
彼女が恋の喜びを歌うだけで、彼女が微笑むだけで、彼女がステップを踏むだけで、一瞬にして世界は明るくなる。カイリー・ミノーグ――。歌手デビューから30年、アフロディーテはさらなる輝きを求め、今日もトレンドの音とダンスする。そのゴールデン・エイジに終わりはない……
カントリーという新たな選択
ヨーロピアンな美学を貫いてきたカイリー・ミノーグがカントリー化?――まるで水と油のようなこの組み合わせに驚き、〈迷走中なのか?〉と危惧したファンも少なくないだろう。ところが、ニュー・アルバム『Golden』に耳を傾けると、これが意外なほどカイリーらしい純正ポップ作品に仕上がっている。確かにカントリー要素が全面的に強調されているのだけれど、どこを取っても彼女らしさが全開なのだ。

初めてのナッシュヴィル
そもそもカイリーが〈カントリーをやってみよう〉と考えたのは、古くから信頼を寄せるレーベル関係者の勧めもあったというが、それ以上に自身の置かれていた状況が大きく影響している模様だ。2015年から交際し、婚約もしていた英国人俳優のジョシュア・サスと2017年初頭に破局。心底落ち込み、絶望に暮れていた時、新作に向けた準備が始まっている。歌手デビュー30周年を迎えるにあたってレコード会社やマネージメントを移籍したものの、作品の方向性どころか人生の行き先すら見えないなか、彼女はそれまで一度も訪れたことのなかったナッシュヴィル行きを決意。カントリーの聖地へ赴いて優れたソングライターたちとじっくり膝を交え、曲作りの段階から本作に関わっている。アメリカ南部というパパラッチもいない落ち着いた環境に癒しを求めたのかもしれないし、作業に没頭することで未練を断ち切りたかったのかもしれない。ともかく、いまふたたび活力を得て輝きを取り戻したカイリーが、ここに帰ってきた。
ただし、カントリーに向かったからといって、彼女らしさがなくならないあたり、流石は永遠のポップスターである。これまでに培ってきた洗練性が見事に融合。こんなにオシャレなカントリーは、おそらくこの人以外には出来ないんじゃないかと思わせる。そう、モダンな感性でかのジャンルを消化した、煌びやかな楽曲が並んでいるのだ。
例えば先行カット“Dancing”は、『1989』までのテイラー・スウィフト作品に深く関与してきたネイサン・チャップマンと、キャリー・アンダーウッドやキース・アーバンらに曲を提供するスティーヴ・マキューアンと、彼女とで共作。ラインダンスを用いたグリッターなMVも楽しい同曲は、もはや〈カントリーEDM〉と呼べそうな仕上がりで、アヴィーチー“Wake Me Up”(2013年)以降の流れを汲み、ノスタルジックな郷愁と同時にフューチャリスティックな体験を味わわせてくれる。〈カントリー×EDM〉の成功例と言うと、最近でもゼッドとグレイがマレン・モリスと組んだ“The Middle”(2018年)や、アレッソとヘイリー・スタインフェルドがフロリダ・ジョージア・ラインと共演した“Let Me Go”(2017年)などが挙げられ、トレンドとしてまだまだ有効。チェインスモーカーズも最新作『Memories...Do Not Open』(2017年)でそれっぽい試みをしていたし、サム・フェルトがジョシュア・ラディンの“High And Low”をトロピカル風に刷新したのも記憶に新しい。
