ケイタイモを中心に名うての13名が集うプログレッシヴな吹奏楽バンド――その第二楽章で奏でられるのは、祝祭感と親密な温もりに溢れた〈田舎ジャズ〉!
分厚いホーンズと多彩なグルーヴを刻むリズム隊、軽やかなスキャットを響かせるコーラス隊などから構成されるプログレッシヴ吹奏楽バンド、WUJA BIN BIN。ブラジリアン・ジャズやチェンバー・ロックのような雰囲気も放つ大迫力のバンド・アンサンブルは、確かにマニアックなものではあるものの、そこには奇妙な祝祭感と明るさがあり、小難しい感じはない。近年は爆発的なライヴ・パフォーマンスが各所で噂になっているほか、大学の吹奏楽部にもカヴァーされるなどメンバーが予想もしなかった広がりを見せているという。
中心人物はMONG HANG及びBEAT CRUSADERSで活躍してきたベースのケイタイモ(ATOM ON SPHERE)。WUJA BIN BINは両バンド解散後の2010年に結成された。
「MONG HANGをやってた頃からエルメート・パスコアールみたいなブラジル音楽にハマり出したんです。そのなかでリズムの楽しさを前面に押し出したもの、みんなで楽しめるものをやりたくなってきて」(ケイタイモ)。
集められた総勢13名のメンバーはキーボードの中村圭作(kowloon、stim)やサックスのゴセッキー(在日ファンク)、トランペットの類家心平(菊地成孔ダブセクテット)、ヴォーカルの高橋瞳、ピアノ/アコーディオンの野村卓史(グッドラックヘイワ)らに加え、パーカッションの高田陽平(Orques-ta Nudge! Nudge!、stim)などMONG HANG時代の仲間たちも。
「ある程度大所帯バンドのイメージはありましたけど、ここまで膨れ上がるとは思わなかった(笑)。フランク・ザッパが大好きなので、ホーンが入った編成にはしたいと思ってました。ただ、ブラス・アンサンブルに関しては素人なので、ゴセッキーにホーン隊を編成してもらったんです」(ケイタイモ)。
「ケイタイモから〈こういうバンドをやりたい〉っていう話は一切聞いてなくて(笑)。でも、ケイタイモがやるんだったらおもしろいだろうし、とりあえずやってみようと」(中村圭作)。
セカンド・アルバムとなる新作『INAKA JAZZ』のレコーディング・エンジニアを務めているのは、2012年のファースト・アルバム『WUJA BIN BIN』同様、NATSUMENのAxSxE。
「なにせメンバーも多いので、ファーストのときはAxSxEくんも苦労してましたよ。ただ、今回はリラックスしすぎちゃって、スタジオのなかで鍋とかつつきながらやってましたね(笑)。レコーディングが終わったメンバーから野菜を切って……」(ケイタイモ)。
『INAKA JAZZ』はそんな制作風景が浮かんでくるようなアットホームなアルバムである。初回盤500枚のジャケットはなんとすべてケイタイモの手描きによるもの。温もりのある音とアートワークが『INAKA JAZZ』というひとつの世界を描き出している。
「CDが売れなくなってきた現状に対し、〈ミュージシャンとしてもできることはあるんじゃないか?〉と思ったんですよ。最初は2,000枚描こうと思ってたんですけど、最終的に500枚。それでも半年かかりました(笑)」(ケイタイモ)。
『INAKA JAZZ』というアルバム・タイトルに関して、ケイタイモはこう話す。
「ウチらの音楽には〈INAKA JAZZ〉という言葉が合うんじゃないかと思ったんですよ。土臭くて、畑に種を植えていくような音というか……」(ケイタイモ)。
ハチャメチャに楽しいWUJA BIN BINの田舎ジャズ。天国のフランク・ザッパもニヤリと微笑んでるかも?
▼WUJA BIN BINの近作
WUJA BIN BINの2012年作『WUJA BIN BIN』(BETRAYAL)
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▼WUJA BIN BINのメンバーの関連作品
左から、ATOM ON SPHEREの2011年作『ATOM ON SPHERE』(ユニバーサル)、kowloonの2011年作『metallic, exotic』(ポニーキャニオン)、stimの2012年作『NOON AFTER NIGHT』(Revirth)、在日ファンクの2012年のミニ・アルバム『連絡』(Pヴァイン)、類家心平の2013年作『4 AM』(T5Jazz)、高橋瞳の2011年作『PICORINPIN』(ソニー)、グッドラックヘイワの2009年作『THUNDER』(Galactic)
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