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私が中高生の時に聴いたディープパープルのアルバムは、『In Rock』(70年)、『Fireball』(71年)、『Made In Japan』(72年)、『Burn』(74年)なので、ほぼ第2期です。『紫の肖像』(73年)も聴いてるはずだけど、あまり印象がないです。

『Burn』は第3期にあたりますが、正直タイトル曲“Burn”とイングヴェイがカバーしていた“Mistreated”以外の印象がなくて、“Mistreated”は最初に聴いたイングヴェイのカバーの方が好きです(鳥の雛が最初に見たものを親と認識するようなものです)。96年の『Inspiration』に入っているので、聴いて下さい!(イングヴェイ原理主義者)

YNGWIE MALMSTEEN 『Inspiration』 Music For Nations(1996)

 

『Machine Head』に話を戻しましょう。

このアルバム、インスト中心ですが、ジャズっぽい自由な空気があるんですよね。まず、ギターソロをしている間のオルガンのバッキング、これがバリエーション豊かで、聴いていてとても楽しくて緊張感がある。オルガンソロの間のギターソロも、オルガンのフレーズに反応していたり、ベースラインもライブ盤とスタジオ盤で結構変わっています。6曲目“Lazy”を聴いてもらうと、詳細に分析せずとも一聴して〈自由そうだな〉というのが伝わるかと思います。

“Lazy”はブルースですが、“Maybe I’m A Leo”“Lazy”と2曲もブルースがアルバムに入っているのも、バンドの自由な風通しの良さを感じる要因かなと。

このジャズっぽい自由な印象って、名盤『Made In Japan』を聴いているから、その印象とミックスされているところもあります。

DEEP PURPLE 『Made In Japan』 Purple(1972)

こちらは『Machine Head』後のツアーを収録したものですが、『Machine Head』と併せて聴くべき内容で、ディープ・パープルは正真正銘のライブバンドだなと実感できる、とんでもなく素晴らしいアルバムです。即興で色んなことをしているのがわかりますし、エネルギーは凄まじいのですが、全体に横溢する余裕とユーモアの感覚とでも言いましょうか、これが本当にジャズミュージシャンとして今聴いても感激するところがあります。ソロに“C Jam Blues”(デューク・エリントン作曲)を引用しているところもありました。

即興演奏において、自分だけ格好良いプレイをするのはある意味簡単なんですが(しっかり練習して独善的に出せばいい)、即興演奏でバンドを動かすにはプレイヤー同士の演奏によるコミュニケーションが必要で、それは会話と同じく周りの話を聞く力、そこから話を広げるボキャブラリーとユーモアが大切になります。

ジャズほどそれが直接的に聞こえてくるわけではないけれど、『Made In Japan』にはそれが確実にあります。というか、この頃のロックバンドは、レッド・ツェッペリンなども聴くと当たり前に持っていた力なのかもしれませんが、それもまだ先人が少なく、ジャズとロックの距離が近かったからかもしれませんね。

 

そんなわけで、今回のスーパー・デラックス・エディション、私が楽しみだったのは (7)モントルー’71の未発表ライブ音源。『Fireball』リリース後のツアーで、モントルー・カジノでのライブ録音。

本当はこの場所で『Machine Head』を録音する予定だったけれど、フランク・ザッパのバンドのライブ中に火災が発生し、全焼してしまった、というのは名曲“Smoke On The Water”に歌われています。その場所が健在だった時のライブ録音で、いわば伝説の場所ですよ。

今回の『Machine Head』がすっきり整頓されたリミックスなので、オーディエンス録音の荒々しい音が、とてつもなく生々しくライブのパワーを感じさせます。

 

そういえば、20年前、関西の女子高校の音楽コースでバンドの授業を持っていた時、“Smoke On The Water”を課題にしたこともありましたが、「ださーい!」とか言いながら皆楽しそうにやってましたよ(笑)。

NHORHMでも、“Demon’s Eye”(『Fireball』収録)、“Highway Star”はカバーしていますので、ぜひ聴いて頂けたら嬉しいです。

NHORHM 『New Heritage Of Real Heavy Metal』 APOLLO SOUNDS(2015)

NHORHM 『New Heritage of Real Heavy Metal extra edition』 APOLLO SOUNDS(2019)

 

ハードロックやメタルに縁遠い人でも、パープルは楽しむ切り口が多い音楽だと思います。まずは『Machine Head』からどうぞ!