そういった同時代の音にカイリーが敏感なのは、何もいまに始まった話ではない。が、それでもやはりアンテナ感度の高さには改めて恐れ入るばかり。そう言えば“Dancing”のプロデュースを担当したサム・アダムスは、ザック・エイベルのデビュー・アルバム『Only When We're Naked』(2017年)で注目を浴びたアフリカ系ドイツ人クリエイター。新進の才能だ。カイリーはアルバム収録曲の約半数を彼に委ねていて、サムへの絶大な信頼を窺わせると同時に、その大胆な決断力にも頭が下がる。
私たちはいつもゴールデン
“Dancing”以外の曲に関しても、アメリカーナ的なフレイヴァーが散りばめられているものの、決して説教じみたり、ジメジメ重苦しくならないのは、彼女流のポップソングに対する強いこだわりがあってのことだろう。アルバム全体を彩るアコースティック・ギターやバンジョー、ぺダル・スティールといった生楽器の音色が何とも軽やかで華やか。いつものカイリーのゴージャスなエレクトロニック系とはひと味違う、活き活きした快活なサウンドがカラフルに弾けている。
表題曲“Golden”には、こちらもテイラー・スウィフトの初期コラボレーターであるリズ・ローズが共作者としてサポート。ヒルビリーなムードを湛えたこのナンバーのなかで、カイリーは〈私たちはゴールデン、星のように燃えている/黄金の輝きをいつまでも決して諦めない/それが私たちの声/叩きのめされたらまた立ち上がる〉と自信に満ちた美声を響き渡らせる。これをアルバムのタイトルに持ってきた理由について、本人はこう説明している。
「私たちは、他の何者にもなれない。いまの自分より若くも年上にもなれない。私たちは私たちの年齢でしかいられない。それが〈私たちはゴールデン〉という意味よ。アルバムのタイトルは、そういったすべてを反映しているの。すべての人が皆それぞれゴールデンであり、自分の道を明るく照らしている――そういう考え方が私はとっても好き。人生を歩んでいる限り、私たちはいつもゴールデンなのよ」。
2016年末、カイリーはLAのハリウッド・ボウルでドリー・パートンのライヴを初めて鑑賞したという。目から鱗な体験だったそうで、そんな刺激をいまも素直に受けられているのだから素晴らしい。今年5月には50歳を迎えるが、決してチャレンジの手綱を緩めないどころか、心機一転気分に溢れる彼女。今後もこのカントリー路線を続けるのかどうかは不明ながら、カイリーのコレクションにまたひとつ新たな魅力が付け加わったのは間違いない。こんなステキなイメチェンなら大いに歓迎だ。 *村上ひさし
関連盤を紹介。
『Golden』に客演したジャック・セイヴォレッティの2017年作『Songs From Different Times』(De Angelis)

