SMELLS LIKE TEEN SPIRIT
ニルヴァーナとは何だったのか。フォロワーを通じ、改めてその存在について考える

 87年のシアトル近郊でカート・コバーン(ギター/ヴォーカル)、クリス・ノヴォセリック(ベース)を中心に活動を開始したニルヴァーナは、地元のインディー・レーベルであるサブ・ポップから『Bleach』(89年)でアルバム・デビューを飾る。そして92年1月、デイヴ・グロール加入後初となるメジャー進出作『Nevermind』がマイケル・ジャクソンの『Dangerous』を蹴落とし、リリースから4か月かけて全米チャートの首位に昇り詰めた瞬間、グランジ革命は沸点へ。イビツかつパワフルなギターの轟音とポップな歌メロを組み合わせた楽曲の衝撃はもちろん、特にカートのこだわっていた反マチズモ主義やDIY主義が支持され、バンドはムーヴメントの象徴として祀り上げられることとなるのだった。

ニルヴァーナの91年作『Nevermind』収録曲“Smells Like Teen Spirit”

 さて、〈ニルヴァーナとは何だったのか〉というお題について……だ。あまりにも巨大なアイコンになってしまったため、その答えを限られた字数で導くことはとても難しい。しかし、彼らのフォロワーを通じ、ニルヴァーナがロック・シーンに残したものの大きさを改めて感じることは可能だろう。

 ニッケルバックをはじめ、90年代半ばに台頭したポスト・グランジ勢も当然フォロワーと考えて問題ないが、その多くがマッチョなオルタナ・メタル・バンドへ変化していったことを思えば、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルに沸く2000年代初頭~半ばに登場した、ナイン・ブラック・アルプスやブラック・レベル・モーターサイクル・クラブのようなグループこそ、直球のチルドレンとして紹介すべきだと僕は思っている。以降もシンバルズ・イート・ギターズやクラウド・ナッシングスなど、音作りもまんまそれ風なバンドが後を絶たないなか、カートの死から20年を経たいま、ロック・シーンではグランジ回帰の気運が過去最高に高まっているのだ。

ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブの2001年作『B.R.M.C.』収録曲“Spread Your Love”

クラウド・ナッシングスの2014年作『Here And Nowhere Else』収録曲“Now Hear In”

 UKでは『Bleach』をサイケに解釈したようなウィッチーズを筆頭に、ロイヤル・ブラッドやキャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメンが、USではスウェアリンやボッツらが昨年末から今年にかけてニルヴァーナの遺伝子を感じさせる頼もしいアルバムを発表。余談だが、デイヴ・グロールも太鼓判を押すフィラデルフィアのブリーディング・レインボウに、ニルヴァーナの93年作『In Utero』を手掛けたスティーヴ・アルビニとのレコーディング経験もあるニュージャージーのスクリーミン・フィメールズ、NMEの〈2014年に聴くべき40枚〉に選ばれたグラスゴーのハニーブラッドなど、女性がフロントに立つ90sインディー流儀なバンドのブレイクも、盛り上がりを見せるグランジ・リヴァイヴァルの一例として書き加えておきたい。

ウィッチーズの2014年作『Annabel Dream Reader』収録曲“Wire Frame Mattress”

ブリーディング・レインボウの2014年作『Interrupt』収録曲“So You Know”

 このように、ニルヴァーナの音楽は錆びるどころか、現代の若者にも深く愛され、今日も世界中のどこかでチルドレンを生んでいるのである。

 

▼ニルヴァーナの作品
左から、ニルヴァーナの89年作『Bleach』(Sub Pop/Rhino)、同91年作『Nevermind』、同93年作『In Utero』(共にDGC/Geffen)
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▼文中に登場したニルヴァーナ・チルドレンの作品の一部
左から、ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブの2001年作『B.R.M.C.』(Virgin)、クラウド・ナッシングスの2014年作『Here And Nowhere Else』(Carpark)、ウィッチーズの2014年作『Annabel Dream Reader』(Heavenly)、スウェアリンの2013年作『Swearin'』(Wichita)、ブリーディング・レインボウの2014年作『Interrupt』(Kanine)
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