 


■DEEP PURPLE
RELEASE INFORMATION

DEEP PURPLE 『Machine Head (Super Deluxe Edition)』 Rhino/ワーナー(2024)

リリース日:2023年4月24日(水)
品番:WPZR-30990
価格:16,500円(税込)
完全生産限定盤/3CD+1LP+Blu-rayの5枚組仕様/日本盤のみ詳細な英文ライナーノーツの完全翻訳を掲載した別冊ブックレット付

TRACKLIST
CD 1: マシン・ヘッド
〈ドゥイージル・ザッパ 2024リミックス〉
1. ハイウェイ・スター *
2. メイビー・アイム・ア・レオ *
3. ピクチャー・オブ・ホーム *
4. ネヴァー・ビフォア *
5. スモーク・オン・ザ・ウォーター *
6. レイジー *
7. スペース・トラッキン *
8. ブラインド・マン(Bサイド曲)*

〈2024リマスター〉
9. ハイウェイ・スター
10. メイビー・アイム・ア・レオ
11. ピクチャー・オブ・ホーム
12. ネヴァー・ビフォア
13. スモーク・オン・ザ・ウォーター
14. レイジー
15. スペース・トラッキン

CD 2: イン・コンサート ’72
1. イントロダクション
2. ハイウェイ・スター
3. ストレンジ・ウーマン
4. メイビー・アイム・ア・レオ
5. スモーク・オン・ザ・ウォーター
6. ネヴァー・ビフォア
7. レイジー
8. スペース・トラッキン
9. ルシール
10. メイビー・アイム・ア・レオ(サウンドチェック)

CD 3: モントルー ’71
1. スイス・ヨーデル *
2. スピード・キング *
3. ストレンジ・ウーマン *
4. イントゥ・ザ・ファイア *
5. チャイルド・イン・タイム *
6. 黒くぬれ! *
7. リング・ザット・ネック *
8. ブラック・ナイト *
9. ルシール *

LP: ドゥイージル・ザッパ 2024リミックス
Side One
1. ハイウェイ・スター
2. メイビー・アイム・ア・レオ
3. ピクチャー・オブ・ホーム
4. ネヴァー・ビフォア

Side Two
1. スモーク・オン・ザ・ウォーター
2. レイジー
3. ブラインド・マン
4. スペース・トラッキン

Blu-ray
〈ドゥイージル・ザッパ 2024アトモス・リミックス〉
1. ハイウェイ・スター *
2. メイビー・アイム・ア・レオ *
3. ピクチャー・オブ・ホーム *
4. ネヴァー・ビフォア *
5. スモーク・オン・ザ・ウォーター *
6. レイジー *
7. スペース・トラッキン *
8. ブラインド・マン *

〈1974 アメリカ・クアド・ミックス〉
9. ハイウェイ・スター
10. メイビー・アイム・ア・レオ
11. ピクチャー・オブ・ホーム
12. ネヴァー・ビフォア
13. スモーク・オン・ザ・ウォーター
14. レイジー
15. スペース・トラッキン

〈ドルビー 5.1 サラウンド・サウンド・ミックス〉
16. ブラインド・マン
17. メイビー・アイム・ア・レオ
18. レイジー

* 未発表音源

 

