インタビュー

アンネ=ゾフィー・ムターの秘蔵っ子、ヴィルデ・フラングがコルンゴルトとブリテンの協奏曲取り上げた新録音盤を語る

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アンネ=ゾフィー・ムターの秘蔵っ子、待望のニュー・アルバムをリリース!

 5月22に開催されたクリスチャン・ヤルヴィ指揮都響演奏会でメンデルスゾーンの《ヴァイオリン協奏曲》を演奏したヴィルデ・フラング。大向こうを唸らせる過剰な表情づけを一切排し、ただひたすらに音楽と同化していく独奏は、彼女の無垢な表情と同様、「穢れ無き純真」と呼ぶのがふさわしい演奏だった。

 「メンデルスゾーンは、余計な味付けをしたりスパイスを振りかけたりしなくても、素材そのものがすでに素晴らしい音楽。あるいは、ヴァイオリンの“音色の風景”の中を進む列車の旅のようなもの。その列車に乗るたびに、いつも心を奪われてしまうのです」

VILDE FRANG ブリテン/コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 Warner Classics(2016)

 最新録音盤はコルンゴルトブリテンの協奏曲。誰もが知っているメンデルスゾーンとは真逆の世界だ。

 「録音を思い立ったのは2011年。レコード会社と長い議論を重ねた上、実現に漕ぎ着けました。そもそも、この2曲をカップリングした前例が存在しませんし。でも、2曲とも後期ロマン派の語法に基づきながら、演奏者に高い技術を要求しているという意味で、20世紀が生んだ偉大なドラマだと確信しています」

 まずはコルンゴルトの協奏曲について。

 「ロマンティックなオーケストラをバックに、あたかもヴァイオリンが歌ったり飛び跳ねたりするような音楽。協奏曲の基になった映画は、もちろん見ました。例えば『放浪の王子』は、第3楽章の力強い主題に流用されていますが、彼が主題素材に映画音楽を用いたこと、まさにその事実によって、人々がコルンゴルトの作品を見下し続けてきたのが残念ですね」

 一方のブリテンは、彼女によれば、いろいろな意味でコルンゴルトと強烈な対照をなす作品だという。

 「あたかもX線を照射したような、非常に明晰な語法で書かれた音楽。ドライな響きのオーケストラの中に、不安と絶望が詰まった作品です。特に第3楽章のパッサカリアは、恐ろしいほどの集中力を必要とします。いわば、独奏ヴァイオリンが死と格闘していくような音楽です。楽章終わりのコーダでは、死の向こう側にある楽園の存在が仄めかされていますが、ヴァイオリンは『まだ死にたくない!』と生にしがみつく。そんな凄まじい音楽を弾き終えると、アンコールでは何も演奏する気が起きなくなってしまうのですよ」

 この2曲以外にも、20世紀の音楽や同時代の音楽への関心はあるのだろうか。

 「私と同世代の作曲家に関しては、エベーヌ弦楽四重奏団のチェロ奏者ラファエル・メルランが、才能に恵まれた人だと思っています。私より上の世代では、エサ・ペッカ・サロネン。具体的な演奏計画はないですが、しばらく探索を続けてみたい作曲家ですね」

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