Page 3 / 3 1ページ目から読む
きだりょうすけ

小さくてかわいい独自の形状――8cm CDをプレスするきだりょうすけに聞く

続いて、創業16周年となる〈こだわりのCDプレス〉プレスミー代表のきだりょうすけ氏。鹿児島出身、1980年生まれのきだ氏が最初に買ったCDはとんねるずの“情けねえ”、織田哲郎“君の瞳にRainbow”とのこと。クラシックを愛する父親の元に育ち、中高生の頃にはバンドを組み、音楽に関わる仕事を夢見ていたとか。

「大学を出て、しばらくはフリーターをしながら西荻窪で弾き語りのライブをしていましたが、ある音楽レーベルの社長さんから〈うちで働いてみない?〉と声をかけていただいたんです。そこであるソロアーティストの現場マネージャーをやりつつ、外部からCD制作を請け負う仕事に出会い、それが現在のプレスミーのルーツですね」

遠回りしながらも夢を叶え、バリバリと仕事をこなすきだ氏。業界での10年以上の経験を踏まえ〈何か面白いことがしたい〉と思っている時に目にしたのが、サカナクションが8cm CDで新曲“忘れられないの”をリリースしたという記事。インディーアーティスト向けに8cm CDで作品をプレスするサービスを思いつき、早速実行に移します。

当初、周囲には〈なぜ今、短冊CD?〉と不思議がられ(百合おんさんのDJと同じですね)たものの、SNSでサービス開始を告知すると予想以上の反響だったとか。

「初めて短冊CDのプレスを依頼していただいたのはハレトキドキさんでした。これは本当に嬉しかったですね。それ以降、本当に多くの皆様にご依頼をいただいています。特に〈いつか作ってみたかった〉〈前に他の業者で作ろうとしたけど大ロット(大量生産)のみだったから断念してた〉などの声が届きました。プレスミーでは、100枚から作れるようにしています。

SNSを通じて、全国各地で短冊CD関連のDJイベントが存在すること、百合おんさんのような熱心なコレクターの方々がいることも知りました。自分だけでなく、各地で同時多発的に盛り上がってきていたんだと思います」

当初はアイドルやV系バンドからの依頼が多かったものの、サービス開始から3年経った現在では、企業ノベルティ用やゲーム音楽といった様々なジャンルのアーティストがプレスを依頼してくる状況だとか。

「今後は、地元の人なら誰でも知っているような、ローカルCMの作品集をリリースすることが密かな目標です。その地域のお土産として買ってもらえるような」

そんなプレスミーが主導となって行われている販促キャンペーン〈短冊CDの日〉についても聞いてみた。

「端的に言うと〈レコードの日〉のようなイベントの、8cmシングルCD版です。令和の世の中で活動しているアーティストやミュージシャンが、短冊CDを一斉にリリースし、その活動とCDショップを盛り上げるイベントです」

2023年からスタートした〈短冊CDの日〉は、その第1回から各種ショップでも話題に。なんと言ってもナイアガラ・レコードの協力のもと大滝詠一“幸せな結末”(キムタク主演の月9ドラマの主題歌という、これまた90年代バイブスです)の復刻がカタログのこの年の目玉で、マニアを唸らせました。

そんな〈短冊CDの日〉も今年で3回目。今回は「ハウルの動く城」のメインスタッフとしても知られるアニメーター・山下明彦氏のイラストをキービジュアルに据え、リリースのラインナップは高中正義にTokimeki Records、まさかのインキャパシタンツと今年もバラエティ豊か。

「今年のテーマは〈人生変えちゃう、歌がある〉です。自分が中高生の頃、CDを買ってきては、ジャケットを開き、歌詞をじっくり読みながら音楽を聴いていました。自分も、その頃に出逢った歌によって、音楽に関わる仕事に惹かれ、今、こういうことをやれています。短冊CDの日にリリースされる作品も、誰かの人生を変えちゃうかもしれない」

最後に、きだ氏に短冊CDの魅力を聞いてみた。

「一番は、やはり独特のサイズと形状だと思います。トレーディングカードみたいにコレクションしやすいですし、CDも小さくてかわいい。僕自身、初めて店頭で見た小学生の頃、〈え!? これがCDなの?〉と思いましたし、きっとこれから知る若い世代の皆さんにも、同様の驚きがあるかもしれない。

それと、これはサービス開始当初から唱えている説なのですが、この縦長の形状は、むしろ10代や20代のスマホネイティブの方々や、縦長動画に馴染みのある世代に親和性が高いと思っていて。

例えば、レコードや普通のCDのジャケ写をスマホの壁紙にしても上下が空いてしまいますが、短冊CDのジャケ写は、そのまま、ほぼ綺麗に収まるサイズでかわいいんです。また、デザインする側にしても、縦長のサムネイルなどに慣れているほうが、新たな解釈で縦長のジャケットデザインを生むのでは……と思っています。

百合おんさんの『短冊CDディスクガイド』に掲載された短冊CDは、誰もが知っているものもあれば、マニアックなものもありますよね。短冊CDの日でリリースされた作品、これからリリースされる作品も、いつか同じように振り返られて、世代を超えて長く聴いてもらえると嬉しいですね」

