
©Lyodoh Kaneko
〈珠玉のリサイタル&室内楽 児玉 桃&アレクサンドル・タロー デュオ・リサイタル〉が2026年9月26日(土)、東京・銀座ヤマハホールで開催される。仏パリを拠点に国際的に活躍し、バッハからメシアンなど現代作品まで幅広いレパートリーを持つ児玉桃。そしてフランスを代表するピアニストとして人気を誇るアレクサンドル・タロー。2人による初の2台ピアノコンサートが実現する。プログラムは両者の共通点でもあるフランスの名作を集めたもの。絶妙なコンビネーションが極上の音響空間で堪能できるであろう今回の貴重な公演について音楽評論家・青澤隆明に綴ってもらった。 *Mikiki編集部
孤独なピアニストの友だちのつくりかた
いろいろな職業のなかでも、音楽家は友だちが多いほうだと思う。それでもコンサートピアニストはどうしても孤独にみえるし、実際そうであるに違いない。しかし、だからこそ友だちは大事にするし、ソリストとして孤独であるがゆえの親しみもあるだろう。
アレクサンドル・タローをみていると、そんなことを強く感じる。児玉桃をみていてもそうだ。「昨日も児玉桃さんが訪ねてきてくれて、ホテルのバーでピアニストの人生について、いろいろな話をしました。ピアニストの友人と世界の思いがけないところで再会して、短い時間でも話ができるのはうれしい。みんな移動が多い生活だから、もしかしたらとても孤独かもしれないし」とタローが言っていたのは、2024年秋の東京でのことだ。
アレクサンドル・タローと児玉桃は長らくパリを拠点として活躍する若い頃からの友人どうし。タローは根っからのパリジャンで、ふたりともパリ国立高等音楽院で学び、年代的にも近い。友人になるのは自然なことだとしても、いっしょに仕事をする機会はふつうにはなさそうで、だから自分たちで共演しようと思ってつくらないとなかなか訪れないものだろう。
タローがパンデミックのさなかに進めた『Four Hands』は、4手連弾の作品を多彩な友人たちと織りなす、まさしく友情の結晶ともいうべき親密なアルバムだった。児玉桃とは敢えてだろうかフランスものではなく、ハイドンのト長調のピアノトリオの第3楽章を編曲で採り上げた。それから昨2025年11月には、ソロとデュオによるコンサートを武蔵野市民文化会館で行っている。あいにくと私は聴けなかったが、タローはサティを主に、児玉桃はドビュッシーを弾き、4手連弾ではフォーレの組曲“ドリー”、ブラームスの“ハンガリー舞曲”などを披露したようだ。

©Marco Borggreve
児玉桃&タローの世界初2台ピアノ公演
このように連弾の機会がもたれてきたさきに、いよいよ2台のピアノでの共演が今年9月26日、世界で初めてヤマハホールで結ばれることになる。直近だとタローは2025年11月、児玉桃は同年2月にここでリサイタルをしているが、今回はふたりが顔を合わせ、得意中の得意とするフランス音楽の逸品をソロで競演し、デュオで共演する粋な祝宴となる。
まず、フォーレの“ラシーヌの賛歌”をタローが自身の編曲で弾き、シャブリエの小品をいくつか織りなしていく。そして、2台ピアノのデュオで、ドビュッシーの“牧神の午後への前奏曲”、プーランクの“エレジー”と“シテール島への船出”を児玉桃と手合わせする。
第2部は児玉桃がソロで、ラヴェルの“フォーレの名による子守歌”をタローの編曲で弾いてから、得意のドビュッシーから“レントより遅く”、そして晩年の“12の練習曲”を抜粋で聴かせる。デュオでは、シャブリエに戻って“3つのロマンティックなワルツ”を舞い、ラヴェル“ラ・ヴァルス”でコンサートは大団円を迎える。
フランスの香気とエスプリに満ちた魔法の時間が織りなされる
こうして曲目をみているだけでも、優美なフランスがいまにも薫ってきそうだ。しかも、よく吟味され、響き合う構成となっている。19世紀のシャブリエ、フォーレから、ドビュッシー、ラヴェルで20世紀をまたぎ、プーランクの2作では1950年代を進む。フランスのピアノの魅力に溢れた一夜で、オーケストラでよく知られる名曲も2台ピアノの絢爛たる響きで聴ける。
と書くのはかんたんだが、2台ピアノはデュオのなかでも特別に合わせが難しい分野である。姉妹や兄弟や夫妻のデュオも多いのは、それだけ気心が知れて、呼吸が合わないと、なかなかうまくいかないからだろう。児玉桃の場合は姉の児玉麻里と2台ピアノをむかしから巧みに聴かせているし、なにより彼女もタローも対話が好きで、そのうえ古くからの友人どうし。よいところがたくさん引き出され、たがいの持ち味を引き立て合うはず。フランスの香気とエスプリに満ちた魔法の時間が、素敵に親しく織りなされていくことだろう。
LIVE INFORMATION
珠玉のリサイタル&室内楽
児玉 桃&アレクサンドル・タロー デュオ・リサイタル
2026年9月26日(土)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:15:30/16:00
会場:ヤマハホール
出演者:児玉桃(ピアノ)/アレクサンドル・タロー(ピアノ)
料金(税込):7,000円(全席指定)
主催:ヤマハ株式会社ヤマハホール
■注意事項
・都合により出演者、曲目が変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。
・未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