彼女を愛さずにはいられない理由
カイリー・ミノーグはなぜ愛され続けるのかと問われたら、逆に〈なぜ愛さずにいられるのか?〉と訊ねたい。あのキャラメルみたいな歌声を。人懐こいスマイルを。絢爛豪華なライヴ・パフォーマンスを。天上の女神のようでいて地に足が着いている不思議な佇まいを。挑発も説教もせず、聴き手を癒してくれる包容力を。音楽と踊ることと恋することの素晴らしさを歌い続け、ポップ・ミュージックをそれ以上でもそれ以下でもないもの──つまり、自他に束の間のハイを与える逃避の手段として捉え、それを最上級の形で提供することに全身全霊を捧げるあの使命感を。2011年4月に実現した20年ぶりの来日公演が好例だ。東日本大震災を受けて海外ミュージシャンの来日中止が相次ぐなか、何事もなかったかのように彼女はやって来た。そして最高のパーティーを開き、日本でことに愛されている“The Loco-Motion”を特別に披露してくれたものだが、20年待ったファンのために及び腰の周囲の人たちを説得してくれたんじゃないか、と個人的には思っている。
タフでスマートなアフロディーテ
そんなカイリーを嫌う理由など、ぶっちゃけ見当たらないのだ。それは何も〈無難〉とか〈平凡〉ということじゃない。11歳の時に女優として活動をスタートして以来、不祥事とは無縁だから、優等生ではあるのだが、オーストラリアが音楽界に与えた宝物としては、AC/DCやオリビア・ニュートン・ジョンと並べて語るべきレジェンド。恐ろしくタフでスマートでなければ、30年間トップを走り続けることなんてできなかったはず。実際、彼女は大胆で賢明な決断を重ね、音楽的変転を繰り返し、いともエフォートレスにキャリアをナヴィゲートしてきた。
最初の変転は90年代半ばに訪れた。ストック・エイトキン・ウォーターマンとの出会いを機にPWLから音楽業界に進出したカイリーは、すぐさま大ブレイクを果たしたわけだが、プロデューサーに言われるがまま型通りのハイエナジー・ポップを歌い続けることに限界を感じはじめる。そして4年間に4枚のアルバムを発表後、エレクトロニック系の新興レーベル、ディコンストラクションへ移籍。明るくハッピーなだけじゃない表情を掘り下げ、幅広くコラボを楽しみ、テクノやトリップ・ホップやギター・ロックで実験。ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズとの共演曲“Death Is Not The End”でも衝撃を与え、ビョークの『Homogenic』(97年)とマドンナの『Ray Of Light』(98年)の中間に位置するような裏名盤『Impossible Princess』(98年)を生み出している。
こうしてセールスはダウンしたものの、アーティストとしての器の大きさを見せつけた〈インディー・カイリー〉は、初期の〈アイドル・カイリー〉のイメージを一旦払拭したのだが、30代突入を機にふたたびガラリと方向転換。大手レーベルへ移り、2000年の『Light Years』を皮切りに、新たに身に着けたセンシュアリティーと洗練性を持ってハウス/ディスコ・サウンドにアプローチし、メインストリームの頂点へと返り咲く。この〈ダンス・カイリー〉を象徴する傑作シングル“Spinning Around”と“Can't Get You Out Of My Head”は、もともと別のアーティストのために書かれた曲だったが、そこにポテンシャルを見い出して自分のものにした勘の鋭さも賞賛すべきだろう。
そして彼女は踊り続ける
勘と言えば、彼女を語るうえで欠かせないウィリアム・ベイカーの起用も然りだ。出会った当時は某デザイナーのブティックでバイトをする学生だったウィリアムの才覚を見抜いて、スタイリスト/アート・ディレクターに抜擢。以後ふたりはヨーロピアンな美意識で貫いた、ひたすらにキャンプでグラマラスでファビュラスな無二のヴィジュアル・アイデンティティーを作り上げるに至った。
そう、長年ロンドンを拠点にしているカイリーの感性はユーロ・キッチュの極み。アメリカではあまり理解されていない。そういう意味ではかつてデュエットもしたロビー・ウィリアムズと同様、クリケットとは言わないもでも、まさにラグビーみたいな存在。初の全米ツアーを行なったのは2009年のことだ。その後、ジェイ・Zが主宰するロック・ネイションとライセンス契約を結び、2014年の『Kiss Me Once』はアメリカ市場を意識した作品に仕上げたが、彼女らしさと相容れない違和感が残った。
本人もそこに気付いたのか速やかにロック・ネイションと縁を切ると、今度は自分のやり方でアメリカへ――。カントリーに独自の解釈を施したこのたびのニュー・アルバム『Golden』で、カイリーは50歳の誕生日を目前にまたもやひとつの角を曲がった。どういうわけか恋愛運に恵まれない彼女。全曲を共作してかつてなく赤裸々に心中をさらけ出し、俳優ジョシュア・サスとの婚約破棄を受けて、ハートブレイクを歌っているのである。思えば、癌を患ってなお自分を被害者として提示することを避けて、これまで涙を見せなかった人だから余計に切ない。今回はそれだけでなく、止められない時間の流れ、つまり老いにも恐れずに言及している。この世代のメインストリームなアーティストによる作品としては他に例がない、中年女性のリアルなポップ・ミュージックに到達したのだ。
それにここでの彼女は泣いているけど、泣きながら踊っている。次の恋を探している。音楽の治癒力を証明するようにして、黄金色に輝いている。カイリーを愛さずにいられない理由は増え続けるばかりなのである。 *新谷洋子
関連盤を紹介。
カイリーが客演した作品。

