医療用など専門性の高かった黎明期
そもそもCD-Rは1988年、電子部品メーカーの太陽誘電で開発されました。中心となったのは同社所属の研究者・浜田恵美子氏です。
80年代当時、書き込み可能な光ディスクそのものは、すでに存在していました。しかし、それらは専用機器でしか再生できず、文書アーカイブや医療データの保存などに用いられる、一般ユーザーには縁の薄いテクノロジーでした。
そこで浜田氏らが目指したのが、〈書き込みができて、なおかつ既存のCDプレーヤーで再生できるディスク〉です。CD-Rの画期的な点は、単に記録できることではなく、その高い互換性にあったのですね。
1989年から1995年ごろにかけて、CD-Rはまず、業務用途を中心に普及し始めました。例えばラジオ局のジングルや店内放送、音楽業界のプロモーション用音源などなど。ソフトウェア会社や音楽業界では活用が進んでいたものの、書き込みドライブは数十万円以上と高価で、一般家庭にはまだ手の届かない存在でした。
CD-R自体の価格も、米国では1枚で約12ドル、日本では3,000円ほどとかなり高価だったとか(日本においては、デジタルコピーを巡る著作権問題との兼ね合いから、高額にならざるを得なかったとも言われています)。音楽ファンの間では、まだまだカセットテープが現役の時代ですね。
音楽生活を便利にする日用品へ
CD-Rが身近になるのは、90年代後半からです。1995年はかのWindows 95が登場した年ですが、HP社のCD-Rドライブ〈HP 4020i〉もまた〈初めて1,000ドルを切った民生向けCD-Rドライブ〉として話題になりました。以降、数年をかけて、低価格な書き込みドライブや、CD-R対応パソコンが普及していきます。

出典:BESTDO楽天市場店
高価だったCD-Rも、廉価な台湾メーカーの製品の参入もあり、1998年ごろには1枚300円くらいまでに値下がりしました。業務用の特殊なメディアから、音楽ファンやパソコンユーザーの日用品へと変わっていったのです。
かくしてユーザーは、自由に市販のCDをコピーしたり、自ら選曲したお気に入りのミックスCDを作って車で流したり……と、CD-Rによって音楽生活がより便利になったものでした。
オリジナルの選曲テープを作るのは、カセットテープ、MDでも可能でした。しかしカセットテープでは、50分の音源をコピーするのに50分必要でしたが、CD-Rは数分でコピーすることが可能でした。MDもまた、CDプレイヤーほど誰もが持っていた訳ではありません。CD-Rはその利便性ゆえ、人から人へと送り合うアイテムとして定着していました。曲名などをメモするインデックスカードも、便箋のようで、人に渡すCD-Rには細かく情報を書いたものです。

ちなみに、CDに音楽を書き込む際には、Windows Media PlayerやiTunesといった標準ソフトでも可能ですが、どのライティングソフトを使うべきか? 何倍速で焼くのがベストか? メーカーごとのCD-Rの特性は?といった、オーディオマニアの議論も盛んでした。メディアの色素やドライブとの相性、読み取りエラーまで含めて音質を論じるユーザーもおり、このあたりを検証し始めるとあまりにもディープなので、今回は(永遠に)端折ります!