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若いアーティストにも影響を与え続ける『The Bends』

最後に、『The Bends』が後続のアーティストに与えた影響を考えたい。よく知られているように、アコースティックギターの繊細な響きに乗せてエモーショナルなファルセットボイスで歌うという『The Bends』の特徴的なスタイルは、ミレニアム前後にコールドプレイやトラヴィスなど多数のフォロワーを生み出した。ただ彼らがトムからは決して良く思われていなかったのは有名な話だ。

フォロワーたちの音楽からは『The Bends』の社会的な問題意識や音楽的実験性が抜け落ちており、内面的な葛藤を感傷的なサウンドで歌うというスタイルに着地していた。それを踏まえると、トムの反応は無理もない。トムは『The Bends』でもっとも避けたかった誤解をされている気分になったのではないだろうか。

その後は、『The Bends』の影響を公言するアーティストは目立たなかった。アーティストの間でレディオヘッドの人気はずっと高いものの、フェイバリットとして挙げられるのは『Kid A』や『Amnesiac』といった先鋭性が際立つ作品や、『In Rainbows』のようにソングライティングと実験性が理想的なバランスで両立した作品が定番だった。

近年も依然として『In Rainbows』の人気が高い。だが若いアーティストの間では、少しずつ『The Bends』を推す声も上がり始めているのは興味深い傾向だ。トムのソロツアーに寄せた原稿でも書いたが、例えばフリコやビーン・ステラーといった気鋭のインディバンドは『The Bends』をインスピレーションに挙げ、ホリー・ハンバーストーンは“Fake Plastic Trees”をカバーしている。

だが、なぜいま『The Bends』を見直す動きが出始めているのか。近年はスマッシング・パンプキンズやホールなどの再評価が著しいように、ビッグでエモーショナルなロックサウンドの見直しが進んでいる。特にイギリス(と隣国アイルランド)では、アンダーグラウンドの実験主義の象徴であったサウスロンドンの時代を経て、フォンテインズD.C.やザ・ラスト・ディナー・パーティーやワンダーホースなどによるアリーナロックを再定義する運動も見られるようになった。このような時代状況ゆえに、リリース当時からその壮大さが英国メディアから評価されていた『The Bends』もまた、ビッグでエモーショナルなロックサウンドのロールモデルとして見直されようとしているのではないか。

もちろん、これまで述べてきたように『The Bends』の素晴らしさはサウンドの壮大さだけではない。もし今後さらに『The Bends』の再発見が進むとすれば、その音楽的な多様性や実験性、同時代の作品群と並べたときの独自性、そして優れた社会批評性を隠し持った歌詞など、その複層的な魅力に光が当たる可能性もあるはずだ。

 


RELEASE INFORMATION

RADIOHEAD 『The Bends』 Parlophone(1995)

■輸入盤LP (数量限定/日本語帯付き仕様) 

品番:XL780LPJP
価格:6,390円(税込)

■輸入盤LP
品番:XLLP780
​価格:5,990円(税込)

TRACKLIST
SIDE A
1. Planet Telex
2. The Bends
3. High And Dry
4. Fake Plastic Trees
5. Bones
6. (Nice Dream)

SIDE B
1. Just
2. My Iron Lung
3. Bullet Proof ... I Wish I Was
4. Black Star
5. Sulk
6. Street Spirit (Fade Out)