ということで、今回は8cm CDに熱き思いを託す男たちのインタビューでお送りいたしました。綺羅星のごとく輝いたあの頃のポップス、小さなディスクが連なって光る天の川……。〈短冊〉に込める願いはただ一つ! これからもCDが回り続けますように……。

 


INFORMATION
短冊CDの日 2025

開催日:2025年7月7日(月・七夕)
公式サイト:https://tanzaku-day.jp/
主催:こだわりのCDプレス プレスミー
お問い合わせ先:短冊CDの日 運営事務局 info@tanzaku-day.jp

■第1弾 発表アーティスト
高中正義/GOOD BYE APRIL/Wink Music Service/小田桐仁義/平野友里(ゆり丸)/Tnaka/リリー&マリー/THREE WILL/しらい/体育館ミューズ/惑星通信社/スワンスワンズ/3776/SISSY SPACEK/NECROPOTENCE/大河内あきな/GREAT INVADERS/kito-mizukumi rouber/ダダダムズ/INCAPACITANTS/GASOLINE/さかさまJr./TOKIMEKI RECORDS/菅野可南子/小日向由衣/TAMAYURAM/小日向まお/Poula

■第2弾 発表アーティスト
大滝詠一(Cornelius、スチャダラパー、Night Tempo、原口沙輔、千葉大樹(from Kroi)、Mega Shinnosuke)/井山大今(井上鑑、山本秀夫、高水健司、今剛)/THE SURF COASTERS/MANOSKE/MCあんにゅと本間本願寺/ウルトラめっちゃ凄く良いグループ/平沢グラインド唯/宮本彩陽/デッカチャン/ほりゆうじ/ダンカンバカヤロー!/usabeni & MaNaMaNa/Jun Parker & Carlinhos/ONIGAWARA/Tokyoかけひき倶楽部

(順不同/参加アーティストは変更になる場合があります)

■販売店
タワーレコードなど全国のCDショップ店頭、または各オンラインショップ

詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2025/06/09/0709

 

LIVE INFORMATION
TANZAKU CD FESTIVAL 2025

2025年8月2日(土)神奈川・横須賀 ヤンガーザンイエスタディ
開場/開演:11:30/12:00
出演:紅-akn featuring 春日井アイドル/usabeni/ウルトラめっちゃ凄く良いグループ/菅野可南子/小日向由衣/体育館ミューズ/ダダダムズ/TAMAYURAM/Tnaka/Tokyoかけひき倶楽部/NECROPOTENCE/平野友里(ゆり丸)/宮本彩陽/LILY&YU/惑星通信社
予約/当日:3,500円(+1 DRINK)/3,800円(+1 DRINK)
予約:TIGET https://tiget.net/events/407280
主催:短冊CD発売37周年勝手に応援委員会/協賛:短冊CDの日 運営事務局

 

BOOK INFORMATION

ディスク百合おん 『短冊CDディスクガイド 8cmCDマニアックス――渋谷系、レア・グルーヴ、アイドル、アニメ、テレビ番組、企業ノベルティまで』 DU BOOKS(2024)

発売日:2024年7月12日(金)
ISBN:978-4-86647-222-5 C0073
予価:本体2,750円(税込)
A5/224ページ(予定)/並製

 


PROFILE: ディスク百合おん
ナードコアという独特なテクノを得意とするミュージシャン。90年代に席巻した短冊CD(8cm CD)のみを回すDJとしても知られ、「短冊CDディスクガイド」の書籍監修を務めた。さらに、コンビニで手に入る食品を組み合わせて新しい料理を生み出す〈コンビニかけ合わせグルメ〉を紹介する人物として様々なメディアで取り上げられ、同名の書籍も刊行。山本さほの漫画「岡崎に捧ぐ」に登場する杉ちゃんのモデルという棚ぼた知名度も獲得している。

PROFILE: きだりょうすけ
1980年生まれ。鹿児島県薩摩川内市出身。2009年よりCD制作サービス・プレスミーを開始。2023年より短冊CDの日を開催。

PROFILE: Kotetsu Shoichiro

ミュージシャン(トラックメイカー/DJ)。90年生まれ、香川県出身。ダンスミュージック全般を手がけ、ラッパーやゲーム音楽、CMなどに楽曲提供の実績多数。2021年にはラッパー・T-STONEへの提供曲“Let’s Get Eat”がBillboard JAPANのTikTok Weekly Top 20で1位を獲得。また2022年にはtofubeatsのアルバム『REFLECTION』収録の“Vibration feat. Kotetsu Shoichiro”へラップで客演し話題を呼んだ。ライター/インタビュアーとしてはミュージック・マガジン、Quick Japan、CINRA、関西ソーカルなど数々の媒体に寄稿。ほか、さとうもか“Lukewarm”“Loop”をはじめ他アーティストのMVなど映像/アニメーションの編集も手がけるなどジャンル/形式に囚われない幅広いスタイルで活動をおこなっている。
オフィシャルサイト:https://kotetsu-shoichiro.com/
X:https://x.com/y0kotetsu
Instagram:https://www.instagram.com/y0kotetsu/
YouTube:https://www.youtube.com/@y0kotetsu