SK8ER GIRLS & BOYS!
ポップ・パンク――90年代の爆発と現代に鳴る意味を改めて考える
今年3月に開催されたNOFXとサム41のラスト・ツアーは凄まじい盛り上がりだったし、ディセンデンツの日本における人気にも目を見張るものがある。ここ日本においてはHi-STANDARDの存在は大きく、メロディック・パンクは音楽カルチャーに深く根付いている。そして登場するのが本稿の主役、アヴリル・ラヴィーン。彼女とポップ・パンクは切っても切れない関係にあるのだ。
90年代中盤、グリーン・デイの『Dookie』とオフスプリングの『Smash』が爆発的なセールスを上げ、メロディック・パンクは世界的に市民権を得た。その影響を受けて新世代のポップ・パンクを鳴らしたのがブリンク182だ。99年にリリースした『Enema Of The State』は世界で700万枚以上を売り上げ、おバカなキャラも相まって、その名を轟かせる。
そして2000年代初めにキャッチーな旋律とパンク特有の疾走感を浴びまくったアヴリルがデビュー。彼女の偉大さは、ポップ・パンクにおける男女の壁を取っ払う役割を果たしたことだ。Dizzy Sunfistのあやぺたはハイスタとアヴリルが好きで、〈女の子でもパンクがやれる!〉と奮起したという。ポップ・パンク/エモの文脈から出てきたパラモアも、アヴリルが開拓した土壌と無関係ではないだろう。
昨今のポップ・パンク・リヴァイヴァルは、2020年にラッパーのマシン・ガン・ケリーが完全ポップ・パンク作『Tickets To My Downfall』 を出し、初の全米1位を獲得したことが大きい。さらにパンク/エモの祭典〈When We Were Young〉の開催も話題を呼んだ。ポップ・パンクはジェンダーやジャンルの壁を超え、パンデミックの闇から精神を解き放つ装置として多くの人に支持された。
そもそもアヴリルが多大な影響を受けたブリンク182の音楽性はポップ・パンクに止まらず、ヒップホップなど多様な音楽を吸収し、それ以前のパンクとは一線を引く自由度を獲得していた。その姿勢は日本だとTOTALFATが継承している。オリヴィア・ロドリゴのポップ・パンク曲“good 4 u”を例に出すまでもなく、いまはさまざまな形でポップ・パンク的な自由と開放感が求められているのではないだろうか。〈音楽は時代を映す鏡〉なんて言い回しはベタだが、AIが社会を侵食する現代において、人間らしさ=感情の発露という面からも、ポップ・パンクはいまもっとも正当に継承・評価されている気がしてならない。 *荒金良介
左から、グリーン・デイの94年作『Dookie』(Reprise)、Dizzy Sunfistの2023年のミニ・アルバム『PUNK ROCK PRINCESS』(コロムビア)、パラモアの2005年作『All We Know Is Falling』(Fueled By Ramen)、マシン・ガン・ケリーの2020年作『Tickets To My Downfall』(Interscope)、ヤングブラッドの2022年作『Yungblud』(Interscope)、ブリンク182の2023年作『One More Time...』(Columbia)、オリヴィア・ロドリゴの2021年作『Sour』(Geffen)