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録音の常識を否定したノイズの壁

音楽的な批評視点に立てば、本作のサウンド・プロダクションにおける〈Shin-ei〉ファズワウペダルの使用や、ボビー・ギレスピーによるスタンディングドラムのミニマリズムは、確かに革新的だった。

しかし、それ以上に重要なのは、このアルバムがスタジオという空間の常識を否定した点にある。通常、メジャーのスタジオワークは音の分離や明瞭さを追求するものだが、彼らはエンジニアの常識を無視し、ギターのアンプから発せられるフィードバックをそのまま空間的な壁として録音した。

ビーチ・ボーイズやシャングリラスへの憧憬である甘美なメロディは、そのノイズの壁の向こう側で、まるで幻影のように鳴り響く。この遠さこそが、イースト・キルブライドの寝室から世界を夢見ていた彼らの、物理的・心理的な距離感を象徴しているようでもあった。

 

普遍性を失わない誠実な抵抗

リリースから40年を経た今、『Psychocandy』から聴き取るべきは、単なるシューゲイザーの原点としての音響ではない。それは、サッチャリズムという冷徹な現実に対し、ノイズという非言語の拒絶と、ポップなメロディという夢想の両方を使って対峙した、極めて誠実な抵抗としての側面だ。

クリエイションでの狂騒から、ブランコ・イ・ネグロでの戦略的な展開へ。この一連のプロセスを含めて、本作はロックンロールがまだ社会に対して脅威たり得た時代の、最後の輝きのひとつとして機能し続けている。そのノイズは、40年後の現代においても、システムに順応できない魂を震わせる、普遍的な響きを失っていない。