・チケット料金には消費税が含まれております。
■プログラム
G. フォーレ(A. タロー編)/ラシーヌの賛歌 Op. 11 ※タローソロ
E. シャブリエ/遺作の5つの小品 より カプリス ※タローソロ
/10の絵画風小品 より 憂うつ、村の踊り、牧歌、スケルツォ・ワルツ ※タローソロ
C. ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
F. プーランク/2台ピアノのためのエレジー FP175
/シテール島への船出 FP150
M. ラヴェル(A.タロー編)/フォーレの名による子守歌 ※児玉ソロ
C. ドビュッシー/レントより遅く ※児玉ソロ
/12の練習曲 より ※児玉ソロ
E. シャブリエ/3つのロマンティックなワルツ
M. ラヴェル/ラ・ヴァルス
■チケット情報
チケットぴあでのご予約・お申し込み
WEBからのお申し込み:http://ticket-search.pia.jp/pia/search_all.do?kw=323-064 ※座席選択可能
Pコード:323-064
発売日:2026年3月21日(土)
座席種別:指定席
■お問い合わせ
ヤマハ銀座店
TEL:03-3572-3171(ヤマハ銀座店 インフォメーション)
営業時間:11:00~18:30
定休日:毎週火曜日(祝日の場合は営業いたします) ※2026年3月30日(月)は臨時休業いたします
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14
アクセス:https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza.html#access
PROFILE: 児玉 桃
J. S. バッハからメシアンを含む現代作品まで、幅広いレパートリーと豊かな表現力によるその演奏は高い評価を得ている。幼少期をヨーロッパで過ごし、ドイツで教育を受けたあと、パリ国立高等音楽院にてM. ペライア、A. シフ、T. ニコラエワに師事。1991年、ミュンヘン国際コンクールにて最年少で最高位を獲得し、その才能を世界に示した。その後、ヨーロッパ、北米、アジアで活動を展開。ケント・ナガノ指揮ベルリン・フィル、小澤征爾指揮ボストン響、モントリオール響、フランス放送フィル、スイス・ロマンド管、ヘルシンキ・フィルなど、世界一流のオーケストラと多数共演。現代音楽にも積極的に取り組み、特に細川俊夫からの信頼は厚く、数多くの作品を手掛けている。ピアノ協奏曲“月夜の蓮 -モーツァルトへのオマージュ-”は、ハンブルクにて北ドイツ放響と世界初演、日本初演は小澤征爾指揮&水戸室内管により行われ、CD化もされ大きな話題を呼んだ。ヨルグ・ヴィットマン、ロドルフ・ブルノー=ブルミエをはじめ、多くの現代作曲家が児玉桃に作品を献呈し、初演を行っている。CD録音も活発で、オクタヴィア・レコード、ECMから作品を多数リリース。後進の指導にも熱心で、現在はドイツのカールスルーエ音楽大学で教授を務める。エリザベート王妃国際音楽コンクール、ショパン国際ピアノコンクール、ジュネーヴ国際音楽コンクール、ロン=ティボー国際コンクール、浜松国際ピアノコンクールなど、数々の世界的コンクールで審査員を務めている。平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。令和4年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。現在はパリに在住。
PROFILE: ALEXANDRE THARAUD
アレクサンドル・タローは25年に及ぶキャリアを通じ、クラシック音楽界における唯一無二の地位を築き、フレンチピアニズムの担い手として活躍している。クープラン、バッハ、スカルラッティからモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、ブラームス、さらにラフマニノフや20世紀の著名フランス人作曲家に至る幅広いレパートリーを録音したソロアルバムは25作を超え、そのほとんどが主要音楽専門誌の賞に輝いている。また、演劇制作者、ダンサーなどクラシック音楽以外のジャンルの音楽家たちとのコラボレーションを通じて、多彩な芸術的試みにも挑んでいる。ソリストとして、最近ではバイエルン放送響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、フィラデルフィア管など世界の一流オーケストラと共演。世界の主要なコンサートホールでのリサイタルも多い。 エラート・レコードと専属レコーディング契約を結び、活発なレコーディングを行っている。2017年、ピアニストとしての自らの日常生活を興味深く語った著書「Montrez-moi vos mains」を出版。2021年、フランスの音楽大賞ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジーク・クラシックより、インターナショナル・ソリスト・オブ・ザ・イヤー賞を授与された。2022年には映画音楽を特集した『シネマ』と題するCDをリリースし、2023年は4手プロジェクトに挑むなど、視野の広い活動を精力的に展開している。最新アルバムは、2025年10月にリリースされた『ピアノソング』。