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そして『Powerslave』(86年)。

IRON MAIDEN 『Powerslave』 EMI(1984)

このアルバムについて、連載ではドラマーの江藤良人さんのインタビューでお話しいただきましたので、ぜひそちらも読んで頂きたいのですが、このインストの時間の長さ。ボーカルもいるバンドでこれほどインストに比重を置いて、全員一致で音楽全体を高めていく、非常に張り詰めた大作です。バンドが一つの方向に向かって上り詰めていく一体感が、本当に気持ち良い。一人でも欠けたらダメなんだろうなと、バンドの結束力の美しさを感じます。聴いていると、ずっと闘魂注入されていく感じ。ツインギターの高揚感もたまらないです。

プログレッシブな曲が多く、推し曲が選べないぐらい全部好きですが、なかでも“Powerslave”から最後の“Rime Of The Ancient Mariner”の流れは、毎回聴くたびに寒気がします

加えて、邦題が最高に格好良い。“撃墜王の孤独(Aces High)”とか、天才だと思います。

 

そして、私が世代的にどんぴしゃで一番よく聴いたのが『Fear Of The Dark』(92年)。

IRON MAIDEN 『Fear Of The Dark』 EMI(1992)

90年代の名盤ですね。いつでもクライマックスで、伝説に立ち会っているかのような気分になる。

そして、このアルバムは、メロディの良い曲がいっぱいあるんですよ。

NHORHMでカバーしたのは“Fear Of The Dark”。私がよく聴いていたということもありますが、とりわけメロディが綺麗で、ピアノで弾いても全然埋もれないし、どういう形で演奏してもこのメロディの強さは普遍的だなと思いました。

実はNHORHMプロジェクトの最初の時期に、アイアン・メイデンだと“The Trooper”か“Aces High”を演奏するべきだろうかと思って、そちらもアウトラインの採譜をして検討していたことがあったのですが、“The Trooper”はあの有名なリフをピアノで弾くとぺらっぺらになってしまって、これは絶対ダメだ、完コピはできてもジャズ的に広がらないし、真剣に向き合っているように聞こえないと思って、却下(笑)。“Aces High”の方は、メロディに大きな変化がないのと、ブルース・ディッキンソンの歌唱の力が大きすぎるので、こちらもピアノで弾いても曲の良い成分は残らないなと判断して、候補から早々に外した経緯があります。

“Fear Of The Dark”は、どこからどう切り取ってもメイデンらしさが残るし、かつメロディもポップで強度があって、今も時々ジャズクラブでのセッションライブで演奏することがありますが、アイアン・メイデンを全く知らないジャズファンからも「良い曲ですね」と言われることが多いんですよ。

 

最新のアルバムは、『Senjutsu』(2021年)。

IRON MAIDEN 『Senjutsu』 Parlophone/ワーナー(2021)

今年のツアーは勿論こちらを予習して行った方が良いと思いますが、全体的にミドルテンポの長い曲が多くて、最初はその雰囲気の重さから丸々通して聴けず、1曲ずつ聴いていましたね。歴史の語り部のような荘厳なナンバーが続きます。