■西山瞳
LIVE INFORMATION
西山瞳トリオ+3 CD『Dot』発売ライブ
2024年4月24日(水)東京・新宿 Pit Inn
開場/開演:19:00/19:30
出演:西山瞳トリオ+3 西山瞳(ピアノ)/西嶋徹(ベース)/則武諒(ドラムス)/鈴木孝紀(クラリネット)/橋爪亮督(テナーサックス/フルート)/maiko(バイオリン)
チャージ:3,850円(1 drink付)

2024年4月29日(月・祝)長野・松本 Storyhouse Cafe & Bar
開場/開演:18:30/19:00
出演:西山瞳(ピアノ)/中島仁(ベース)/橋本学(ドラムス)
チャージ:3,500円+1オーダー
ご予約・お問い合わせ:080-4355-6283

2024年4月30日(火)長野・伊那 Jazz & Art Cafe PLAT
開場/開演:18:00/19:00
出演:西山瞳(ピアノ)/中島仁(ベース)/橋本学(ドラムス)
チャージ:3,000円+1オーダー
ご予約・お問い合わせ:0265-98-6731

2024年5月1日(水)愛知・名古屋 Mr.Kenny’s
開場/開演:18:00/19:30(1st)/21:00(2nd)
出演:西山瞳(ピアノ)
予約/当日:3,000円/3,500円

高槻ジャズストリート
2024年5月4日(土)大阪・高槻
桃園小学校グラウンド FM COCOLOステージ
時間:11:00~11:45
出演:西山瞳トリオ 西山瞳(ピアノ)/鈴木孝紀(クラリネット)/光岡尚紀(ベース)

高槻城公園芸術文化劇場 南館 太陽ファルマテックホール
時間:15:00~15:45
出演:西山瞳(ピアノ)

★詳細やその他のライブについては西山瞳のオフィシャルサイトへ

 

RELEASE INFORMATION

西山瞳 『Dot』 MEANTONE(2023)

リリース日:2023年11月22日(水)
品番:MT-12
価格:3,190円(税込)

TRACKLIST
1. Turtledove タートルダブ
2. Dot ドット
3. The Rider ザ・ライダー
4. To Return トゥ・リターン
5. Tidal タイダル
6. Red and Yellow レッド・アンド・イエロー
7. Pigeons ピジョンズ
8. Baroness バロネス
9. Lighthouse ライトハウス
(全曲 西山瞳作曲)

■メンバー
西山瞳 ピアノ、作曲 Hitomi Nishiyama piano,compose
西嶋徹 ベース Toru Nishijima bass
則武諒 ドラムス Ryo Noritake drums
鈴木孝紀 クラリネット Takanori Suzuki clarinet (on 2, 3, 5, 6, 9)
橋爪亮督 テナーサックス、フルート Ryosuke Hashizume tenor sax, flute (on 2, 3, 5, 6, 9)
maiko バイオリン maiko violin (on 2, 3, 5, 6, 9)

2023年7月12-14日 群馬県高崎市 TAGO STUDIO TAKASAKIにて録音
録音、ミックス、マスタリング:松下真也(Piccolo Audio Works)
FAZIOLI F278使用
ピアノ技術:越智晃(Fazioli Japan Co., Ltd.)
アートディレクション:平岡直樹(yuu)

 


PROFILE: 西山 瞳 

79年11月17日生まれ。6歳よりクラシックピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I’m Missing You』を発表。ヨーロッパジャズファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、〈横濱JAZZ PROMENADE ジャズ・コンペティション〉において、自身のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めて〈ストックホルム・ジャズ・フェスティバル〉に招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『Parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、〈インターナショナル・ソングライティング・コンペティション〉(アメリカ)で、全世界約15,000のエントリーのなかから自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコードのジャズ総合チャートで1位、HMVの総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自身のレギュラートリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『Shift』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカバーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、ヤング・ギター誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズの両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。自身のプロジェクトの他に、東かおる(ボーカル)とのボーカルプロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグバンドへの作品提供など、幅広く活動。〈横濱JAZZ PROMENADE〉をはじめ、全国のジャズフェスティバルやイベント、ライブハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさが共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。