DISCOGRAPHIC KYLIE MINOGUE
カイリーを知るための13枚

ユーロビートの代表盤にして、彼女の記念すべきデビュー作だ。リトル・エヴァ“The Loco-Motion”のカヴァーなど、オーストラリア娘らしい野暮ったさ(褒め言葉)はこの時期でしか味わえないもの。80s風の音が重宝されているいまこそ、PWL印のクリアなデジタル・ビートも改めてジャストに響くだろう。 *北爪

初作のヒットを受けて引き続きアルバムの前半は直球のハイエナジー・ポップで畳み掛け、後半ではオーケストラルなスロウ“Tell Tale Signs”やオールディーズ調にも挑戦。絶好調のストック・エイトキン・ウォーターマンによる作風の広がりと、シンガーとしての無理のない主役の成長ぶりが楽しめる。 *青木

マドンナ“Vogue”やスナップ!“The Power”などセクシーな曲が人気を集めるなか、PWL軍団に加えてUSからもステファン・ブレイらを制作陣に引き入れたこの3作目で脱・清純派宣言。BTエクスプレス使いの“Step Back In Time”ほか、跳ねたビートでソウル~ファンクをオマージュしたアップが良い。 *青木

PWL最終作はエイトキンが抜けた体制での録音。ニュー・ジャック・スウィングな冒頭曲、ソルト・ン・ペパと2アンリミテッドを引用した“I Guess I Like It Like That”を筆頭に、ハウス/R&B色を強め、リミキサーにブラザーズ・イン・リズムを抜擢するなどディコンストラクション期の布石とも取れそうな内容だ。 *青木

ディコンストラクション在籍時の音源集。ブラザーズ・イン・リズムによるハウス・トラック、マニック・ストリート・プリーチャーズのジェイムズが手掛けたギター・ロック、デイヴ・ボール(ソフト・セル)製のスニーカー・ピンプス風なダウンテンポなどなど、サブカル系の音楽好きからも支持を獲得。 *青木

前年のペット・ショップ・ボーイズとのコラボが呼び水になり、わかりやすく楽しいダンス・ポップへと回帰。“Spinning Around”をはじめ、ハイエナジーやラテンのエキスも注いだディスコに軸を置いてチャート上でも好成績を残している。奇しくも同年、マドンナも派手に電化した『Music』を発表。 *青木

『Light Years』の余勢を駆って登場したこの8作目で、さらなる成功を収めることとなるカイリー。同年のダフト・パンク『Discovery』に通じるフィルター・ハウス的なサウンドを展開しているのが抜け目ない。ニュー・オーダーを更新したような特大ヒット曲“Can't Get You Out Of My Head”はここに収録。 *北爪

DJヘル主宰のジゴロを中心にエレクトロクラッシュがブームになったのは2002年。で、それに前後した本作で時流を果敢に採り入れつつ、自身の原点である80sのエレポップ風味もハイブリッドし、軽やかに時代を一巡させたセンスはどうだ! グリーン・ガーサイドを招いているのも流石。 *北爪

ジャスティスやボーイズ・ノイズがブレイクしたこの年、カイリーもエレクトロへと踏み込むことに。カルヴィン・ハリス、ブラッドシャイ&アヴァント、フリーメイソンズら気鋭のクリエイターを集め、ガン克服を強烈に印象付けるかの如く、洗練性よりもパワフルさを優先させたロッキンな歌唱で聴き手を圧倒。 *青木

スチュワート・プライスの総指揮による本作は、カルヴィン・ハリスやセバスチャン・イングロッソ製のEDM路線と、キーンのティムらが提供した美しいバラードを同居させた振り幅の広い一枚。尖っていた『X』とは対照的に、作品全体のバランスよりも曲の粒立ちで聴かせるベスト盤のような作りが楽しい。 *北爪

このキャリア初となるセルフ・カヴァー集は生楽器主体のサウンドで構成され、さながらカイリー版〈Unplugged〉といった趣。当然ながらどれも原曲とは大きく様相を変え、ジャジーな仕上がりだ。常に流行と対峙してきた彼女が、あえて時流を意識せずに歌い手としての自身と向き合った意欲作。実に良い。 *北爪

ダブステップあり王道バラードありの本作では、ファレル製のファンキーなディスコ“I Was Gonna Cancel”や、アデル的なスケール感で迫る“Kiss Me Once”(同郷のシーアが作曲!)など、80sフィールとテン年代のポップスがスムースに交配。エンリケ・イグレシアスとの色っぽいデュエットも大きな話題に。 *青木

