スペース・カウボーイが〈サマソニ〉に帰還! 来日記念にリイシューされる3作のアナログ盤に針を落とし、流れるようなグルーヴの旅へと出かけましょう!!

 アシッド・ジャズを出自に、さまざまなダンス・ミュージックを取り入れながら、間口の広い〈踊れるポップ〉を紡いできたUK出身のバンド、ジャミロクワイ。アイコニックなルックスでおなじみのジェイ・ケイ率いる同バンドが今年、9年ぶりに〈サマソニ〉へと出演します。その来日に合わせて、初期3作がアナログ盤で再登場。93年のファースト・アルバム『Emergency On Planet Earth』、94年のセカンド・アルバム『The Return Of The Space Cowboy』、96年のサード・アルバム『Travelling Without Moving』――いずれも日本では初のアナログ盤化で、さらに日本語帯まで付いた今回のリイシュー3作は、収集欲をくすぐる逸品となりました。洒脱なグルーヴをレコードならではの温かな響きで堪能しながら、来日を心待ちしたい! *bounce編集部


 

コンシャスなアシッド・ジャズを提示したファースト・アルバム!

JAMIROQUAI 『Emergency On Planet Earth』 S2/ソニー(1993)

 〈地球は緊急事態〉と名付けられたファースト・アルバムは、ネイティヴ・アメリカンのイロコイ族に由来した名を掲げるバンドならではの民族・社会問題へのコンシャスなメッセージと、アシッド・ジャズのサウンドを組み合わせたのが新鮮だった。ジャケットには、長くバンドの視覚的アイコンとなる〈バッファローマン〉が登場。これは、米先住民の呪術医を象徴する角付き帽子を被ったフロントマン、ジェイ・ケイのシルエットである。ちなみにオリジナルの日本盤には、熱帯の楽園に佇むバンドが極彩色で描かれ、〈インディアン・ファンク〉なる惹句も書かれていた。

 制作の中心はジェイ・ケイと鍵盤のトビー・スミスだが、特徴的なのは、アボリジニの管楽器ディジュリドゥを操るウォリス・ブキャナンの存在。オープナー“When You Gonna Learn”の冒頭から響き渡るその音は、初期作品における彼らのシグネチャーとなった。当時は民族音楽や宗教音楽を交錯させたディープ・フォレストやエニグマなどが注目されており、そうしたトレンドにもハマっていたのだろう。また、スティーヴィー・ワンダーを想起させる“Too Young To Die”に“Hooked Up”、インストを軸としたジャズ・ファンク“Music Of The Mind”、8分強のメロウ・ファンク“Blow Your Mind”といった楽曲での、ホーンを伴うアレンジにアシッド・ジャズ出身の矜持が色濃く出ている。アメリカではさほど振るわなかったものの、本国イギリスでは1位を獲得。

 

ジンクスを払い、多彩なグルーヴを獲得したセカンド・アルバム!

JAMIROQUAI 『The Return Of The Space Cowboy』 S2/ソニー(1994)

 デビュー作が世界で150万枚を超えるセールスを記録した重圧からか、制作過程では〈セカンド・アルバムのジンクス〉に悩まされたという2作目。ドラムは、新加入のデリック・マッケンジーが大半の楽曲を担当。日本のキッズ番組「ウゴウゴルーガ」のエンディング曲に起用された、疾走感溢れるアッパー・ファンク“The Kids”のみニック・ヴァン・ゲルダーが叩いた。スピリチュアルなクラブ・ジャズ“Just Another Story”、トロピカルなリズムが跳ねる“Stillness In Time”、クール&ザ・ギャングの影響も窺える“Light Years”、ディジュリドゥが活躍するインスト“Journey To Arnhemland”など、収録曲の作風は実に多彩。それらを有機的に結び付けているのが巧みなバンド・アレンジ、そしてジェイ・ケイの快活な歌唱だ。インコグニートやブラン・ニュー・ヘヴィーズなど、アシッド・ジャズ界では本場のグルーヴやソウル・フィールを会得するためかUSシンガーを起用することもあったが、ジェイ・ケイのエネルギッシュな個性は、そうした布陣が不要なほどに鮮やかに光っている。初作に残っていた若さゆえの青臭さも薄れている印象で、アメリカでもダンス・クラブ・ソングス・チャートで1位を獲得。次作での飛躍の土壌を築いた。先行シングル“Space Cowboy”のMVに映る、アディダスのスリー・ストライプス・ジャージを着たジェイ・ケイの切れ味鋭いブレイクダンスも大きな話題に。

 

未来的なサウンドへの志向性を強めたサード・アルバム!

JAMIROQUAI 『Travelling Without Moving』 S2/ソニー(1996)

 ジェイ・ケイの愛するフェラーリのエンブレムにアイコン〈バッファローマン〉を忍ばせたジャケットも目を惹く3作目。環境問題や反物質主義を訴えながら、エコとは真逆のスーパーカーを何台も所有し、自慢げにMVに登場させるスタンスには、言動不一致との指摘もあった。しかし結果的には、苦戦していた北米市場でもついにブレイクスルーを果たし、全世界で800万枚超の特大セールスを記録。ギネスにて〈もっとも売れたファンク・アルバム〉に認定された。このアルバムにおける最大の目玉は、床が動いているように見える中毒性の高いMVが脚光を浴びた“Virtual Insanity”だろう。2005年の日本武道館での公演の際には、実際は演奏されなかったにもかかわらず、某スポーツ紙に〈ヒット曲「バーチャル・インサニティ」などを披露〉と書かれたほどの、絶対的な代表曲だ。制作においてはジェイ・ケイとトビー・スミスの中心軸は不変ながら、パーカッションのソラ・アキンボラ、ギターのサイモン・カッツの新加入もあり、それまで以上に奔放な趣向を展開。“Cosmic Girl”“Alright”などで近未来感を強めたジャズ・ファンク/ダンス路線へと重心を移す一方、ディジュリドゥを軸にした“Didjerama”、牧歌的なレゲエ・ビートが心地よい“Drifting Along”なども収め、“You Are My Love”にはジェイ・ケイのヴィンテージなソウル/ファンクへの愛も滲む。バンドを世界的なポップスターに導いた一枚だ。