活動30周年を祝して発表されたフル・フォースの新作『With Love From Our Friends』は、表題通り、これまで彼らが関わってきた馴染みの面々を中心に、ラファエル・サディークやシャニースらを含め30組近くのゲストと友愛を確かめ合ったようなアルバムだ。
リサ・リサ&カルト・ジャムに提供した“All Cried Out”のリメイクをティーシャ・キャンベルが粘りのある声で歌い上げ、同曲のカヴァー・ヒットで知られるアルーア(2001年作『Still Standing』にも参加)は同系のバラードで共演。メリッサ・モーガン、それにレジーナ・ベルやハワード・ヒューイットらが客演したバラード(2曲)では秘蔵っ子シェリル“ペプシ”ライリーも交わり、凛としたヴォーカルを聴かせてくれる。また、盟友フォースMD'sとの競演や、バックストリート・ボーイズへの提供曲“All I Have To Give”をシルクのリルG、112のスリム、トゥループのスティーヴ・ラッセル、元ネクストのRLと共にマイクリレーしていくあたりは、スウィートな歌心を持つグループとしての側面を伝える好演だろう。
伝説の〈ロクサーヌ・バトル〉の発端となった名曲のリメイク“Roxanne Roxanne(The New Chapter)”は、ボウレッグド・ルーの息子ルースターがバトルの当人であるUTFOとロクサーヌ・シャンテに囲まれて繰り広げるメロドラマに。サマンサ・フォックスがフレイヴァ・フレイヴらと披露するEDM調やシーシー・ペニストンとフリーダム・ウィリアムス(元C+Cミュージック・ファクトリー)を迎えたハウス調のダンス・ポップを唐突に思う方は本文を再読されたい。その他、復活したテヴィン・キャンベルが元3LWのナチュリと歌うポップR&Bも上々の出来だし、ミュージカル子役のレイモンド・ルークJrが甘酸っぱいラヴ・バラードを青い少年声で歌い上げる姿は、本作の着想源だというクインシー・ジョーンズ『Back On The Block』(89年)における12歳時のテヴィンを思い起こさせる。
加えて今作は、生死をさまよう病からポール・アンソニーが生還したことも祝しているためか、神への感謝も目立つ。フェイス・エヴァンスやシーラEらがクワイアと共演した先行曲“I Feel Good, I Look Good, I'm God Good”はプレイズ・ソング的な役割を果たし、冒頭からこの新作を盛り上げる。礼を弁えながらFF流のポップ・マインドを発揮した極上のエンターテイメント盤なのだ。
▼文中に登場したアーティストの作品
左から、ラファエル・サディークの2011年作『Stone Rollin'』(Columbia)、スティーヴ・ラッセルの2010年作『So Random』(Motel Music Media)、メリッサ・モーガンの87年作『Good Love』(Capitol)、クインシー・ジョーンズの89年作『Back On The Block』(Qwest)、シーラEの2013年作『Icon』(Moosicus)
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