初のクリスマス盤。フランク・シナトラとの擬似共演曲を含むスタンダード群は、『The Abbey Road Sessions』の延長線上にあるシックでドレッシーな仕上がり。一方、イギー・ポップと披露したウェイトレセスのカヴァーや、妹ダニーとのダンス・ポップではホーム・パーティーのようなリラックスした表情も。 *北爪
ORIGINAL ALBUM
Kylie Minogue(1994)
Impossible Princess(1998)
Golden(2018)
LIVE ALBUM
Intimate And Live(1998)
KylieFever2002(2002)
Showgirl: Homecoming Live(2007)
Live In New York(2009)
Aphrodite Les Folies: Live In London(2011)
Kiss Me Once Live At The SSE Hydro(2015)
COMPILATION
Kylie's Remixes
Boom Box
Essential Mixes
Kylie: Greatest Hits 87-97
Kylie: Greatest Hits 87-99
Ultimate Kylie
Kylie Hits
12" Masters Essential Mixes: Kylie Minogue
The Best Of Kylie Minogue ...and more!
I WANNA GO OUT DANCING AH AH AH AH...
カイリー・ミノーグをめぐる音楽の果実は、ここに一本のトゥリーを生んだ

カイリーは『Golden』について〈ドリー・パートンがダンスフロアに立ったような作品〉と説明し、リリパでもドリー曲をカヴァーしたばかり。“Radio On”など新作の一部では声を張らず、珍しくヴィブラートを強調していて、その歌唱法からも御大からの影響がチラリ。 *山西

『Golden』に抜擢されたスカイ・アダムスは、倖田來未やオミーへの曲提供を経て、昨年からプロデュース業に本腰を入れはじめた注目株。本作ではメロウなビートメイクを披露し、一部ではケイトラナダと比較する声も。『Golden』と合わせて聴くと彼の器用さが伝わります。 *山西

スウェーデン人のザラと、豪州出身ながらUKを拠点に活動してきたカイリー。セクシーだけど下品にならず、洗練されたヨーロピアンな香りで悩殺し、さらにどちらも高音が武器。クリーン・バンディットとの“Symphony”における澄んだ美声は、カイリー好きも必聴。 *村上

豪州から世界へ羽ばたいたこの姉妹DJは、本作収録の“The Other Boys”でカイリーと合体。EDM的ド派手な曲が多い2人も、ここでは〈同郷の先輩のため?〉と思えるエレクトロとディスコをミックスしたポップソングを用意しており、そのハマリ具合は言わずもがな。 *青木

ボトックス信者のアラフィフ仲間という話じゃありません。15年ぶりの本作では元夫からマシュー・コーマへとプロデューサーをチェンジし、美麗なカントリーEDMに乗って病や失恋を克服した(しようとしている?)様子を綴っていて、図らずも現在のカイリーとシンクロ。 *山西

カイリーがEDM界隈に多大な影響を与えてきた様子は、マデオンやバウアーらがこぞってネタ使いしていることからも窺えよう。特に“Get Outta My Way”を引用した本作収録の“Cool”は、原曲の持つゴージャス感とアレッソらしいエモメロが最良の形で融合した逸品に。 *青木

CALVIN HARRIS I Created Disco Fly Eye/Columbia(2007)
若手クリエイターのフックアップにも熱心なカイリーは、このデビュー作の登場を待たずしてカルヴィンを自身のアルバムへ招聘。ブレイク寸前の彼のサウンドには80sディスコからの影響が克明に刻まれており、いま改めて2人の邂逅は自然な流れだったと感じる。 *青木

数多のカイリー後継者を生んでいるネオン・ゴールドの出世頭で、カルヴィンとも縁深いエリー。“Come Into My World”風な本作の表題曲(手掛けたのはカイリー作品の常連であるリチャード・スタナード)を聴けば、デビュー時から彼女の目標が明白だったとわかるはず。 *山西

本EPのフロリダ・ジョージア・ライン参加曲が『Golden』と同じ方向性っていうトピックもありつつ、何より上向きのお尻をフリフリする姿が……ほら! ビッチなキャラを推しすぎな部分は気になりますが、年齢と共にカイリーのような品格も備わってくるでしょう。 *山西

