて見たくない〉〈9時から5時まで/生きているって実感させてくれるただひとつのものが恋しい〉と、刹那的な感情を歌い上げるダンスフロア讃歌ですね。もちろん、パンデミックで経験した閉塞感も反映されているのでしょう」

田中「ジュリアン・バネッタ(Julian Bunetta)とトゥー・フレッシュ・ビーツ(Two Fresh Beats)がプロデュースした、4つ打ちのエレクトロポップサウンドも最高ですよね。爽やかで切なくてキラキラしていて、L・ディヴァインの歌を糖衣で包んでいるかのようです。この曲を収録した『Near Life Experience Part Two』、ぜひ聴いてみてください!」

 

Lakeyah frat. Tee Grizzley “313-414”


天野「レイクヤーは注目のラッパーですね。いま、フィメールラッパーは群雄割拠と言っていい状況だと思いますが、そのなかでも光っている存在だと思います」

田中「レイクヤーことレイクヤー・ダナエー・ロビンソン(Lakeyah Danaee Robinson)は、ミルウォーキー出身の20歳。ミーゴスらが所属しているアトランタのクォリティ・コントロール(Quality Control)のラッパーです。2020年末にリリースしたシティ・ガールズとの共演曲“Female Goat”がヒットし、今年はXXLの恒例企画〈Freshman Class〉に選ばれたことでも注目を集めました」

天野「ギャングスタラップ的なハードなラップとサウンドが魅力なんですよね。いまだにホモフォビックな価値観が根づいているヒップホップシーンにおいて、レズビアンであることを公言している点も重要だと思います。そんなレイクヤーがデトロイトのギャングスタラップシーンにおけるスターであるティー・グリズリーをフィーチャーしたこの“313-414”は、先週末にリリースされたミックステープ『My Time (Gangsta Grillz: Special Edition)』からのシングル。〈Gangsta Grillz〉というのは、DJドラマの有名なミックステープシリーズのことですね」

田中「ルーエル(Reuel)によるビートはレイクヤーらしいハードなギャングスタラップサウンドで、Bワードを連発して攻めまくるレイクヤーのラップは力強すぎ。ちなみに、曲名はデトロイトとミルウォーキーの市外局番に由来しているのだとか。ティー・グリズリーとの共演を表しているんですね」

 

Dua Saleh & Amaarae “fitt”

天野「最後の曲です。デュア・サレーとアマーレイのコラボレーションソング“fitt”。ミネアポリスのデュア・サレーは昨年〈Black Lives Matterムーヴメントを受けて発表された13の新曲〉という連載の特別編で紹介した、スーダン系のシンガーソングライター。彼女は俳優でもあって、最近Netflixの人気ドラマ『セックス・エデュケーション』のシーズン3に出演していて話題ですね。そして、アマーレイことアマ・セルワー・ジェンフィ(Ama Serwah Genfi)はNY出身のガーナ系、昨年11月にリリースしたデビューアルバム『The Angel You Don’t Know』が素晴らしかった新鋭アーティストです」

田中「アマーレイは初めて紹介するのですが、2人とも〈PSN〉が以前から注目していた才能です。デュア・サレーはエッジーなヒップホップ/R&Bサウンドが持ち味で、一方のアマーレイはオルタナティブなアフロビーツを志向していますよね。この2人のコラボは納得です」

天野「“fitt”は、プリミティブなリズムのビート、重たいベース、スピリチュアルジャズ風のハープなどが印象的ですよね。UKベースっぽさもあるし、すごくダークでかっこいい。デュア・サレーは『アフロビートソングでハイパーポップの要素が入ってる』と表現していますが、それにしても変わったサウンドです。ささやくようなフロウのデュア・サレー、いつものように高い声とセンシュアルな息遣いを聴かせるアマーレイと、2人の個性が際立つマイクリレーも素晴らしい。この曲はデュア・サレーが10月22日(金)にリリースするニューEP『CROSSOVER』からのシングルだそうです。楽しみですね」