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オリコンチャートと比例しない渋谷系の人気

――PIZZICATO FIVEやCornelius、Original Loveなど、いわゆる渋谷系はどうでしたか。後世への影響力に対して、当時の売り上げ的にはそこまで……という話も聞きますが。

「いや、売り上げとしても大きかったですよ。カジヒデキの『MINI SKIRT』(1997年)は店のチャートでも上位でしたし、Corneliusももちろん人気がありました。新譜のイニシャル(初回出荷枚数)のような定量的な話はともかく、オリコンチャートとは比例しない人気が店ではありましたね」

カジヒデキ 『MINI SKIRT』 トラットリア/ポリスター(1997)

――ぐっとメジャーになりますが、宇多田ヒカルの『First Love』が出た当時のことは覚えていますか? 売上は累計770万枚という、日本の音楽史上最大のヒット作ですが。

「もちろん『First Love』はタワーでも売れていました。ここ(渋谷店)だけでも、2万枚くらいは売れたのかな? メーカーのプロモーションにも力が入っていたし、全てが上手く噛み合って、売れるべくして売れたアルバムだと思います。

個人的には、やはり“Automatic”を初めて聴いた時は衝撃的でしたね。自分は幼い頃に海外を転々としていたので英語の発音が気になるのですが、彼女は発音が凄くスムーズで驚かされました。宇多田ヒカルの影響力はやはり未だに凄いですよね。今、自分が(バーベイトロックで)担当しているアーティストの安田レイも“First Love”はカバーしています」

宇多田ヒカル 『First Love』 東芝EMI(1999)

――2000年代に入ってからは、CDの売り上げも含めて、音楽産業もかなり変化していきますよね。

「2002年にはタワーも本国からMBOして独立しますしね。自分も2004年には異動があり、売り場からは離れました。AmazonやiTunes Storeなど、音楽の買う場所がネットにバッと増えたのが、2000年代という時代でしょうね。それでも店頭に足を運んで買うお客さんはいたものの、自宅での通販で完結する人も増えたんだと思います。

自分もインターネットやパソコンは渋谷店時代からもちろん使っていましたし、ナップスタージャパンの立ち上げにも仕事で関わりました。レコード会社と過去のカタログの配信について交渉したりしていましたね。今だとサブスク配信ということになるんでしょうけど、当時はまだまだパッケージ(CD)が売れていた時代なので、慎重なメーカーさんも多かったですね」

※ナップスター もともとは違法なものを中心にしたファイル共有ソフトだったが、方針転換して大手レコード会社とも連携。いわゆるサブスクの先駆けともいえる音楽配信サービスだったが、現在は消滅。日本ではタワーレコードとともにナップスタージャパンとして運営されていた

 

CD販売もライブのプロモーションも根本は同じ

――その後、高橋さんはタワレコをお辞めになりましたが、現在のお仕事を教えていただけますか。2010年からはバーベイトロックという会社の代表取締役を務めていますよね。

「現在はアーティストのツアー制作などの仕事を行っていますね。昔から担当しているのは大森靖子、それと彼女のプロデュースしているZOCXやMAPA、近年だと他にもシンガーソングライターのみゆな、安田レイなどのライブを担当しています。フェスやイベントの企画、キャスティングなども行っておりますね。フェスでのセッションの段取りなども、自分がまとめているものがあります」

――現場のまとめ役といった感じですね。CDを売る仕事とは、かなり異なるように思いますが。

「そうですね、でもタワー時代からイベントは担当していましたし、CDがコンサートに置き換わったというか、ひたすらプロモーションを考えるという点では同じですね。定量化できる仕事じゃないので、ネットも使うけど、地道にチラシも撒くし、とにかくいろいろ宣伝のために動き回ってます」

――そういうライブやフェスの現場にいる方からすると、CDって実際、どんな感じですか? 物販での動きはどうでしょうか。

「ベテランのアーティストだと、ストリーミングよりもCDを買う人がファン層的に多いと思います。あと、ワンマンはコアなファンが来るから、音源は既に持っているんですよね。だから物販でCDを買うお客さんは、フェスや企画などで初めてそのアーティストを観て買っていくというパターンが多い気がします。そういう意味では、物販でCDがよく売れた日は、一見さんにも響くような良いライブが出来たってことなんじゃないかとも思います。

CDの売れ方はアーティストによって違いますから、一概には言えませんが……アーティストが曲を作って、それがソフトとして一つのパッケージにまとまって、さらにそれを売れることで還元される、ということは、アーティストの権利を守る大事なサイクルだと思いますね。モノとしての所有欲は、時代は変わっても誰しもあると思いますから」

――高橋さんは、CDが一番売れていた時代に、CDショップで働かれていた訳ですが、シンプルにその時代って楽しかったですか?

「ええ、楽しかったですよ。やっぱり音楽に囲まれているのが好きだし、好きな音楽が仕事に出来ているのは幸せだと思います。それはタワーを離れても、今の仕事でも同じですね。

個人的に最近の若い人たちは器用な方が多いと感じるので、〈音楽しかやれない〉と思わせてくれるようなヒリヒリしたカッコいいロックバンドがもっと出てきてほしいと思っています。BLANKEY JET CITYやミッシェルはそういうバンドなので」

――ありがとうございました!

 


LIVE INFORMATION
”QUATTRO MIRAGE” Powered By Barbate Rock 15th Anniversary

大森靖子 × みゆな × NakamuraEmi
2025年10月1日(水)東京・渋谷 CLUB QUTTRO

TRI4TH × QOOPIE
2025年10月3日(金)東京・渋谷 CLUB QUTTRO

開場/開演:18:15/19:00
前売:5,000円(ドリンク大別途600円・整理番号付)

 


PROFILE: Kotetsu Shoichiro

ミュージシャン(トラックメイカー/DJ)。90年生まれ、香川県出身。ダンスミュージック全般を手がけ、ラッパーやゲーム音楽、CMなどに楽曲提供の実績多数。2021年にはラッパー・T-STONEへの提供曲“Let’s Get Eat”がBillboard JAPANのTikTok Weekly Top 20で1位を獲得。また2022年にはtofubeatsのアルバム『REFLECTION』収録の“Vibration feat. Kotetsu Shoichiro”へラップで客演し話題を呼んだ。ライター/インタビュアーとしてはミュージック・マガジン、Quick Japan、CINRA、関西ソーカルなど数々の媒体に寄稿。ほか、さとうもか“Lukewarm”“Loop”をはじめ他アーティストのMVなど映像/アニメーションの編集も手がけるなどジャンル/形式に囚われない幅広いスタイルで活動をおこなっている。
オフィシャルサイト:https://kotetsu-shoichiro.com/
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