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自主制作盤の評判が口コミで広まり、レーベル契約!

かくして、90年代末~2000年代にかけて、完全に定着したCD-Rというフォーマット。地下で活動するアーティストにとっても、その影響は少なくありませんでした。インディーなバンドやシンガーソングライター、ラッパーの多くが、デモ音源やライブ録音をCD-Rに焼き、ライブハウスの物販や、手売りで販売するようになります。関西ゼロ世代や、あるいはひと昔前の東京インディー青年たちが、キンコーズで印刷したジャケットを家でCD-Rに差し込み、ダンボールで作った値札とともにライブ会場で並べ、売り上げはそのままその日のビール代へと消えていく。そんな光景が、全国のライブハウスで広がります。

かの相対性理論の名を一躍広めた最初のアルバム『シフォン主義』(2007年)も当初はCD-Rでの販売でしたし、降神のファーストアルバム『降神』(2003年)もCD-Rでのリリースが評判を呼び、後に正規プレスに。Taiko Super Kicks『霊感』(2014年)も最初は自主CD-R。王舟は『賛成』『Thailand』(どちらも2010年)というCD-Rリリースを2018年にカセットで復刻。自主制作したCD-Rが口コミで評判に→からのレーベル契約!というコースは、バンドのサクセスストーリーとして、当時は一般的なものでした。

相対性理論 『シフォン主義』 みらいレコーズ(2011)

降神 『降神』 TempleATS(2003)

王舟 『Wang』 felicity(2014)

CD-Rがロングセラーになったシンガーソングライター王舟は、felicityからのデビューアルバム『Wang』で収録曲を再録

大森靖子『パン食ってKill』(2009年)および『黒歴史再録』(2013年)、下山(現GEZAN)『一時的な腸』(2011年)、幾田りら『15の想い』(2015年)などなど、今も活躍するアーティストも、キャリアの初期には、CD-Rでリリースしていた音源も多数あり。マニア心をくすぐりますが、オークションサイトに出ているものでも、そもそもCD-Rであるため、オリジナルなのかコピーなのかの判断は難しいものも多く……アーティストを応援するのであれば、現行の最新作を買うのがベターでしょう。

GEZAN 『かつて うた といわれたそれ』 十三月の甲虫(2012)

GEZANも1stアルバム『かつて うた といわれたそれ』でCD-Rの収録曲を再録している

そうそう、アルバム購入者向けのボーナスCD-R、なんていうのもありました。というか、これは今も〈特典として◯◯◯のデモVer.を収録したタワレコ限定CD-Rが付いてくる!〉なんていう文言をみますよね。ライセンス上、大っぴらに販売するのが難しい、DJによるミックスCDなんかも、CD-Rで地下的にリリースされたものが無数にありますね。

ラッパーの故・ECDのCD-Rでのリリースには、現在デジタル販売されているものも
出典:OTOTOY

プレス工場に発注するほどの予算や枚数を必要とせず、思い立ったらすぐ作品として世に出せるCD-Rは、インディペンデントな音楽活動を支える重要なメディアだったのです。

 

デジタル化とPCのドライブ消滅で一気に衰退

しかし、CDの衰退とともに、CD-Rの輝きも徐々に色褪せてゆきます。iPodやデジタルオーディオプレーヤーの登場によって、そもそもソフトを媒介しない、デジタルで完結する音楽の聴き方は2000年代にかけて急速に広まります。また、2008年にはSoundCloudやBandcampが登場。これらのサービスは、インディペンデントアーティストにとって、CD-Rが担っていた〈正規リリースではない、単発作品の発表の場〉という役割を引き継ぐ新たな受け皿として、急速に普及していきます。

また、象徴的なのは、2008年に発表されたMacBook Air。光学ドライブを内蔵しない、つまりCDを読むことも焼くことも基本的には想定していないノートパソコンの登場です。

2008年、イベントにてMacBook Airの薄さをアピールするスティーブ・ジョブズ氏
出典:Macworld San Francisco 2008-The MacBook Air Intro (Pt. 1)

この傾向に他のメーカーも追随し、2015~2016年ごろには、光学ドライブ非内蔵がラップトップにおいては主流化しました。もちろんこの傾向は現在まで続いています。冒頭のアリッサさんの発言は、ギリギリ過渡期だったからこそニュースバリューがあったと言えましょう。もはや〈若者はCD-Rを知らない!〉なんていうのは、令和の2ちゃんねると化しつつある中年用SNSたるXでも、自明のこと過ぎて、大してバズらないトピックでしょう。