GIORGIO MORODER Deja Vu Giorgio Moroder/RCA/ソニー(2015)
少々乱暴な言い方をすると、この〈ディスコの巨匠〉の影響下にある音楽を歌い続けてきたカイリー。両者はダンス・ミュージックの浸透に貢献した重要人物であるが、その2人の共演がかつてなく隆盛を迎えているシーンの景色を前に実現するとは、何とも感慨深い。 *青木
ユーロビートの日本語カヴァーが続出した時代、カイリー曲では和田加奈子という例もありますが、やはり外せないのが本作収録の〈愛が止まらない〉でブレイクしたWINK。2人は後に“Step Back In Time”も披露し、いずれも淋しげな歌い方で本家とは異なる魅力を発揮。 *山西

年齢的にはひと回り、音楽キャリア的にも先輩のマドンナだけど、欧州でのカイリー人気には一目置いている様子。闘病時にエールを送ったり、ヨーロッパ公演ではカイリーTシャツを着て“Music”を歌ったことも。スチュワート・プライスを大抜擢した点でも共通。 *村上

カイリー好きを公言し、“Confide In Me”をレパートリーにしているハーツは、憧れの女神をゲストに招いた本作でディコンストラクション時代を思わせるダークなシンセ・ポップを展開。その後もカイリーがハーツ曲をカヴァーするなど、相思相愛ぶりを見せている。 *青木
〈カイリーみたいになりたい!〉と話していたあみーゴは、カイリーのリミックスを手掛けたこともある中田ヤスタカのプロデュースのもと、本作でその夢に一歩前進。特に“Wow”似の“ONE”など、『X』路線のバキバキなサイボーグ系アップにおけるなりきり具合が凄い! *山西

近年も『Kylie Christmas』やTV特番で共演している仲良し姉妹。妹のダニーは歌声も含めて限りなくカイリーに近い存在だけど、まったくの別物ってとこがウリ。姉の栄光を追えば追うほど違いはくっきり。でも〈劣化版〉なんて言わないで! 庶民派な感じが好感度大。 *村上

本作収録の“GBI”はストレートな4つ打ちにさまざまなギミックとカイリーのポエトリーを加え、ポップ&スタイリッシュな響きで高い評価を得た一曲。カイリーもライヴで披露しているくらいだからお気に入りのようだ。テイの2005年作『FLASH』では再共演も! *青木

キャリアの分岐点となった本作収録の“Toxic”は、もともとカイリーのボツ曲。でもって、それを作ったブラッドシャイ&アヴァントは以降も両者のヒットに貢献している。互いに大ファンだと言うけれど、もしあの時にカイリーが歌っていたら……は気になるところ。 *村上
I SHOULD BE SO LUCKY IN LOVE
美の秘訣は恋にあり? 豊かな恋愛経験を音楽活動にも反映させてきた女神の歩み
カイリー・ミノーグの元カレと言うと、インエクセスのマイケル・ハッチェンスをまず思い出す人も多いはず。女優時代から付き合っていたジェイソン・ドノヴァンとの関係を清算し、マイケルの胸に飛び込んだカイリー。初のヨーロッパ訪問は彼の誘いで89年に実現したらしく、その時の体験が欧州的な美意識に目覚めるきっかけとなった……と後に振り返っています。
以降もレニー・クラヴィッツやジェイ・ケイ、レモンヘッズのイヴァン・ダンドといったミュージシャンをはじめ、俳優、モデル、王族と浮名を流しながらどんどん艶めきをアップ。例えばニック・ケイヴと恋仲だった(とされる)時期には、彼が率いるバッド・シーズとの共演曲“Death Is Not The End”で物憂げな歌唱を披露するなど、音楽活動にもプライヴェートで得た刺激をフィードバックさせてきました。
余談ですが、2002年のコールドプレイ“In My Place”でカイリーにオマージュを捧げたクリス・マーティンは、2008年のチャリティー・シングル“Lhuna”(セクシーすぎてお互いのアルバムには入れられなかったといういわく付きの一曲)での共演を挿み、2015年には女神とパパラッチされるまでに。自分磨きのためにも、世の男性に夢を与え続けるためにも、カイリーには今後も恋することを止めないでほしいです。 *山西絵美
関連盤を紹介。

