9月15日発売のバロネスの新譜『Stone』もまた、バンドの新たな旅立ちの第一章という、素晴らしい内容でした。

ヘヴィメタルには様々なサブジャンルがありますが、概ね、バンドは単一のビジョンを突き詰めます。そのビジョンが変わるとすぐ、あのバンドは変わったとか、セルアウトしたと言われたりもしますが、こちらもジャズミュージシャンの私としては、あまり気になりません。人は変わるものなので、人の複合体であるバンドも、そりゃ変わるでしょう。
バロネスは大枠の大きなビジョンの中で、複雑で多様なビジョンを持っていて、その豊かさに毎度驚かされています。アートメタルと言われていますが、どのメタルバンドだって素晴らしいアートだと思うのですけど、バロネスはこのビジョンの多さ、カラフルさというのがアートメタルという表現に繋がっているのではと思います。
こちらも時間に着目して聴いてしまうバンドで、一つのアイデアから次のアイデアに移る時間がわりと早いうえ、全然違うところに着地したり、全然違うものが挟み込まれたり、多様なんですよね。
“Beneath The Rose”“Choir”“The Dirge”の流れは圧巻なのですが、“Beneath The Rose”のイントロは、不穏なギターに〈何が始まるの、これ〉と思ったら、ドラムが絡んできて、全然違うリフに入る。こういう時間の使い方なんですよ。とっても気持ち良く振り回されるんですよね。
かといって、プログレのようなエクストリームなものを繋げていくような緊張感はなくて、全てがとてもスムースに繋がっていくのが凄い。わりと全然違うものがくっついても全くストレスを感じないのは、アメリカンフォークミュージックの温かい体温と手触りが通底しているからかもしれません。
バロネスのサウンドの異物感もとても好きで、同時に変なものが鳴っていることが多いですよね。少し調子の外れた音だったり、裏に効果音的なものが入っていたり、多層なレイヤーの中に異物を紛れ込ませるのも格好良くて、このセンスに惚れ惚れします。
バロネスの音楽は相当に考え抜かれて作られていますが、今回のアルバムは、音を作り込みすぎていない生々しさがあって、私はとても好きでした。
メタルには、破壊衝動を計画的に美しく閉じ込めるという側面があると思います。破壊的、暴力的なものを無防備に開放する音楽も沢山あり、それはそれで格好良いのですが、ある枠に閉じ込める、その愚直で厳密なルールを自らに課す統制されたところが、好きなんですよね。
コード・オレンジの新譜もバロネスの新譜も、音楽内容は飛躍しているけれど、その閉じ込めるパッケージの仕方、時間の使い方と一貫した統制感に、美しさを感じました。
RELEASE INFORMATION
■CODE ORANGE

リリース日:2023年9月29日
配信リンク:https://codeorange.lnk.to/theabove
TRACKLIST
1. Never Far Apart
2. Theatre Of Cruelty
3. Take Shape (feat. Billy Corgan)
4. The Mask Of Sanity Slips
5. Mirror
6. A Drone Opting Out Of The Hive
7. I Fly
8. Splinter The Soul
9. The Game
10. Grooming My Replacement
11. Snapshot
12. Circle Through
13. But A Dream...
14. The Above
■BARONESS

■日本盤CD
品番:SICX-192
価格:2,640円(税込)
日本盤CDのみ歌詞対訳/解説付き/ボーナストラック収録
TRACKLIST
1. Embers
2. Last Word
3. Beneath The Rose
4. Choir
5. The Dirge
6. Anodyne
7. Shine
8. Magnolia
9. Under The Wheel
10. Bloom
11. Tower Falls (Live At Blueberry Hill, St. Louis, MO April 2, 2022)
12. Swollen & Halo (Live At Cobra Lounge, Chicago, IL April 10, 2022)
※M11、12日本盤CDボーナストラック
LIVE INFORMATION
■西山瞳
2023年10月28日(土)東京・成城学園前 Cafe Beulmans
開場/開演:19:30/20:00 ※2セット、入替なし
出演:西山瞳(ピアノ)/石川広行(トランペット)
チャージ:3,300円(+2ドリンクオーダー)
西山瞳トリオCD先行発売ライブ
2023年11月4日(土)東京・新宿 PIT INN
開場/開演:13:30/14:00
出演:西山瞳(ピアノ)/西嶋徹(ベース)/則武諒(ドラムス)
チャージ:3,000円(税別/1ドリンク付)
※ご予約不要です。当日は先着順の着席になります。直接お越しください
2023年11月9日(木)兵庫・神戸 gallery zing
開場/開演:19:00/19:30 ※2セット
出演:西山瞳トリオ 西山瞳(ピアノ)/萬恭隆(ベース)/中村雄二郎(ドラムス)
予約/当日:3,000円/3,500円
2023年11月10日(金)愛知・名古屋 jazz inn LOVELY
開場/開演:18:00/19:30 ※2セット
出演:西山瞳トリオ 西山瞳(ピアノ)/萬恭隆(ベース)/中村雄二郎(ドラムス)
チャージ:3,500円
★詳細やその他のライブについては西山瞳のオフィシャルサイトへ
RELEASE INFORMATION
■西山瞳
リリース日:2023年11月22日(水)
品番:MT-12
価格:3,190円(税込)
TRACKLIST
1. Turtledove タートルダブ
2. Dot ドット
3. The Rider ザ・ライダー
4. To Return トゥ・リターン
5. Tidal タイダル
6. Red and Yellow レッド・アンド・イエロー
7. Pigeons ピジョンズ
8. Baroness バロネス
9. Lighthouse ライトハウス
(全曲 西山瞳作曲)
■メンバー
西山瞳 ピアノ、作曲 Hitomi Nishiyama piano,compose
西嶋徹 ベース Toru Nishijima bass
則武諒 ドラムス Ryo Noritake drums
鈴木孝紀 クラリネット Takanori Suzuki clarinet (on 2, 3, 5, 6, 9)
橋爪亮督 テナーサックス、フルート Ryosuke Hashizume tenor sax, flute (on 2, 3, 5, 6, 9)
maiko バイオリン maiko violin (on 2, 3, 5, 6, 9)
2023年7月12-14日 群馬県高崎市 TAGO STUDIO TAKASAKIにて録音
録音、ミックス、マスタリング:松下真也(Piccolo Audio Works)
FAZIOLI F278使用
ピアノ技術:越智晃(Fazioli Japan Co., Ltd.)
アートディレクション:平岡直樹(yuu)

PROFILE: 西山瞳
79年11月17日生まれ。6歳よりクラシックピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I’m Missing You』を発表。ヨーロッパジャズファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、〈横濱JAZZ PROMENADE ジャズ・コンペティション〉において、自身のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めて〈ストックホルム・ジャズ・フェスティバル〉に招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『Parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、〈インターナショナル・ソングライティング・コンペティション〉(アメリカ)で、全世界約15,000のエントリーのなかから自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコードのジャズ総合チャートで1位、HMVの総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自身のレギュラートリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『Shift』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカバーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、ヤング・ギター誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズの両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。自身のプロジェクトの他に、東かおる(ボーカル)とのボーカルプロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグバンドへの作品提供など、幅広く活動。〈横濱JAZZ PROMENADE〉をはじめ、全国のジャズフェスティバルやイベント、ライブハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさが共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。