注目の新世代ギタリスト、日本初録音作品3曲を含む新作『メドゥーサ』をリリース!

 クラシック・ギターの作品のイメージを大胆に変えてしまうアルバムが登場した。猪居亜美の『メドゥーサ』である。すでに2枚のアルバムをリリースして好評を得ている彼女だが、今回のアルバムはひと味違う。

  「自分としてもかなり挑戦的なアルバムになったと思います」と猪居。まず、アルバム・タイトルの“メドゥーサ”はヨーロピアン・ギター・カルテットのメンバーでもあるドイツ生まれのトーマス・フェロー(1966~)のソロ・ギターのための処女作であり、速いパッセージが躍動する作品。そしてユーゴスラビア生まれのミロスラフ・タディッチ(1959~)による“ウォーク・ダンス”は鮮やかな音色が乱舞する。さらにレーントコ・ディルクス(1979~)の“ラマラー”は、パレスチナの持つエネルギーに作曲者がインスパアされて書かれた作品。ディルクスもフェローと同じく、ヨーロピアン・ギター・カルテットの一員として活躍している。この3曲は、日本では初録音となる。

猪居亜美 MEDUSA キング(2019)

 「誰もまだ日本では弾いていない曲に以前から関心がありました。そしてこれから、こういう作品を日本で流行させたいという気持もあります」

 ブローウェルの“オリシャたちの儀式”もブローウェル作品の中ではあまり日本で演奏されていないものと言う。ただ、新奇さだけを狙ったアルバムではない。

 「ギターでこんなことが出来る、こんな曲もあったのだという驚きだけではなくて、クラシック・ギターを知らない方にも聴いて頂けるような、一種の聴きやすさも考えて選曲しました」

 猪居は1993年大阪市生まれ。父からギターの手ほどきを受け、プロのギタリストになろうと志したのは大学に入った頃からだった。

 「その時から、ギタリストとしての自分の持ち味とはなんだろう?と考えるようになりました。そこからテクニカルなギターの新しい作品に興味を持つようになり、現在に至るという感じですね」

 難しいテクニックを必要とするアンドリュー・ヨーク(1958~)の“ムーンタン”、今回のアルバムのためにアレンジされたショパンの“幻想即興曲”(編曲/垂石雅俊)もこのアルバムの聴きどころとなっている。

 「このアルバムの中から自分の代名詞になるような、コンサートでも聴きたいと思って頂けるような作品が出て来ると嬉しいですね」

 ディラ(ポーランド)やヤラクール(タイ)といった若い世代のギタリストをリスペクトする新世代ギタリストの活躍に注目したい。

 


LIVE INFORMATION

Osaka Guitar Summer 2019 フェスティバル コンサート(修了コンサート)
○8/25(日)13:00開演
会場:大阪 ザ・フェニックスホール
【出演】ギターアンサンブルワークショップ受講生/公開マスタークラス受講生/岩崎慎一、益田展行、猪居謙、猪居亜美(以上ギター)
【曲目】林そよか:4つの海の物語(世界初演)(あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール委嘱作品/2019)/公開マスタークラス受講曲/ほか
phoenixhall.jp/performance/2019/08/25/10662/